サイバー攻撃に悪用される恐れがあるIoT機器の調査が二十日から始まる。インターネットの障害は通信だけに留(とど)まらず、社会生活にも影響が出る。成果の鍵を握るのはまずはユーザーである。
IoTは、インターネット・オブ・シングス(モノのインターネット)の略。コンピューターが組み込まれ、インターネットに接続した機器の総称がIoT機器で、防犯カメラやセンサー、ルーターなどのことである。パソコンやスマホは含まれない。
IoT機器の悪用が注目されたのは二〇一六年十月。米国のネット通販大手アマゾンや経済紙ウォールストリート・ジャーナルなどのシステムが同時に障害を起こした。原因はインターネットのインフラを提供するダイン社に、十万台を超えるIoT機器から一斉に大量のデータが送られたためだった。ミライというマルウエア(不正ソフト)に感染していた。
今回の調査は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)がハッカーと同じような手法でIoT機器に侵入を試みる。調査対象は国内の約二億台に上る。
ミライはよく使われるIDやパスワードの組み合わせリストを持っていて、一致する機器に感染する。今回のNICTの調査は約百通りのID、パスワードの組み合わせを使ってチェックする。実際に侵入することはない。
問題が見つかったIoT機器の所有者には、プロバイダーを通じて注意を呼びかけるメールなどが送られる。早ければ二十五日ごろから送信されるという。
メールをもらったら、やるべきことは二つ。パスワードを変えることと、電源を切ってリセットすることである。感染していてもミライのようなマルウエアは消去される。このことのPRに力を入れてほしい。
セキュリティーが弱いと、悪用されるだけでなく、プライバシー情報を盗まれる可能性もある。対応は社会のためであり、利用者自身のためでもある。
残念なことに、対策がうまくいっても、東京五輪が安全に行える保証にはならない。インターネットの世界に国境はなく、海外からの危険性は残る。新種のウイルスが現れる可能性もある。
IoT機器は二〇年には世界で約三百億台に達するという予想もある。メーカーは設計段階でセキュリティーを高くすべきだ。20カ国・地域(G20)首脳会合などでもテーマに取り上げてほしい。
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