「年利10%」をうたうヤバイ儲け話、ただいま連続摘発中のワケ

そんなウマい話、あり得ません
伊藤 博敏 プロフィール

金融庁は、預金流出に悩むスルガ銀行のために、地銀各行に預金協力を打診。昔懐かしい「奉加帳方式」での救済に動いた。庁内には「自業自得」の声があるものの、資金規模3兆円を超え、地域経済にも根を張るスルガ銀行を潰すわけにはいかない。

だが、スルガ銀行が主導したシェアハウス事業が、詐欺的要素の強いものであることは変わらない。顧客数1258名、融資額2036億円のシェアハウス事業は、どのように伸びていったか。

「8%、30年の家賃保証」という前提が、まずありき、である。その条件を満たす物件を、オーナーの資力で選んで勧める。だが内実は、その基準内で、土地売買に絡んで中抜きをしたり、建設会社にキックバックをさせたりする。

当然、家賃は割高で、入居率はその分低くなり、利回り保証などできぬまま「かぼちゃの馬車」で知られたスマートデイズは経営破綻、他の業者も連鎖した。

いずれもスルガ銀行の融資ありきでスタートしており、同行行員が通帳の書き換えに加担、融資基準をクリアさせており、「銀行ぐるみの詐欺商法」と、オーナー被害者弁護団が声を上げるのも無理はない。

調査途中で銀行の行方が定まらない間は刑事事件化することはないが、5月以降、刑事告訴を受けての捜査着手という流れになりそうだ。責任の所在を明らかにする捜査である。

 

「フィンテック」界隈でも…

金融とテクノロジーを融合させたフィンテックのなかでも、個人が企業に資金を貸し付けるソーシャルレンディングは、新しい金融の形態として期待を集めたが、18年に債務不履行が相次ぎ、金融庁は業務改善命令を連発、規制を含め抜本的な解決を迫られる事態となっている。

これも10%前後の利回りを保証した事業への融資を、ネットの情報だけで集めるというビジネスモデルが、「借りたら返さん(返せん)」という業者の開き直りに繋がっている。なかでもソーシャルレンディングの老舗で最大手、1500億円超のローンファンドを組成したmaneoの不振は、業界の将来を暗示させる。

同社は、maneoファミリーと呼ばれる不動産業者や太陽光発電業者などにプラットフォームを貸して資金調達を手助けしているが、ファミリーの債務不履行が相次いでいる。1社や2社だけでなく、総崩れといっていい状態で、ファミリー破綻は目前だ。

原因は、「借り手保護」を理由に、投資家にどこのどんな事業かを詳細には明かさなくていいことになっており、それに乗じて、集めた資金を別の配当に回すなどの自転車操業が常態化、なかには事業実態のない詐欺案件で募集しているものもある。

業務停止命令、業務改善命令が相次ぎ、ビジネスモデルの破綻が明らかになった以上、規制と同時に警察当局が、犯罪摘発によるケジメをつけることになりそうだ。

投資は自己責任が原則だが、騙す方はあの手この手のテクニックを磨くのに比べ、騙される方は、はじめて引っかかるケースが少なくない。数百億から数千億円単位の詐欺商法がこれだけ多くなっているのは、低金利の逼塞感から逃れようと蠢くカネが、いかに多いかの証明でもある。

メディアは「うまい話には罠がある」という報道を続け、捜査当局は飽くことなく摘発に務めるしかない。

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