テキサス州スナイダー近郊にあるコッジェル油田では、2006~2011年に約マグニチュード3の地震が多発している。75~82年にも多数の地震が発生、油田に被害が及んだが、石油の回収量増加を狙って地下に注入した水が原因とみられていた。当時は、水の注入を中断すると、自然と地震も収まったという。
しかし2004年からは、CO2などのガスを油井に注入するガス圧入法を採用。CO2が溶け込むと石油が膨張し、回収が容易になるという手法だ。その直後から、再び地震が増え始めたという。
共同研究者で、テキサス大学オースティン校地球物理学研究所の副所長クリフ・フローリック(Cliff Frohlich)氏は、「活発化前の大きな変化と言えば、CO2注入しかない」と語る。
フローリック氏によると、油田でのガス圧入とCO2の隔離・貯留策を単純には比較できないが、同様の技術が抱えるリスク把握の一助にはなるはずだという。
「さまざまな温暖化対策が提案されている中、実際に効果が期待できる手法は確定していない。気候工学の専門家ではない私が言えるのは、地球環境の問題に対処する場合、常に予期せぬ結果を想定する必要があるということだ」。
最近話題のシェールガス・オイル採掘でも、水圧破砕法(フラッキング)という同様の技術が採用されている。2012年に米国科学アカデミーがまとめたレポートによるとCO2注入は、フラッキングよりも地震発生率を高めるリスクが高いという。地下に貯留するCO2の量が桁違いだからだ。
現在、CO2の隔離技術はノルウェーやアルジェリアなど世界65カ所で試験的に導入されており、イリノイ州ディケーター近郊の試験場では、3年間で計100万トンが地下の塩水層に注入されている。
ミシガン工科大学で、地球工学や鉱山工学、科学の教鞭を執るウェイン・ペニントン(Wayne Pennington)氏は、「フローリック氏の論文は、CO2注入と地震の相関性を初めて示したという点で非常に重要だ」と評価する。
しかし同氏は、GCS政策が危険と判断するにはまだ材料が不足しているとも指摘。実際、各地の試験導入で問題が発生したケースはない。
「特に、コッジェルよりも注入量が多い油田はあまた存在するが、地震との関連性は指摘されていない。全容を解明するには、この点を乗り越える必要があるだろう」。
今回の研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に11月4日付けで発表された。
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