衆院予算委員会の集中審議で統計不正問題が引き続き審議された。賃金動向を示す毎月勤労統計について野党は不正の経緯や疑惑を追及したが、依然として核心部分は分からないことだらけだ。
統計不正については大きく二つの点が問題になっている。
ひとつは二〇〇四年から、全事業所を調査すべき東京都内の大企業の調査対象を三分の一の抽出調査にしていた。減らした対象から得たデータを復元する作業もしていなかった。それが一八年一月から密(ひそ)かに復元したため賃金がそれまでより高く算出された。
誰が何の目的で始めたのか、調査を実施する厚生労働省の組織的な隠蔽(いんぺい)はなかったのか。なぜ一八年から復元したのかも経緯が明らかになっていない。
二十日の予算委でもこれに関する議論は深まらなかった。与党は参考人招致を小出しにせず、歴代の担当者を国会に呼ぶべきだ。
もうひとつは、中規模事業所の調査に使う複数の手法を一八年一月に変えた点だ。この変更で賃金が上振れしたのはアベノミクスの成果を強調したい政権が圧力をかけたのではないかと野党は疑っている。
中規模事業所は抽出調査だ。それまでは二~三年ごとに対象を総入れ替えしていた。この手法だと過去とデータに段差がでるため、過去にさかのぼって変更の影響を補正していた。
全数入れ替えると比較的賃金の低い新設事業所などのデータも反映されるため変更前より賃金が下がりやすいともいわれる。同時に補正される過去分も下がる。
この手法についての「問題意識」を首相秘書官が一五年三月に厚労省に伝えた。その直後に厚労省は見直しの検討に入った。
結果として一部入れ替えに変更され、しかも過去にさかのぼらないことにした。
同時に、算定に使う労働者の状況に関するデータなども変えた。いずれも賃金を上振れさせる変更をしていると野党は追及している。不自然なのは確かだ。
政権の関与や厚労省組織の問題点など知りたいことは多い。
だが、政府は野党が答弁や資料を求めても進んで説明をする姿勢に欠ける。安倍晋三首相は関与していないと言うのならば、堂々と説明すればいい。
原因究明が進まなければ、再発防止策まで議論は行き着かない。政府はその責任を自覚すべきだ。
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