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【東京】

「悲惨な戦争」絵本で伝える 国分寺の図書館司書が出版

「ぜひおうちの人と読んでほしい」と話す作者の山下ますみさん=国立市で

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 国分寺市の図書館司書山下ますみさん(59)が、東京大空襲の体験者の話を絵本にし、20日出版した。町も人も動物も炎に包まれた様子を、迫力ある絵で再現。「絵本を読んた子どもたちが、なぜこんな悲惨な戦争が起きたのか考えるきっかけになれば」と話す。 (長竹祐子)

 母が北九州市で空襲を体験し、父は元特攻隊員という山下さん。市内の小学校で司書として児童に関わる中で「近頃、戦争にまつわる本を子供たちが手にする機会が減っている」と実感していた。今の平和のありがたさを伝えていこうと国立市の「くにたち原爆・戦争体験伝承者」として活動する中で、東京大空襲体験者の二瓶治代さん(82)に出会った。

 二瓶さんは一九四五年三月十日、東京大空襲で特に火の激しかった江東区亀戸周辺で、一時は家族と離れ離れになりながらも、死体の中に埋もれて助かった。空襲前日の夕方、一緒にままごと遊びをした後に隣の幼友達「まさおちゃん」たちと「また、あしたあそぼうね」「あしたね」と交わし、二度と果たせなかった最後の約束が、今も忘れられないという。

 その体験を聞いた山下さんは「絵本にすれば小さい子たちも手に取りやすく、想像しやすい」と、執筆に取り掛かった。絵は国分寺市在住のイラストレーターささきみおさんが、自身の八歳の娘を主人公の「はるよちゃん」に重ねながら、優しくも迫力のある筆遣いで、思いを込め描いた。

 特に、空襲で猛火にのみ込まれた馬が荷車ごと燃えてしまう場面や、当時の街並み、服装の表現など、何度も本人に確認して作り上げたという。焼夷(しょうい)弾の音を「ヒューヒュー」とすると「実際の音はヒュルヒュルだったのよ、と二瓶さんに教わりました」と山下さん。

 出来上がった絵本を見て二瓶さんは「まさおちゃんのことが絵本に残ってうれしい。心に一区切りついた」と山下さんに感謝した。

 絵本「またあしたあそぼうね」は税抜き千四百円(新日本出版)。三十二ページ。大手書店や東京大空襲・戦災資料センター(江東区)などで購入できる。三月十日開催の「江東区平和のつどい」会場でも入手できるという。

 

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