アインズ&アルベド「「入れ替わってる!?」」   作:紅羽都
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はじめに2つ謝罪を、

アルベドごめん。
それから、今回手抜きです。ごめん。


アインズ&アルベド「「入れ替わってる!?」」その3

「これにて定例報告会を終了する」

 

時間は巻き戻って、アインズ擬きのアルベドによる定例報告会。数人の守護者を前にして堂々と玉座に座るアルベドがそこにいた。だが、どうやら誰一人として彼女のことに気づいた者はいないようだ。

 

(はぁ……デミウルゴスを欺き続けなければならないというのは、中々に気を使うわね。顔を合わせる度にヒヤヒヤするわ)

 

内心緊張しっぱなしであったが、なんとか乗り切れたことにホッと一息つく。実は似たような緊張をアインズがいつも感じているというのは、アルベドの与り知らぬところである。

 

(さて、さっさと終わらせたい所だけど、これだけは言っておかないと)

 

絶対にボロを出す訳にはいかないと、緊張が緩んできた己を戒め気を張り直す。そして、アインズとの練習を思い出しつつ、腹の底に響くようなバリトンボイスをつくった。

 

「最後に1つ報告がある。先程、ワールドアイテム『強欲と無欲』に関することで重大な発見があった。これから、そのことでひとつ実験を行う」

 

『おおっ』と、守護者達がどよめいた。最奥に秘されたナザリックの至宝。世界の真理とまで言われる究極の魔道具。その世界の謎の一端を解き明かすという宣言に、興奮しないシモベはいなかった。

皆口々に『至高の御方に紐解けない謎など存在いたしません』だの『流石は魔導の極致に御座す方でございます』だの言い、アインズを褒め称えた。

 

「実験はとても繊細な作業が要求されるものだ。私一人っきりで行う必要がある」

 

「成る程、その間は緊急の報告などは受け付けないということですね?」

 

アルベドの言葉の先を読んだのはデミウルゴスだ。その脳に秘められた叡智は、アルベドを上回る。アルベドが若干苦手としている相手であり、入れ替わり中の現在では、完全に邪魔者認定されいる男だ。

どっか遠くの任務へ放り出したくなる衝動に駆られるが、抜群に優秀なのも事実なのでそういう訳にもいかない。既にアインズとアルベドの活動が制限されている今、人手不足は結構深刻なのだ。

 

「うむ、そういうことだ。守護者統括であるアルベドは、私の勅命で別の任務に当たっている。差し当たって、その間の指示は全てデミウルゴスに任せることとする。異論のある者は?」

 

「…………」

 

アルベドの確認に一同は静まり返る。

 

「アインズ様御意志に逆らう者など、有ろう筈がございません。御命令、確と承りました。このデミウルゴス、例え星が揺れようとも、アインズ様の元に伝わることなく全ての揺れを収めてみせましょう」

 

「そうか、期待しているぞデミウルゴス。では、本日はこれで解散とする」

 

アルベドは守護者達の返事も待たずに『リングオブアインズウールゴウン』を用いて、早々にワープした。視界が一瞬にして切り替わる。

 

「ふぅ、疲れた。これからは常にアインズ様のフリをし続けないといけないと思うと、気が重いわ……」

 

肩の凝りをほぐそうと揉んでみると、返ってくるのはゴツゴツとした骨の感触のみ。なんとも揉み応えのない肩だった。至高の存在の玉体にケチをつける訳ではないが、やはり肉のない体というのはなかなか慣れそうにない。アルベドは思わず嘆息する。

 

「とはいえ、それもこれも全て、私がアインズ様と結ばれる為。そう考えればこれくらいの任務どうってことはないわ」

 

悍ましい瘴気を立ち上らせ、邪悪に笑うアルベド。彼女の頭の中では、既に明るい家族計画が進行していた。二人の子供に囲まれてアインズに寄り添う光景を思い浮かべ、アルベドの体が歓喜に打ち震える。

 

ふと、アルベドの体が光のエフェクトに包まれた。そう、アンデッドの種族特性である精神攻撃への完全耐性、それに基づく感情の抑制だ。これまでも、アインズが激しく動揺した時や怒りを感じた時に発動し、彼を補助した特性である。アインズの体に憑依しているアルベドが発する感情も、例に漏れず抑制の対象となるのだ。

結果、アインズへ向けられた悍ましいほどの劣情は平静になるように抑えられた。アインズは自らの種族特性のお陰で、思わぬ形で貞操の危機から脱したのだ。

 

「アインズ様のお体と全ての権利を手にした今、凡ゆることが思い通りにできる!アルベドを正妻にすると宣言してしまってもいい、外堀を埋めていつでも正妻になれるようにしてもいい……或いは、無理矢理手篭めにしてしまうなんてことも……くふー!」

 

当然そんなことはなく、あいも変わらずアルベドは興奮しっぱなしである。一体何故なのか。

解説すると、感情の抑制の効果は精神状態を平常時に戻すというものだ。そして、アインズが感じる怒り等の一時的な感情と違い、アルベドの愛情は設定として固定されている。その為平常時に戻されたとしても、アルベドのアインズへの想いは片時も消失することはないのだ。

更に、アルベドのアインズラブは創造主と被造者という関係もあって、平常時でもかなり激しいものとなる。はっきり言うと、デフォルトでも既に暴走状態だ。つまりアルベドに感情の抑制が働くと、普段理性によって最小限に抑えられている愛が、逆にデフォルトの暴走状態に戻されるということになる。

その結果爆誕してしまったのは、止まることなく常にご乱心し続けるバーサクアルベド。哀れなことに、1話冒頭でアルベドが一回光ってしまった時点で、もうアインズの貞操は風前の灯だったのだ。ナザリックに於ける最高権力者を得てしまった彼女を、最早誰も止めることは叶わない。

 

「さて、お楽しみの時間がやってきたわね。《フローティング・センス》」

 

そんな訳で現在暴走真っ最中のアルベドは、徐に1つの魔法を放った。どうやら、アインズの習得した魔法を使えるらしい。その魔法の効果は、術者の視覚と聴覚を移動させ、離れた場所の景色を見たり声を聞いたりするというもの。無修正トカゲックスを公共の電波で放送させた《フローティング・アイ》の音も聞こえるバージョンだ。

 

『これは何という名前なのかしら?』

 

『アルベド様の為に考案させて頂いたオリジナルカクテルで御座います故、まだ名前はありません。どうぞ、お好きな名前をお付けください』

 

そして映す視界の先には、アルベドの姿をしたアインズがいた。そう、アルベドがワールドアイテムの研究を理由に一人っきりになって理由は、この覗きを邪魔されないようにする為であった。まぁ、意中の相手と体が入れ替わったら、相手が何をするか気になるのは当然のことだろう。完全に職務怠慢だし寧ろ犯罪だが、本人は至って大真面目である。

 

さて、現在アインズがいる場所は、第九階層ロイヤルスイートのショットバー。丁度、カクテルが出てきたところのようだ。

 

『美味しいわねぇ、これ。素晴らしい仕事だわ、副料理長』

 

『恐れ入ります。アルベド様、次は是非レモンを入れてからお飲みください』

 

「アインズ様が、アインズ様がお食事をなされている!素晴らしい、実に素晴らしいわ!叶わぬ夢と諦めていたけれど、これでアインズ様に私の手料理を振る舞うことが可能になったのね!そして、行く行くは愛妻弁当なんて……くっふー!」

 

雌雄が入れ替わっているのだから、アルベドが弁当を作っても愛妻弁当にはならない。というか、そもそもアインズもアルベドも料理スキルは獲得していないので、どちらの体でも手料理すら不可能である。しかし、トリップ状態の為、そんな瑣末なことには気づかないようだ。

 

『入れると、どうなるのかしら?』

 

『入れてからのお楽しみ、で御座います』

 

『あらそう、それは楽しみね』

 

「ああっ、自分の体の筈なのに、中身がアインズ様だと思うと体が疼いてしまう……!眩く光り輝いて見える!」

 

2人の会話を盗み聞きながら悦に浸るアルベド。どうでもいいが沈静化のエフェクトで光っているのはアルベド自身である。聖母の表情を浮かべるアインズに大興奮してしまい、休むことなく毎秒発光していた。淡く発光する白骨死体が、自身の体を掻き抱きながら女口調で悶え狂う姿は正に狂気。SAN値直葬待った無しである。

 

『……綺麗だ』

 

『どうぞ、お召し上がりください』

 

『…………』

 

アルベドが欣喜雀躍している間にも、2人の会話は続いていく。

そして、アインズが2杯目のカクテルをおかわりした時のこと。

 

『……モモンガにするわ』

 

『モモンガ様……?一体何を仰っているのですか?』

 

「モモンガ様?」

 

マイコニドの副料理長とアルベドが、同時に疑問符を浮かべた。

モモンガ、それはアインズがアインズを名乗り始める前まで使われてきた彼の名前。改名してからというもの、めっきり呼ばれることのなくなった本当の名前だ。

 

『このカクテルの名前よ。ナザリックの名を冠するカクテルがあるのですもの、モモンガ様の名を冠するカクテルがあってもいいでしょう?』

 

『……成る程、確かに素晴らしいお名前ですね。文句のつけようがありません』

 

『当然よ』

 

「…………」

 

アルベドは絶句した。感情を強く揺さぶられたらしく、沈静化のエフェクトが淡く光る。

 

「モモンガ様……」

 

繰り返すようだが、今アインズが飲んでいるカクテルは、アルベドの為に作られたもの。アルベドが飲む為に作られたものである。

 

「それは、つまり……」

 

そのカクテルにモモンガという名前を付ける、それが一体何を意味するか。いや、アルベドがどういう意味で受け取るか、その答えは火を見るより明らかだ。

 

「私を食べて、ということですね!?つまりはそういうことなんですね!?」

 

そういうことではない。

 

守護者の勝手な解釈が悪い方向で発揮されてしまった瞬間だった。まあ、あれだけ多用してきたのだし、今回の件がなくともいつかは破綻してしまっていただろう。川立ちは川で果てるのだ。

 

『ほら、こうして黒く変わると、アインズ様がいつも着ていらっしゃるローブの色みたいでしょう?』

 

『正に、仰る通りでございます』

 

「それはぁっ!!あなたの色で染め上げて、ということですね!?そういうことなんですね!?」

 

そういうことではない。

 

『キラキラした光が、まるで夜空に輝く星のよう。あの日の宝箱みたいな星空を思い出すわ』

 

『過分なご評価。光栄でございます』

 

「それはぁっ!!お前は私にとっての宝、ということですね!?そういうことなんですね!?」

 

そういうことではない。

 

もう何を聞いてもアインズからのラブコールにしか聞こえなくなっていた。重症である。いや、元々手遅れだったか。

兎に角この時点で、アルベドの入れ替わりに乗じて正妻になっちゃおう作戦の方針は決定した。それは、アインズ様を美味しく頂いて手篭めにしちゃおう作戦である。アルベド的にも冗談で言っただけでやるつもりはなかった方針なのだが、アインズがその気ならばやるしかない。据え膳食わぬは男の恥だ。男?

 

因みに、当然ながらアインズにその気は全然なかった。カクテルにモモンガと名付けた理由は3つ。アルベドの為のカクテルなのでアルベドが気に入るだろう名前を付けてあげたかったこと。アインズのネーミングセンスが残念なことは周知の事実だったので、どこからか引用しようと考えたこと。黒く変色したカクテルを見て、自身のアバターが思い浮かんだこと。ただそれだけの理由だ。

 

アインズが親心でつけた名前に対して、性的に大興奮するアルベド。酷い有様であった。しかし、彼女の暴走はまだまだ止まらない。

 

『しかし、お酒を飲んでも酔えないというのは寂しいものね』

 

『それは仕方がありません。至高の御方がお隠れになった今、アルベド様はナザリック最強の盾。アルコール程度で揺らぐようなお身体ではありませんから』

 

「承知致しました!モモンガ様!」

 

勝手に承知しないで欲しいものだ。アインズは命令は一切出していない。

 

「私の妙技でモモンガ様を酔わせてさしあげます《トリプレットマキシマイズマジック・ドランクネス/ 魔法三重最強化・酩酊》」

 

アルコールで酔えないなら魔法で酔わせればいいじゃない。それがアルベドが辿り着いた答えだった。とんでもない暴論である。1話でアインズを襲った謎の酩酊の正体は、アルベドの魔法だったのだ。異世界へ転移してフレンドリーファイアが可能になった弊害である。

これにより急激に酔っ払い状態になってしまったアインズ。頬に赤みがさし、瞳が潤み始める。頭がボーっとして記憶があやふやになる。

 

『あら、おかしいわね……急に眠気が……』

 

『どうなされましたか、アルベド様?』

 

「あっはぁあああ!!酔ったモモンガ様ぁああああ!!犯罪的ですぅうううう!!」

 

ドッタンバッタン、浜辺に打ち上げられた魚のようにアルベドが跳ね回る。もう沈静化のエフェクトが重なりに重なって、とんでもなく発光していた。人間には直視が不可能なレベルである。

アルベドの狂喜の舞は、アインズが寝静まる迄続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あっ……あふっ……ひぁ……あんっ』

 

「×$○※♭#▲※☆%×$%▲☆♭#!?」

 

言語化不可能である。

 

ショットバーを出たアインズは、酩酊の魔法の所為でうっかりアインズ自身の部屋に入ってしまう。それだけでアルベド的には、据え膳認定の大興奮発狂ポイントだったのだが、何とアインズは酔った勢いで1人で致し始めてしまった。そして、興奮が絶頂に達したアルベドは、

 

「ンクッッッ!!!!ふぅ……この様子を見ると、やはりアインズ様がそのつもりというのは確定のようね」

 

何と自ら沈静化を発動させてしまった。俗に言う賢者タイムというやつだ。とはいえアインズを食べる方針は変わっていない。寧ろ、より決意が深まっていた。

 

「そうと決まれば善は急げね。あまりアインズ様を待たせる訳にはいかないわ」

 

そそくさとアインズの私室へと向かうアルベド。後は知っての通り、突撃お前が晩ご飯の時間である。

目的地に辿り着き、ノックもせずに部屋へと入る。そこには、快楽に囚われ周りの見えなくなったアインズがいた。これ幸いと暫く生で観察してから、丁度良さそうなタイミングで声をかける。

 

「何をなさっているのですか、アインズ様?」

 

ビックゥッ!?

面白い程飛び跳ねるアインズ。体を縮こまらさせ怯えるように毛布に包まる姿が、アルベドの嗜虐心をくすぐる。恥じらうアインズを虐めたくなってしまう。

 

「……何故服を脱いでおられるのですか?」

 

アインズが聞かれたくないようなことを、聞いてみたくなってしまう。

 

「お、お前なら、私の真意を理解しているのだろう?」

 

「ッ!?もちろん、理解していますよ」

 

(やはり、アインズ様もその気なのですね!!)

 

その言葉はアルベドには『そんな恥ずかしいこと言わせないで……』と言っているように聞こえた。いつも凛々しく勇ましい主の見せる予想外のいじらしい姿に、アルベドの嗜虐心が更にくすぐられる。そして、

 

「ところで、アインズ様」

 

「……ん、何だ?」

 

「少し練習をしませんか?」

 

本格的な言葉責めが始まった。

 

 

 

これが、あの日起こった珍事の全容である。因みに、ナニが無いのにどうやったのかというと、アルベドの開発したオリジナル魔法《クリエイトマジカル×××××/魔法×××××創造 》の効果によって生やした。エロはいつだって技術を発展させるのだ。




次回、何も考えてないので多分遅れます。



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