アインズ&アルベド「「入れ替わってる!?」」 作:紅羽都
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アインズ様即堕ち
SEX
(あれ……今、何処に向かってるんだっけ?)
ショットバーを出たアインズは意識混濁状態で、まともに考えることが出来なくなっていた。酒に含まれるエチルアルコールが、彼の脳の機能を著しく制限してしまっている。
(ああそうだ、部屋に戻らないと)
今彼の頭の中にあるのは、散漫した思考を必死に掻き集めて構築した、自室のベッドでさっさと寝るという目標のみであった。それ以外のことを気にしている余裕はない。
「ふわぁ……あと、もう少し」
そしてそのような状態の彼が、自身の肉体のことを加味してアルベドの部屋へと行くなんて判断を出来る訳がなかった。
「とうちゃーく」
ゆったりとした足取りで辿り着いたのは、真の意味での彼の自室、アインズの部屋だ。躊躇うことなく扉を押し開き、中へと入って行く。そして脇にあるベッドを確認すると、間髪いれずにジャンプで勢いよく飛び込んだ。
ぼすん
抜群のクッション性が、アインズのものとなっているアルベドの妍麗な肢体を優しく受け止める。体の前面でその柔らかな感触を堪能したアインズは、体の向きをごろりと変え仰向けの状態になった。
手足を大きく伸ばして、全身を脱力させる。そうすると、先程より一層体が深くベッドに沈み込んだような錯覚を覚えた。肺の空気が普段より多く吐き出され、それと同時に疲労や心労がスッと抜けていく。
数分間そのままの体勢で呼吸だけをしていると、アインズはこの上なくリラックスした状態になった。僅かにクリアになった思考が、嘗て人間だった頃の睡眠の記憶を思い起こさせる。
(そういえば眠気を感じたのは久々だな。睡眠欲が消失したって分かった時も特に感慨は浮かばなかったけど、やっぱり眠気があるとベッドの感触が一層心地よく感じるなぁ)
ごろごろ、ごろごろ
自身の体より遥かに大きなその面を、全身で味わうべく右へ左へ転がり回るアインズ。それに合わせて、ぴっしりと整えられていた掛け布団が段々と縒れていく。
そして何を思ったか、アインズは掛け布団の端をむんずと掴むと、そのまま体に巻きつけるように転がった。端から端へ辿り着く間にアインズは簀巻き状態になって、当然身動きが取れなくなる。腕も足も満足動かせないくらい、布がきつく締め付けてくる。豊満な胸を圧迫されて、呼吸も少しし辛くなった。だというのに、そんな状況に不思議とアインズは息苦しさを感じていなかった。
(なんかこれ、凄く落ち着く)
どういう訳か、全身が得も言われぬ幸福感に包まれる。それはまるで母親の胎内に戻ったかのような、大いなるものに優しくしっかりと抱き締められているかのような、心が安らぐ感覚だった。
ふとアインズの、いやアルベドの婀娜な体躯が、溶けそうな程の強い熱に苛まれた。それは、今までに感じたことのない不思議な熱さ。アルコールによって齎されたものとは違う、甘く切なく、心が引き絞られるような、そんな熱さだった。
鼓動が早まり、呼吸が荒くなる。玉の肌にはジワリと汗が浮かび、悲しくもないのに瞳が潤む。まるで酷い風邪を拗らせた時のような症状だが、あまり苦しさは感じられない。
(あつい……)
篭った熱に耐えられなくなったアインズは、のっそりと起き上がると纏わり付いている布団を開けさせた。布団は肩からするりと滑っていき、ほんの僅かな気流を生み出しつつ捲れ落ちる。ヒュッと、涼やかな風が露出した腰や胸元を撫でて、体の火照りを拭い去っていく。
(あつい……あつい……)
だがその程度の風では、全身を苛む熱は治らなかった。
アインズは熱源を探ろうと、惚けた頭でアルベドの艶麗な体を見下ろす。肩、胸、腕、太腿と、段々と視線を下げていく。結果、彼が目を付けたのは全身を包む白い布だった。
恐らく、体が熱いのはこの布が原因に違いない。うだった頭でそんなことを考えたアインズは、徐に服の裾に手を掛けグイッと持ち上げた。胸を隠していた布地がぺろんと捲れ上がり、なだらかな腹部や、たわわな乳房の全容が詳らかに晒される。
ぼんやりと胸を見つめるアインズ。その部位は、体が入れ替わる前であったら相当の動揺を誘っただろうが、今は何も感じない。それどころか、自身の感性が大きく変化していることにすらアインズは気がつかない。
慣れない女物の衣服に梃子摺りながらも、身を捩らせてスッポリとそれを抜き取る。粗雑に脱ぎ捨てられた衣服は、ファサリと音を立ててベッド脇へと落下した。
(まだ……あつい……)
上着を脱いでも、まだ熱は治らない。となれば、残っているのは下だけだった。
躊躇も恥じらいも、他人の素肌を勝手に覗いくことへの罪悪感すら一切なく、スカートを下ろそうと手を掛ける。その行動に最早アインズの影はなく、感性は殆どアルベドそのものだった。
暫く苦戦した後、緩められたスカートがスルリスルリと足を抜ける。更に奥に隠されていた下着もあっさりと抜き取られ、滑らかな布地が太腿を撫でる。秘部が外気に晒される感触を感じ取りつつ、アダルティなショーツを興味無さげに蹴飛ばした。アルベドの下半身を覆っていた衣服が全て、上着と同じく脇へと放り投げられる。
そうして遂に、アルベドの裸体の全てが露わになった。何1つ欠けることなく完璧に整った珠玉の天姿。構成するのは、触れるのが憚れるような究極の曲線美。老若男女、見る者全てを魅了する婉容な女神の艶姿。
「はぁ、はぁ……」
だが、全裸になっても体の熱は治らない。篭った熱気を排出するように、荒い呼吸を繰り返す。堪え切れない程の火照りに参ってしまったアインズは、自身の体を掻き抱きながら、頭からベッドへと突っ伏した。
バサッ
逆上せたように視界が回り、平衡感覚すら掴めなくなっている。更に、突如胸に去来するのは、身を穿つような寂寥感。例えるなら、一切光の届かない深海の底に閉じ込められたかのような、深い深い絶望。アインズは藁にもすがる思いで布団にしがみついた。
先程体に纏っていた掛け布団は、グルグルに丸めた所為でこんもりとしたダマになっていた。それを抱き枕にするかのように手を回して抱き竦めると、少しだけ心が落ち着くのが感じられた。だがその代わりに、布団と接している肌は燃えるように熱くなっている。今度は体も密着させ、両足もしっかりと布団に巻きつけた。全身が焦げそうになる。
熱い、熱い、熱い、でも、手離したくない。そんな思いと一緒に、掛け布団を心の奥底で愛しい人に見立ててしがみつく。その人物が一体誰なのか、アインズには分からない。
「あぁっ……ふあぁっ……」
ふと、下腹部にピリッとした快感が走った。思わず嬌声を漏らしながら、上体を仰け反らせる。
「ひゃっ!」
体がビクンと跳ねた。また背筋に甘い快感が走る。今度はその快感の出所がはっきり分かった。それは胸の先端から来ていた。股間と胸、曝け出された秘部が布団に擦れる度、言い知れぬ快感が身を襲う。
「ぁ……あふぅ……」
危険な予感を感じつつも、恐る恐る体を動かす。グイッと布団を引っ張ると、さっきよりも強く擦れて、またピリリとした快感に全身が包まれた。
「あっ……あふっ……ひぁ……あんっ」
気がつけばアインズは快感の虜になっていた。繊麗な体躯を蠱惑的にくねらせ、体を休むことなく布団に擦り付ける。そこに理性は既に無く、凡ゆる生物が異性を求めるような極めて本能的な行動だった。
そして実はこの行為は、本来の体の持ち主が日課として行なっている癖でもあった。アインズは肉体に宿る本能に負け、完全に主導権を失っている状態になってしまっていた。もうどう足掻いても、この快楽の坩堝から逃れる術はない。
「んっ、んんぅ!んむぅ!んふぅ!」
微かに残った羞恥心が、これ以上嬌声を漏らすまいとして、顔を枕に押し付けて声を殺させる。だが、主人の枕に顔を埋めている状況に倒錯的な快楽を覚えてしまった肉体は、より一層興奮を掻き立てた。
快感は風船のように止め処なく膨れ上がる。腹の奥に溜まった熱はとっくに頂点に達している。パチパチと線香花火ように頼りなく明滅する意識。筋肉が勝手に収縮するのを抑えられず、腰はガクガクと震えだす。そして溢れ出しそうになる快感をギリギリで押し留めていた堰が、遂に限界を迎えた。過剰に膨れ上がった風船は、音を立てて盛大に弾けてしまう——
「何をなさっているのですか、アインズ様?」
直前で冷水をぶっかけられたかのように熱が冷めた。
聴こえてきたのは20年以上連れ添った、誰のものより聞き慣れた声だった。元を辿ると、そこには豪奢な漆黒のローブを纏った骸骨が扉の前に立っていた。そう、入れ替わりによりアインズの体を得たアルベドである。
(アルベド!?いつの間に入って来たんだ?というか、まさか見られた!?)
快楽の泥沼から一気に現実に引き戻されたアインズは、自身の痴態を再認識して愕然とした。現在の状況を考慮した上で先程までのアインズの行動を一行にまとめるとこうなる。
『部下の裸体を勝手に見て自慰に耽る上司』
主の威厳も何もあったものではない。それどころか、疑いようもなくただの犯罪者だ。
何とか弁明しなくてはと思い、慌てて飛び起きたアインズ。素っ裸の肉体を隠すように咄嗟に布団を体に巻きつけると、アダルト雑誌を母親に見つけられた思春期の少年のように、しどろもどろの言い訳を始めた。
「違うんだアルベド!あーその、えっとこれは……そう!実はアルベドに話しておきたいことがあってだな!部屋でお前が来るのを待っていたのだ!」
「……何故服を脱いでおられるのですか?」
「うぐっ、そっ、それは……」
早くも二の句が告げられなくなり硬直するアインズ。必死に頭を巡らせるが、この状況を覆せるような神の一手を彼は持ち合わせていなかった。必然的に、次の一手として繰り出されるのは使い古された常套手段となってしまう。
「お、お前なら、私の真意を理解しているのだろう?」
丸投げだった。アインズの悪い癖である。
(全裸でいることの真意って何だよ!どう考えてもただの変態だろ!)
そして、咄嗟に口を衝いて出てしまったが、今回ばかりは無理があると彼自身悟っていた。これまで幾度となくアルベドとデミウルゴスの超好意的な解釈によって助けられてきたが、こればっかりは深読みのしようがない。
ガラガラと、これまで築き上げてきたものが崩れ落ちる音が聞こえた気がした。こうなった以上アインズは、もう変態というレッテルからは逃れられない。暗い未来を想像したのか、アルベドの返答を待たずして恐怖に縮こまるアインズ。そして、アルベドはゆっくりと口を開いた。
「もちろん。理解していますよ」
「……ぇ?」
思わず、惚けた声が口から溢れる。まさかの成功だった。一体この現状を見て何を理解したというのか、表情のない骨の顔面からは何も読み取ることができない。
とはいえ、究極の局面を乗り切って一安心のアインズ。改めて最終奥義、丸投げの効力に感心する。それと同時に、アルベドがどういう受け取り方をしたのかが気になった。ここをしっかり把握しておかないと、後々マズいことになる。
「ところで、アインズ様」
「……ん、何だ?」
アインズが質問しようとしたところで、先んじてアルベドが口を開く。そのことに、アインズは多少の違和感を覚えた。普段ならアインズが話を始める時、アルベドはそれを逸早く察知して静かに聞く姿勢をとる。アインズの会話がアルベドによって途切れさせられることは、彼女が正常な精神状態ならばまず起こり得ないことだ。
(まぁ、たまにはこんなこともあるだろう)
そう考え、特に気にすることなく流すアインズ。寧ろ、発言を潰されたことを必要以上に気にしてしまっているのを、自身の狭量さが招いた事態だと考え、意識してスルーするようにした。
……或いは、この時点で気がついていれば、彼は闇に引きずり込まれずに済んだかもしれない。
アルベドの精神状態は、とうの昔に正常ではなくなっていたということに。
「少し練習をしませんか?」
「練習?」
唐突な発言に小首を傾げるアインズ。それを見たアルベドは心底楽しそうに笑う。
既視感のある光景。そう、アインズが少し前にアルベドに言った言葉と同じセリフだ。
「ふふふ、駄目じゃないかアルベド。私はアインズ様に対してそんな話し方はしないぞ?」
そっくりそのまま、口調だけ変えてアインズのトレースするように続けるアルベド。唐突な発言について行けず、アインズは困惑するばかりだ。
「いきなりどうしたんだアルベド。RPの練習なら先程十分に——」
「命令だ、アルベド」
「っ!?……はっ、し、承知致しましたアル、アインズ……さま」
アルベドから威圧が放たれる。アインズは強い口調で命令された途端、一瞬で抵抗できなくなった。先程の感覚とはまた違う強制力が体に働き、気づけばアルベドの足元に跪いている。
「そうそう、今は私がアインズでお前がアルベドだ」
ゆっくりと、言い聞かせるように、一言一言はっきりと告げる。これも、アインズが口にした言葉だ。
「私はお前に何を言ってもいい立場にあって、お前は私の命令に従う立場だ。それをよく意識しなさい」
アインズの背筋が凍りついた。肉食獣や猛禽類に狙われているかのような恐怖に包まれる。
「さて、練習のお題は何にするか……」
「ま、待て!さっきからどうしたというんだアルベド!何か様子がおかしいぞ!」
「ん……?ふむ……」
チラリと視線を向けるアルベド。未知の恐怖に怯えるアインズを空虚な視界に捉えた。そして、動かない筈の骨の顔がニヤリと表情を変える。
「まったく、どうやら立場というものが理解できていないようだな……アルベド!!」
「ひゃい!」
アインズの体が大きく飛び跳ねた。勝手に目が潤み、耳に聞こえる程心臓が高鳴る。まるで親に叱られる前の子供のような心境だ。
「練習の台本が決定したぞ」
この時アインズは、アルベドの周囲にドス黒いピンクのオーラを幻視した。それは、絶望のオーラが生易しく感じる程の濃密な瘴気を放ちながら、アインズを包み込んでいる。
「今回はお仕置きも兼ねて、お前にはある報告をしてもらう」
そのオーラに名前を付けるなら『欲望のオーラ』が相応しいだろう。又の名を『アルベドサマゴランシンのオーラ』。
「私がこの部屋に来た時、一体何をしていたかの報告だ。詳細かつ丁寧にな」
それは、アルベドがハッスルしてる時に発するオーラである。
アインズの生存本能が全力で警鐘を鳴らした。
(このままでは美味しくいただかれてしまう!)
慌てて脱出経路を探すも、唯一の出入り口である扉の前にはアルベドが陣取っている。体がアルベドの今、助けてくれる護衛はいない。万事休すだった。
「アルベド」
低い声で呟きながら、じわりじわりと真綿で締め上げるようににじり寄って来るアルベド。身の危険を察知したアインズは、後退って距離をとる。
「アルベドよ」
しかし、数歩下がったところで直ぐに壁に背がついてしまった。彼我の距離はみるみる縮まる。
「お前は」
もう目と鼻の先だった。その距離、約5cm。囲い込み追い詰めて来る蛇を前に、カエルは身動きひとつとることができない。
そして、アルベドの魔手がアインズを襲う。
「モモンガを愛している」
「へ?」
突然告げられた謎の言葉に、アインズは疑問符を浮かべた。
それはアルベドについて書かれた、最後の設定。嘗てアインズが書き換え、心の底から後悔した、忌々しい呪いの言葉だ。
アルベドは、アインズの細腰に手を回して抱き寄せた。
「お前はモモンガを愛している」
ドキリ、アインズの心臓が一際大きく脈動した。支えられた腰からは力が抜け、自力では立てない状態になっていた。
先程ベッドで感じたのと同じ感覚。体が勝手に動き、精神が引っ張られる。魂の奥底に刻みつけられたその言葉が、アインズの心を蝕む。正しく、呪いのように。
「アルベドはモモンガを愛している」
突如として、身を灼くような激情がアインズを襲った。アインズが仲間を想うよりも、遥かに勝る強い想い。愛しい人の為ならば、命も惜しまず世界をも敵に回す究極の愛。
溢れ出しそうになる程の感情の波に、アインズの心が塗り潰されていく。
「私は誰だ?」
顔が接触する程の至近距離で、アインズの瞳を覗き込む。
「私は誰だ?言ってみろ」
そして、その瞳に映っているのは紛れも無いアインズの姿だった。
「……モ、モンガ、いや……アイ、アル……ベド、アルベドだ」
「違う、もう一度だ。私をよく見ろ、お前の愛する者の姿をその目に焼き付けろ。さぁ!私は、誰だ!」
「ア、アイ……う、うあ……あぁ」
ここで折れたら、もう戻れなくなる。そんな予感があった。アインズは必死になって抵抗をする。
両手で顔を覆ったアインズ。そんな彼を見て、アルベドは耳に顔を寄せ、優しく語りかけた。
「何を怯えている?これは練習、ただのRPの一環だ。今は私がモモンガ役でお前がアルベド役だ。ただ役になりきるだけだ」
「……アルベド、役?」
なんてことのない言葉だ。だが、やけに脳内に響き渡る。
「そうだ。お前はアルベド役で、そして私はモモンガ役、それだけだ。さぁ、私の名を言ってみろ」
「…………」
……そうだ、これを言った所で、何も自分が消える訳ではない。ただ、ちょっと、ネカマプレイをするだけだ。それだけだ、それだけで、きっと——
「モ……モモンガ、さま……」
——楽になれる。
ピシリ
何かが割れる音がした。
「そう、私の名はモモンガだ。では、お前の名前は?」
「アル……アルベド……」
「ふふふ、その通りだ!やればできるではないかアルベド」
「ありがとう、ございます……身に余る、光栄です」
「では、練習を続けよう。私はお前に何を言ってもいい立場にあって、お前は私の命令に従う立場だ。それをよく意識しなさい」
アルベドの真似をする必要はなかった。アルベドの体が、正しい自分を知っていた。だから、それに任せるだけでいい。溢れ出る愛に流されるだけでいい。そうしていれば、完璧に、アルベドになりきれる。
「はい……何なりとご命令ください」
そして、アインズの精神は完全に飲み込まれた。
ちょっと堕ちるのが早すぎる気もするが、ハードが勝手にソフトを書き換えてしまったのだから仕方ない。アインズがアンデッドになった際人間性を失ったように、器の形は精神の形に作用する。アルベドに刻まれた「モモンガを愛している」という言葉は、アルベドの肉体を得たアインズにも強く影響を与えてしまったのだ。
「では今度は、私が来た時お前が何をしていたのかを言ってみろ。なるべく詳細にな」
「……はい、モモンガ様」
虚ろな瞳を潤ませ、羞恥に顔を赤く染める。死ぬ程恥ずかしいが、主の命令だ。逆らうなんて、有り得ない。
「私、アルベドはモモンガ様が留守の間に、自室に侵入しました。そして、寝台に潜り込んで、お布団に……その、胸と……陰部を、擦り付けて、じ……自慰を、しておりました」
火が出そうな程顔を熱くさせながら、報告を終える。アルベドは、もじもじと恥じらいに身をよじるアインズに追い討ちをかけるように言葉をかけた。
「……私の寝台をこんなに濡らしたのか、悪い子だ」
濡れて染みが出来た布団を、まざまざと見せつける。エロゲ好きのどっかのバードマンが乗り移ってるんじゃないかと思うようなノリだった。
そしてアインズは、自身が布団を濡らしてしまっていたことに気づいていなかったのか、驚いた表情を浮かべた。すぐさま謝罪の言葉を述べようとするが、アルベドは片手でそれを制す。
「つまり、準備は出来ているということだな?」
「準備……ですか?それは、どういう意味で……きゃっ!?」
アルベドはアインズをベッドに放り投げ、押し倒す。仰向けに倒れたアインズの上に覆い被さるアルベド。困惑の表情を浮かべるアインズを見下ろしながら、アルベドは楽しそうに笑った。
「くっくっくっ、このまま既成事実を作ってしまえば、正妻の座は私のもの!そしてなにより!モモンガ様の処女は私のものよ!!くふ、くひひ、ふひはははははぁっ!」
ハッチャケ過ぎである。色々と酷かったが、1つだけ指摘するなら、美女に伸し掛かり哄笑する骸骨というシチュエーションは、完全にホラー映像だった。
「……モモンガさま?」
不思議そうに首を傾げるアインズ。もうどっからどう見ても儚げな美女でしかない。
ヒドインは完全に浄化された。そう、彼女こそが、真のメインヒロイン、モモベドの誕生である。
「ああ、すまなかったなアルベド。今のことは忘れてくれ」
そう言うと、アルベドは身に纏っていたローブをはだけさせる。そして、アインズの顎をクイッてやってしっかりと顔を合わせた。
「アルベドよ、共に一夜を過ごそうではないか」
「……はい、私、嬉しいです、モモンガさま」
そんなわけで、2人は同時に初体験を済ますのであった。めでたしめでたし。
途中で正気に戻って、自分は何を書いているんだ……?ってなった。
辛かった。