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戦線と兵站


 第二次世界大戦における日本の敗因を分析した評論は多数あるが、共通しているのは、日本軍の、「戦線と兵站の拡大に相応した補給システムを戦略的に構成する」視点が欠落していたというものである。

 日本軍は、戦争初期の段階で、華々しい戦果と、占領地域の拡大に大喜びし、「行けゆけドンドン」の勝利への優越的興奮に包まれていたが、占領地域=兵站が拡大することの恐ろしい意味を理解できる人材が指導部に存在しなかった。
 日本軍、参謀の多くが、兵站に対応する物資の輸送を、ひどく軽視していたのである。

  輜重輸卒が兵隊ならば,蝶々,トンボも鳥のうち
 http://member.tokoha-u.ac.jp/~kdeguchi/hobby/japan/logistic.html
 以下引用

 これは,輸送を任務とする輜重部隊のことをばかにした歌である。
 つまり,日本軍においては最前線で実際に戦っている部隊を重んじ,後方の支援に当たる部隊を軽視したのである。
 陸軍士官学校においても,陸軍大学校においても,兵站を専門とした軍人の養成は行われていなかった。海軍においても戦術面の研究は熱心だったが,戦略面の研究はほとんど行われていない。

 日本軍の悪い所は,初めに作戦ありきで,それに合わせて輸送計画を作ることであった. 作戦が決まってから輸送を考えることがいかに無謀であるかは,近代戦にもかかわらず多くの餓死者を出したことが物語っている。
(日本兵の戦死者230万人中、実に6割、140万人が餓死であると記録されている)

 また,従軍慰安婦の問題も日本軍の輸送能力の欠如が産んだ悲劇であるともいえるのではないか. これは,最前線の兵士達を後方に下げ代わりの兵士を送ることができないという日本軍の実態が,戦場に慰安婦を連れていくという方法を選択させたのである。

 アメリカの場合には,作戦を行うにあたって輸送が可能かどうかを兵士一人に必要なカロリーから弾薬・医薬品など極めて多岐に渡ることを計算し,それによっては作戦を中止することもあったという。
 また,最前線である程度戦った部隊は後方に下げられ補給と休養が与えられた。アメリカでは数学を用いて戦争に最適な予算の配分まで決めていたというから,戦争というものを極めて合理的に考えていたことがわかる. このようにしてオペレーションズ・リサーチという手法が確立された。

これに対する日本のお粗末さは話にもならない. このように兵站を軽視した日本軍に西太平洋全域におよぶ大戦争は不可能だったのである。
 実際,日本の当初の計画では西太平洋全域におよぶ戦争計画はなかった. ところが,開戦したらあまりにも勝利しすぎたために戦線を拡大してしまった。「戦線を拡大することが防衛を確実にする」という錯誤をしたのである。

 引用以上

 この分析は極めて的確で優れている。日本軍は、補給作戦の戦略的重要性を理解できる参謀がいなかったという意味で、戦争の基本的能力が存在しなかった。
 一時的な戦闘に勝利することはできたが、数年にも及ぶ、戦略計画がまったく存在せず、その意味を理解できる将兵も国民もいなかった。

 戦術とは、目の前にいる敵を、どのように撃破するかという具体的な方法論だが、戦略は、「敵」を定める本質的な意味と戦いの必然性、結果をも含めて総合的に考察し、「戦闘によって何を得るのか」という視点から組み立てられる方法論である。

 つまり、何のために戦争を行い、結果をどのように生かすのかという哲学的思索を含めた思考こそが戦略なのだが、この大局的な史観が、日本軍には存在しなかった。
 まるで知能の劣る、感情だけの子供のようだったと指摘しているのだ。

 これは、今でも、ネット上で、ネトウヨの若者たち(ときに老人たち)が、羽毛のようなペラペラの愛国心を振りかざして、我々に対し、「安倍政権を批判するなら日本から出て行け」と書くのに似ていて、太平洋戦争にあっても、先立つ日清日露戦争勝利の優越感に舞い上がって、地上最強の力を持った巨大怪獣に、意気揚々と竹槍で立ち向かっていった軽薄な民衆のお粗末な高揚感と同じである。

 日本国家に、孫子なみに戦略計画の重要性を理解できる人材がいたなら、決して、絵に描いたような無謀戦争に突入することはありえなかった。
 実際に、本当に有能な人材だった高橋是清や石橋湛山、山本五十六、栗林忠道らは、戦力の具体的な比較から無謀さを説いたが、優越的興奮に舞い上がっていた国粋主義者たちの精神論=妄想を止めることができないまま多くが殺されていった。

 太平洋戦争の直接の敗因は、伸びきった兵站に対して戦略物資や食料を輸送する実力がなかったことに尽きるのだが、その典型例は、私の実父が送られたインパール作戦である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%AB%E4%BD%9C%E6%88%A6

 補給を一切無視し、精神論だけの暴発を命じたのは、牟田口廉也という人物で、典型的な陸軍統制派将校で、自分たちは「神国の神軍である」との妄想に酔いしれ、精神論だけで無謀極まりない戦線拡大を行った結果、送り込まれた総兵力11万人のうち、7万人が戦死(英軍推計)した。

 私の父も含まれていたが、父は英語を少し話せたので、初期の段階で英軍との交渉に当たり、そのまま捕虜となって生き延びることができた。
 しかし、舞鶴に帰還したとき、60Kあった体重は、ちょうど半分に減って骸骨のようだったと語っていた。
 父の大隊の帰還率は、わずか1%だったとも語った。この作戦で生まれたドラマの一つが「ビルマの竪琴」という物語であった。
  戦後、大勢の日本兵が帰還できずに、現地に溶け込み、インドシナのフランス軍に対するゲリラ戦に参戦したことも知られている。

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 なぜ、無謀に兵站を伸ばしたのか? これは「行けゆけドンドン」の興奮した心理の下に、「自分たちは世界に冠たる日本軍だ」という優越感が、慎重さを失わせ、精神主義に陥らせた最大の要因であって、すなわち「強欲」という表現がふさわしいのではないか?

 しかし、日清・日露戦争前の日本は、昭和政府のような愚かさはなかった。
 植民地経営を行うにしても、明治・大正政府における台湾や朝鮮の経営は、欧州のように現地から利権を吸い上げるだけの強欲なものではなく、現地において、「日本国の理念」を実現することで、現地住民の利益に貢献するという思想が間違いなくあった。
 欧州帝国主義諸国のように、植民地の人々を奴隷視するような傲慢な政策はとらなかった。

 台湾においては、八田與一・西郷菊次郎らの水利事業の功績が語り継がれている。また総督として赴任した明石元二郎は、すべての利権を捨てて台湾のために尽くし、自らも台湾の土となった。
 朝鮮においても民族滅亡の悪習である、李朝奴隷制度や「試し腹」=父が娘を妊娠させて、子を産めることを証明するという近親相姦の悪弊が、日本総督府の命令により廃止されているし、底辺の民衆に教育の機会を初めて与えたのも日本である。法治システムを社会の根幹に置いたのも日本であった。

 立派な対外政策を採っていた日本が、第二次大戦では、恐ろしく傲慢で愚かな自滅作戦を繰り返したのは「偉大な日本」という、日本人の優越性に溺れた妄想のなかで、精神さえあれば物質などなくとも克服できるという幻覚に支配されたからであろう。
 また、台湾や朝鮮の住民を「下等日本人」として差別したことも、逆に、日本人の人間性を貶める結果になっただろう。

 人が住む土地があれば、それを維持してゆくための原理があり、その土地を支配しようとするなら、相応の負担が生じるのである。
 天から与えられた土地では飽き足らず、先住民の土地を強欲に占領しようとするなら、それは、絶え間なく先住民や他の侵略国との軋轢に晒され、占領を守るために、大きな物質的精神的負担を強いられることになる。

 分かりやすいのは企業経営である。戦後、営業利益や「大きいことは、いいことだ」という強欲な拡張主義に陥った経営者は掃いて捨てるほどいた。
 しかし、ひとたび拡張主義、「でかくなって威を張りたい」願望に支配された経営者は、伸びきった兵站を管理できず、人間よりもキツネや狸の多い田舎に巨大な店舗を構えたりして、わかりきった結末の赤字転落から、立派な店舗を二束三文でたたき売る羽目になり、会社そのものも潰してしまった。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%BC

 驚くべきは、ダイエーが拡張主義による自滅の見本を示して以降も、まったく同じ轍を踏んで崩壊を招く企業が後を切らないことである。
 最近ではユニーがそうだし、岡田一族の経営するジャスコ=イオンも同じ運命である。
 また、イケイケドンドンのフランチャイズ外食産業も、競争意識に駆られてか「兵站を無視した拡張主義」のなかで、続々と崩壊企業が現れている。
 天下の東芝が倒産寸前の苦境に立たされている理由も、兵站を無視した拡張主義と一括しても間違いはなさそうだ。

 これらの本質的な理由は、まずは経営者の競争意識による戦線拡大であり、「一番になりたい」強欲の慣れの果てといってもいい。
 ある程度の成長を行ったなら、今度は、全身に新鮮な血液が行き渡って病気にならないよう、補給作戦を強化し、一定の守りに入るのでなければ、拡大暴走の慣れの果てはレミングの群れが断崖から海に飛び込むような結末になるしかない。

 日本人は、とりわけ戦線と兵站拡大の反作用としての、補給体制脆弱化についての危機意識が弱いようだ。しかし、巨大な組織が崩壊する最大の理由が、こうした兵站延伸による実体の空洞化なのである。
 限られた土地、限られた人材、限られた需要のなかで、「持続可能な未来」を確保するには、自分の基礎体力に合わせた兵站を定め、それ以上の拡張が命取りになることを知るべきである。

 周囲を見渡してても、近所に威を張るため、喜んで建てた不必要に大きな家も、やがてゴミ屋敷に変わり、それを維持するための人間も資力もないまま朽ち果ててゆく姿は珍しくもない。
 体制を維持するためには、まずは人材が一番大切であり、実力に見合った規模を守ってゆく姿勢がなければ必ず悲惨な結果を招く。無制限の兵站延伸が何をもたらすか、我々は旧日本軍の無謀から学ばなくてはいけない。

 この問題を提起しようとした理由は、旧ソ連=ロシアが、帝政ロシア以来の、国家拡張主義に囚われて、無謀に兵站を伸ばし、強欲に領土を拡大してゆく姿勢が何をもたらすのか明らかにする必要があると思ったからだ。

 ロシア人は、国家拡張が死ぬほど好きだが、それがロシア人の生活に幸福をもたらしているかといえば、強欲だけを満足させているかもしれないが、地の果てまで続く領土防衛の負担に、生活は圧迫され、愚かな領土拡張によって国民全体が苦しみを背負っているのである。

 北方領土問題の本質も、この視点から見なければならないと私は思う。
 ロシアは北方領土を返さないという。しかし、土地というのは、歴史的な必然、地政学的な必然によって生かされるものであり、ロシアの強欲によって、千島列島のもたらすものは、ロシア人の生活を圧迫するだけのことである。
 一定の漁業や鉱業による収益が上がるかもしれないが、住民にとっては強欲によって確保した土地が幸福をもたらすだろうか?

 シベリア東部は、本来、モンゴロイド先住民たちが自然と融和して生きる土地であり、無理な領土防衛の使命により移住させられたコーカソイド・ロシア人たちにとっては、そこに生きることは困難の極みであり、本来の解放された人生を全うすることには無理があると私は思う。

 日本が、ロシアに対して、あらゆる協力を拒否すれば、負担に根をあげた千島は、本来の主人公の手に還るのだと、私は信じている
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