では、新たな試算はどうか。

 市場跡地を卸売市場会計で保有したまま、新たな計画で民間に貸し出した場合、跡地を段階的に再開発して2029年度以降毎年154億円の賃料収入を得られるとの条件を置いている。それでも、全体の開発が終わるまで時間がかかるといった理由から暦年の賃料収入の総額が減り、25年度と早期に資金ショートが発生するとした。

 だが、少し待ってほしい。新たな素案では跡地に広場を整備するなど、160億円を弾いた試算の前提と比べて、外部に貸し出せる延べ床面積が大幅に縮小する。にもかかわらず、賃料収入はわずか6億円のマイナスにしかなっていない。

 また、小池知事が採用するとした有償所管替えにより、跡地を一般会計に移せば、入れ替わりで5600億円もの税金を卸売市場会計に流し込むことになるのだから、卸売市場会計は約50年間、資金ショートを回避できるとしている。だが、一般会計への年間の賃料収入の見通しはそもそも明記されていない。

 都財務局は「154億円という数字を無視するわけではないが、段階的に開発されるので賃料収入の見通しを示すのは難しい。都への実入りだけではなく周辺への波及効果も勘案している」と説明するが、いずれにせよ「税金をドーンと投入することなどあってはならない」と1年半前に言い切った小池知事の発言との整合性は問われるべきだろう。

やっぱり浮上するカジノ計画

 ただし、素案で示された国際会議場などとセットになりがちなカジノが併設されれば、収益力は一気に向上する。

 小池知事は、新旧対照表にあるように「カジノという言葉は素案に出て来ないので、その方向性で行きたいと思う」と、何とも言えない言い回しでカジノを計画に盛り込まない考えをにじませたが、明確に反対を表明したわけでもない。

 カジノは、わずかな面積でも多大な収益を稼ぎ出せる。しかも築地再開発は、これから長期間、段階的に進められるものであり、現時点ではまだ素案の段階だ。小池氏が知事をとっくに退いてから、カジノが計画に盛り込まれる可能性は大いに残る。