記者が「答えになっていない。回答は2択だ」と改めて明確な回答を求めたが「はい、お答えした通りです。ありがとうございました」とこわばった笑みを浮かべて会見を打ち切ろうとした。
これらの言動からすれば、小池知事の政治姿勢が不実かどうかは、もはや詳しく述べるまでもあるまい。
さて、新たに決まった5600億円の税金をかけて取得した土地を再開発して貸し出し、賃料を得ることで、将来この金額を回収することができるのだろうか。
17年6月のプランでは、都税を支出することなく卸売市場会計の赤字を縮小して大幅な資金ショートを避けるためには、年間160億円の賃料収入を得る必要があるとの試算を都財務局が作成していた。
貸出面積が大幅減でも収入見通しは微減の謎
160億円を毎年稼ぎ続ける前提条件について都財務局はかつて、本誌の取材に「跡地の北側に高層オフィスビルを4棟、南側にタワーマンションを3棟建設するなど最大限の開発をした場合」と説明していた。
だが「築地は確かに一等地だが、交通の便が悪く、大手町や八重洲に比べればオフィスには向かない」(不動産大手のオフィスビル開発担当幹部)と言われる。
マンション市況についても、不動産経済研究所がまとめた首都圏の2018年の統計では、販売開始月に契約に至った戸数の割合を示す「初月契約率」は前年比6.0ポイント減の62.1%という低水準だったと発表。
加えて築地に隣り合う晴海では、東京五輪の選手村が大会終了後に4000戸超、マンションとして分譲される計画で、付近の相場を大きく押し下げると懸念されている。一時は大人気だった“湾岸タワマン”の冬の時代がひたひたと近づいているとも言えるのだ。
さすれば、年間160億円はあまりに現実感がないと言わざるを得ないが、こちらについて都財務局は「いくつかの極端な試算パターンのうちの一つで、卸売市場会計の負債を圧縮し、大幅な資金ショートを回避できる数字として弾いた賃料額だった」と認める。