小池知事はまた、豊洲市場の建設や運営による卸売市場会計の赤字圧縮のために都民に負担を求めるかどうかについて、17年6月には「これから税金をドーンと投入することなどあってはならない」と明言している。
にもかかわらず、今回の素案の実現のため、築地跡地を所有している卸売市場会計から、まさに都民の税金などからなる一般会計への「有償所管換え」といわれる手続きのために、約5600億円の税金を文字通り“ドーンと”投入することを決定した。
朝日社説は「不実な政治姿勢は、跡地開発の行方だけでなく、都政運営全般に影を落とすと肝に銘じるべきだ」と戒めて結んでいるが、小池知事の心にはどの程度響いたのだろうか。
本誌は2月1日の定例記者会見で、(1)仲卸業者が再開発後に築地に戻ることができる可能性が現時点でも残っているのか否か、(2)一般会計からの5600億円の投入が当初からの方針変更に当たるのか否か――の2点を質問した。
ところが小池知事は、記者が(1)を言い終えたところで「その質問だけお答えいたます」と質問を妨害。2点に対して答えるよう求めたところ同意したが、(1)については「先週もお答えいたしましたように、関係局長会議においても、築地にお戻りになりたいという方々のご意見はしっかりと聞いてまいりますということを発言し、また、その点については同じだとお答えしております。ただ、まだ移転をして2ヵ月というところで、それぞれが定着するようにご努力をいただいているところでございますので、まずは中核的な市場としての豊洲市場、これの定着を図ると。まさに現時点、We are here.でございます。それに取り組んでいくということであります」となぜか英語を交え、前週の会見と全く同じ文言を繰り返した。
側近から紙を渡されないと答えられない小池知事
そして(2)については、(1)への発言を終えてから、いつも会見に陪席している都政策企画局の河内豊・報道総括兼知事補佐担当理事から急遽受け取った紙を見て「2番目の有償所管換えにつきましては、これは、あの、都民にとりましての有効な資産をどのようにして活用していくかということで、都の会計間における適正な価格で移し換えるということでございます。これによって、築地市場の跡地を将来の東京全体としての価値の最大化を目指す、再開発につなげていくということでございまして、これについては有効な財産をともに生かしていくという方向性で、この今回の結論に至ったということでございます」と朗々と読み上げた。なんのことはない。手元に紙がないから、(1)しか答えたくなかったのである。