今年の素案公表後は、実際には方針を大転換しているにもかかわらず「変えた」とも「変えていない」とも取れる、ごまかしを意図したかのような玉虫色の発言のオンパレードだ。

 1年半前に「食のテーマパーク」などと記された資料を報道陣に配布した上で、「これから、日本一の世界に誇る築地ブランドからの食に魂を込めまして、この築地を再開発するという基本方針を判断するに至ったところでございます」と熱弁をふるった。

 さらに、築地を東京オリンピック・パラリンピックの輸送拠点(デポ)として利用し、その後の再開発を経た地での営業継続を望む仲卸業者に対しては「やはり築地だからこそ経営が可能だと考える方々もおられるわけでございまして、そういった方々に対しては、築地へまた復帰される際のお手伝いはさせていただくということでございます」と明言。当時の配布資料にも「新たな築地の姿」の項目に「仲卸の目利きを生かしたセリ・市場内取引を確保・発展」と記載されていた。

 だが新たな素案にはもはや、市場機能や「食のテーマパーク」は跡形もない。冒頭のように、「捉え方にもよる」と述べるなど言い訳がましい限りだ。

「不実な政治姿勢」と批判した朝日社説

 その代わりに素案に出てきたのは、「国際会議場等の機能を中核としながら、文化・芸術、テクノロジー・デザイン、スポーツ・ウェルネス(健康増進)などの機能が融合して相乗効果を発揮し、東京の成長に大きく寄与する交流拠点として発展していく」などという文言。具体的には、国際会議場や展示施設、高級ホテルや広場、舟着き場などを整備するそうだ。

 これに噛みついたのが、築地市場跡地の真正面に本社を構える朝日新聞。「築地市場跡地 小池都知事に問いたい」と題した1月28日付社説で「築地を支持する人たちに、新旧の市場が両立できるかのような期待を抱かせたのは間違いない」とした上で「方針を変えたのであれば『変えた』とはっきり認め、理由をていねいに説明し、理解を得るのが筋だ」と指摘した。東京新聞も2月4日付社説で同様の批判を展開している。