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子供の半数が「会ってもいい」 SNSに潜む悪の手口

日経DUAL

2018/8/30

■自分も他者も大事にすることを小学生のころから心に刻ませる

そしてもう一つ、小学校1年生くらいになったら、「自分も他者も大事にする」ということをしっかり教えてほしいと清永さんは言います。「つまり、この問題はインターネットやSNSに限った問題ではないということです。ツールを使うスキルを学ぶことも大切ですが、それ以前に日常生活の中で自分の気持ちを表現したり、相手の気持ちを慮る「コミュニケーション力」、そしてその言動がどのような結果につながるのかを想像する力を鍛えることがより重要です。相手が直接見えないインターネットの社会は、どのような情報を得たり発信したりするのか、どのように活用するのか「選択肢を並べ」、その中から「選び」、さらに炎上なども含めてその結果に「責任を負う」、まさに「大人力」が試される場なのです」。

●自分を大事にするために教えたいこと

・誰かれなく、自分のアドレスや個人IDを教えない。加えて、生年月日、住所、家族、両親の名前などの個人情報は絶対に教えたり公開しないこと。
・ネット上の情報は、その気になれば、誰でも盗むことができ、それがどう使われるか分からないことを知っておくこと。
・情報を出してはいけないと言ってもイメージが湧かない場合、親は例えば「公衆トイレの壁に、携帯電話の番号を書くようなものだよ」「家の前に、ここにこんな子が住んでます、と写真を貼るようなものだよ」と具体的に教える。
・裸を誰かに見せること、触らせることは、自分を大切にすることとは真逆であり、絶対にしないこと。
・男子同士でよくある下着や性器を見せる行為は、社会規範に反すること。それを見て一緒にふざけることもよくないと認識させる。
・自分が嫌だと思ったことは、はっきり「嫌だ」と言う。親は「嫌だ」と言っていいと教える。
・好きな人に嫌われるから、相手の機嫌が悪くなるのが怖いからNOと言えないという場合、それは愛情とは違うことを伝える。
・きっぱり断るのが難しいときは誰かに相談すること。
・もしも万が一トラブルが起きた後でも遅くないので、必ず誰かに相談すること。
●自分も他者も大事にするために教えたいこと

・友達から「嫌と言えない」ことを相談された場合は、一緒に伝えてあげたり、大人に一緒に相談するなど「嫌だ」と言えるように背中を押してあげることを教える。
・子どもは大人に相談するよりも、子ども同士打ち明けることが多い。そのときに状況に応じて以下のように話し、友達として助ける方法があることを教える。
「話してくれてありがとう。あなたは悪くないよ。その誘いは一緒に断ろう」
「一緒に相談できるところに電話しよう」
「裸を見せないとわかれるというのは、本当に好きな人がすることではないよ」
「一緒にあなたの両親に話そう」
・友達が自分一人で抱え込むのではなく、そっと支えてあげることの大切さを教える。
●加害者にならないために教えたいこと(小学校高学年~)

・性別にかかわらず他者に裸の写真を送らせない。
・写真を送らないと別れる、嫌いになる、何かをバラすなどの脅しはいけないことだと教える。
・どんなに相手のことを好きでも、つきまとう、しつこく近寄る・触るなどはしない。
・他人の個人情報(名前や生年月日、所在地、IDなど)を無断で公開しない。
・人との個人的なやり取りを無断で他の人に漏らさない(LINEなどでのやり取りをスクリーンショットにして公開したりしない)。
・実際に顔を合わせて話をしたほうが、コミュニケーションがスムーズにいくことも多いことを教える。
・一度流した情報(例えば中傷や他人の個人情報など)は、消すことは困難であることを教える。
・もし、誰かを傷つけたとしたら、一人で抱え込まず誰かに必ず相談すること。

「共働きの皆さんは仕事上でも上記のようなことに直面しているでしょう。大人になっても炎上させたり、デマに振り回されたり、トラブルに巻き込まれることは多々あり、一生かけて学ぶくらいの心構えが必要です。この学びは、子どもがこれから生きていくうえで必要な判断力やコミュニケーション力の醸成にもつながります」

「被害者にも加害者にもならないために必要なことは、子どもたちにとっては性別や立場の垣根を越えて学ぶべき大切なことではありますが、すぐに習得できるわけではありません。親たちだけが責任を担うのではなく、学校、地域などが助け合って粘り強く教えていくこと。さらに大切なことは、失敗から学ぶこと。一度や二度はトラブルが起きることを覚悟し、肝心なのは、その後どう再発させないかを一緒に考えることです」

■スマホを持たせるなら「なぜ」「何に使うか」を親子で考える

特に小学生のうちは、顔の見えないネット上の相手に対し、「怪しい」と判断することは難しいかもしれません。

「子どもは断り方にも未熟さがあることを心に留めてください。未熟である以上、SNSのやり取りも親の目の届く範囲でやらせることが必要です。そして、便利さとともに怖さとマナーについても教えていくことが大事です」

「そのためには親子で一緒に使い、一緒に勉強していくことが重要です。例えば家族旅行の写真をSNSに投稿するか否か、するならどんな写真を、誰に見せるのかを考え、『でも、お母さんはこの写真は嫌だな。だって背景で家の住所が分かってしまうかもしれないよ。ある日、知らない人が玄関にいて、『旅行は楽しかった?』と言ってきたら怖いよね』など、親子で考えていくようにしましょう」

「子どもにスマホを持たせるにあたっては、一人で習い事に行くために持ち、帰りにお母さんお父さんに連絡するときに使うというように、『なぜ』『何のために使うのか』を明確にしておくこと。『みんなが持っているから』は主体的な理由にはなりません。『うちはうち、よそはよそ』で良いのです。そして、誰とつながるのか、ということも家庭内でしっかり決めておきます。これはスマホに限らず、キッズ携帯やニンテンドー3DSなどのゲーム類も同じです。

ルールについては最低限、次のようなことを決めておくといいでしょう」

・使っていい時間(何時から何時まで)
・使っていい場所(リビングなど)
・使わないときの置き場所(リビングの籠など)
・ルールを守れなかったときはどうするか(次の日は使わないなど)
清永奈穂
ステップ総合研究所所長・NPO法人体験型安全教育支援機構代表理事。元警察庁科学警察研究所犯罪予防研究室長でステップ総合研究所特別顧問の清永賢二氏と共に、犯罪やいじめ、災害からどうやって命を守るかを研究している。子どもが犯罪に巻き込まれた現場に足を運んだり、元犯罪者に話を聞くなどして犯罪がどのように起きたか、どうしたら防げるかを科学的に検証し、全国で行う体験型安全教育に反映させている。海外の安全教育についても詳しい。家庭では一男一女の母。著書に『犯罪からの子どもの安全を科学する―「安全基礎体力」づくりをめざして』(共著・ミネルヴァ書房)など。ステップ総合研究所

(ライター 小山まゆみ、構成 福本千秋=日経DUAL編集部)

[日経DUAL 2018年8月10日付記事を再構成]

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