2007/3/21
ラグビーの「オール戦」というのをご存知だろうか。
「オール」とは「全○○大」のこと。すなわちOBも含めた、その大学最強チームのことだ。毎年3月に「全早慶明対抗戦」および「全四大学対抗戦」が行われる。言うなれば、シーズンの最後を飾るお祭りみたいなものだ。だがかつては「全早大」や「全早明連合」が外国チームと戦ったこともある。何せ日本のラグビーを支えてきた伝統校のオールスターチーム、そのポテンシャルは、半端ではない。
今日行われたのは「全四大学対抗戦」。「四大学」とは法政、専修、中央、日大。この4校は、「リーグ戦グループ」のオリジナルメンバーだ。関東の大学ラグビーは「対抗戦グループ」と「リーグ戦グループ」に別れており、初心者には一見わかりにくい構図になっているが、これには理由がある。
もともと関東の学生ラグビー界は「対抗戦思想」に基づいて伝統校同士の定期戦を中心に運営されていた。どこの大学と定期戦をやるかというのはもちろん各大学の自由だから、いわゆる新興校は、伝統校と定期戦を組んでもらえないという事態が生じてきた。いい例が法政である。法政はかつて早慶と定期戦を組んでいたが、ラグビー部の増加に伴い、52年から対戦を拒否されてきた。しかし60年には対抗戦グループで初優勝し、64年の第1回東西大会(大学選手権の前身)で初優勝してしまった。それでも早慶明と対戦することができず、67年にはついに対抗戦と袂を分かち、専修、中央、日大らとともにリーグ戦グループを結成するにいたったのである。従ってこの4校はリーグ戦グループ結成の中心であり、早慶明に匹敵する名門なのだ。リーグ戦グループの中心は関東でも大東でもなく、あくまでこの4校なのである。
しかし、とは言うものの、長い年月の間には格差も生じるというものだ。現時点で法政は1部の優勝候補、専修は2部の4位である。当然オール戦にも差が出そうなものだが、どっこいそこは名門校。オール戦である限り、メンバーに差はない。この日の法政-専修戦の両校の先発を見れば、それはよくわかるだろう。
法政
1山内
2坂田
3池谷
4内藤
5熊谷
6佐藤
7浅野
8竹中
9麻田
10文字
11西條
12田沼
13赤沼
14山本
15金沢
専修
1佐々木
2米倉
3川村
4馬屋原
5小嶋
6大東
7舛尾
8須田
9村田
10伊藤
11西
12三輪
13八役
14吉田尚
15吉田克
メンバー的には、専修の方がはるかに魅力的だ。特に村田-伊藤のHBコンビなどは、今や代表でもお目にかかれない(両選手の代表入りを信じているが)。だが、そこはあくまで親善試合。公式戦とは激しさが違う。相手をぶっ壊すようなタックルはご法度だろうし、球際の執念も公式戦とは異なるだろう。
そんなわけで試合は、きわめて大味なものとなった。何が何でも相手のトライを阻止するという執念が見られず、決定的な場面では易々とトライが決まる。急造チームならではの連携ミスも続出。だがそれならそれで、受け手の胸元にドンピシャのパスを放るなど、個人技でカバーできなかったものか。これだけのメンバーがいてミスが多いようでは、日本のラグビー界そのものの先行きが不安になる。終わってみれば52-34で法政の勝利。楽しかったが、それだけでいいのかという気にもさせられる。
自他共に名門と認めるリーグ戦の4大学。それが真の名門に進化するためには、現役部員の健闘だけでは不十分だ。OBも含めて、日本代表、および日本のラグビー界にどれほどの貢献ができるかが問われている。「名門の逆襲」――それは口で言うほど、簡単ではない。 1
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