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(萬平)カルシウム リン 鉄分…。
(福子)ビタミンA B B ナイアシン。
国立栄養研究所のお墨付きをもらったまんぷくラーメン。
(神部)売り上げどのぐらい増えたんですか?
(真一)8割やな。
おお~。(鈴)8割。
でも…。(世良)全然あかん。
デパートの片隅で たくさん売れましたでは どうにもならんねん。
なかなか期待どおりに物事は進みません。
「ペンギン石鹸」。
これは何?(克子)宣伝や。
宣伝…。(タカ)毎日やってるよ。
毎日…。(忠彦)何回も。
何回も…。
「P印のペンギン石鹸 30円です」。
これや!
テレビや~!
♪「丸まってる背中に もらい泣き」
♪「恥じだって一緒に」
♪「あなたとならトゥラッタッタ♪」
♪「飛行機雲ぼんやり眺む」
♪「心ここに在らず」
♪「年間トータル もししたら」
♪「付き合うあたしすごい?」
♪「とぼけてる眉毛に もらい笑い」
♪「照れだってなんだって」
♪「あなたとならトゥラッタッタ♪」
♪「頑固で面倒で 腹も立つけど」
♪「あなたの情熱は」
♪「あたしの誇りで自慢で覚悟なの」
♪「もらい泣き もらい笑い もらい怒り」
♪「もらいっ恥じ どんと来い!」
♪「晴天も曇天も霹靂も」
♪「さあ あなたとトゥラッタッタ♪」
テレビで宣伝する?
そうです。 テレビで まんぷくラーメンの宣伝を映してもらうんです。
(吉乃)ええっ。(神部)そんなこと できるんですか。
金がかかるんやないのかい。えっ あれは お金がかかるの?
当たり前でしょう。広告なんだから。
その手があったか…。福ちゃんの考えは悪うない。
宣伝が大事なんはダネイホンで証明済みや。
それにな 聞いた話ではテレビにコマーシャルを出してくれる会社が少ないいうてテレビ局は困ってるそうや。
コマーシャル?(世良)ああ。
テレビに映す宣伝のことをコマーシャルいうねん。
まだ そういうことも知られてへんからな。
そしたら 今なら まだ…。広告料は安う済むかもしれん。
そしたら やりましょうよ。
テレビで毎日 何回も まんぷくラーメンのそのコマーシャルを映すんです。
百貨店の売り場で声を張り上げるんとは大違いや。
テレビで まんぷくラーメンが…。
それでも そこそこのお金がかかるんでしょ。
どうするのよ 世良さん。
せやな… どうする? 真一さん。
金は 僕が なんとか工面します。
よし じゃあ やろう コマーシャル!はいっ。
そうなるとどういうコマーシャルを作るかやな。
どうやって作るんですかコマーシャルって。
広告代理店いうのがあってそこに企画やら内容やらを丸投げするのが普通なんやけど。せやけど…。
費用のこと考えたらできるだけ自分たちで考えた方がええ。
せやねん。自分たちで?
撮影は無理だとしても内容ぐらいは考えないと。
(鈴)自分たちでって…。できるよ お母さん。
僕が考えます。茂さんが?
うん。 大学では映画愛好会に入ってました。
映画 作っとったんか!?ええ 見るだけです。
何や それ。そやけど やりたいという意欲は大事だ。
そうですね。そしたら 神部さん お願いします。
はい。大事なんはまんぷくラーメンのええとこを伝えることや。はい。
美味しいこと。便利なこと。
20円は高くないこと。栄養たっぷりなこと。
はい。頼むぞ 神部君。
はいっ。楽しみやわ~。
う~ん…。
(克子)アトリエを貸してほしい?
ああ。 僕のアトリエの方がコマーシャルの発想が湧きそうやって。
(克子)ごはん食べへんつもりかしら茂さん。
考えが浮かぶまでは いらないって。こんな怖い顔して。
入れ込んでるなあ。
ちょっと入れ込み過ぎやない。まんぷく食品の社員でもないのに。
昼間も働きたいって会社に 休暇届 出したんよ。
えっ。そのうちクビになるかも。
何で そんなことを簡単に言うんや お前は。
まんぷくラーメンが売れるようになったらまんぷく食品に入ればええやない。ねえ 大ちゃん。楽観的すぎよ タカ。
もう 一体 誰に似たんやろ。
それは お前やろ。私?
売れない貧乏画家と結婚したやない。おばあちゃんの反対を押し切って。
アハハ それは… 確かにそうね。
ハッ…。
ああ~!
(岡)あ~ わしも手伝いたいわ。
(森本)何で わしらに声かけてくれんのや 社長は。
(アキラ)気持ちは よう分かる。せやけどなせめて 飲み物だけでも注文してくれへんかのう。
(しのぶ)まんぷくラーメンは原価で出してるからうちの儲けにはならへんのよ。
せやけど試食販売も10日過ぎたから早く売り上げ 上げないと問屋さんに見放される。
3週間の期間ということはあと11日やな。
それまでに テレビの広告なんか出来上がるんか。
コーヒーでもええねん。ソーダ水でも。
出来へんかったら大変や。まんぷく食品は潰れてしまうかも。
えっ!わしらの出番がないままに?
ミックスジュースでもええんや。 頼むわ。
クリームソーダでも。
ラーメンにジュースは合いません。お水 下さい。
吉乃ちゃん…。わしも 水 もう一杯。わしもや。
誰が まんぷくラーメン原価で出す言うたんや。
あんたや!せや。
出来ました。
出来た!?はい 3つ。
3つも。コマーシャルのアイデアが?
ええ。まあ。すごい。
はよう見せてくれ。はい。
1つ目は これです。
これは ほかのコマーシャルでもよう見る 漫画いうんですか。
アニメーションや。アニメーションで作るコマーシャルです。
え~っと鶏君と鶏さんが登場してきまして羽をむしられた鶏君はお湯で煮られてチキンスープになりそうして出来たまんぷくラーメンを鶏さんが おいしそうに食べる。
「僕がスープになった まんぷくラーメン召し上がれ」。
「ほうら お湯をかければ出来上がり。まあ簡単 たった3分で出来上がり」。
「なんて美味しい まんぷくラーメン。しかも 栄養たっぷりコケコッコー」。
どうでしょう。
何や恐ろしい。これは あかん。
夢に出てきそうやわ。そこを狙うてみたんです。
狙い過ぎだよ 神部君。ほかのを見せて。
(神部)次は これです。
これは…。
萬平印のまんぷくラーメン。
(世良)ダネイホンと一緒やないかい。
そうです。また萬平さんに登場してもらうんです。
嫌だ!(神部)もう10年近く前ではありますがあの看板を覚えてる人はぎょうさんいるはずです。
嫌だ!あのダネイホンの萬平さんがまんぷくラーメンを作ったんやということを宣伝すればみんな「へえ~!」って驚き注目が集まる。
確かに。確かにじゃないでしょう。
そやけど あのあと萬平君は進駐軍に捕まって悪い意味で注目されたからなあ。
萬平印は もう使わんといた方がええんとちゃうか。
そうかしら。もう絶対に 嫌だ!
まんぷくラーメンは新しいラーメンなんやから今更 萬平印は使わん方がええと思うけど…。
私も そう思う。萬平さんは どうやの。
いや だから嫌だって言ってるじゃないですか!
分かりました。 そしたら…これしかありません。
当たり前すぎると思われるかもしれませんが実は 僕はこれが 一番ええと思うてます。
(真一)これは 主婦か。(神部)はい。
(世良)主婦が まんぷくラーメンを作って子どもたちが喜んで食べる。
(神部)そうです。
「丼に麺を入れて お湯をかけるだけ」。
「たった3分で美味しいラーメンの出来上がり」。
「栄養満点のお墨付き」。
(真一)「大人も子供もみんな大好き まんぷくラーメン」。
「一家に5袋 まんぷくラーメン」。
「おいちい!」。どうでしょう。
う~ん 確かに当たり前すぎる気もするが…。
一家に5袋は押しつけ過ぎやない?
このセリフは いつでも食べられるよう常備できるという意味です。
私は これが 一番ええと思う。
私も ええと思う。奇をてらってない感じが好感持てるしな。
男の僕から見ても これがええ。
じゃあ もう決まりだ。 うん これだ。えっ 決まりやの?
ありがとうございます! よかったあ。
せやけど これは誰がやるの?有名な女優さん?
有名な女優は 金がかかる。有名やなくても かかるやろうな。
そしたら誰?主役はラーメンなんやから素人でもええんや。
私が やってあげても ええのよ。
実は 僕は 奥様をイメージしてこれを考えました。
えっ 私!?
冗談は やめて。私がテレビに出るやなんて。
私が やりましょか。福ちゃんで ええやんけ。
そうだよ。源ちゃんも さっちゃんも一緒に。
前にも こんなことが あったわよね。
まんぷくラーメンのためだ。ここは嫌だなんて言ってられないぞ。
そんなこと言われたかて。
そしたら 私にやらせてよ。
頼む福子。ここは 一肌脱いでくれ。
(神部)お願いします 奥様。私にお願いして。
(世良)ここで うんと言わんと浪速の女が廃るで 福ちゃん。
(真一)そうだよ。みんな 私の声が聞こえないの。
もう分かりました~!やらせて頂きます!
あ~ よかったあ。(真一)ありがとう 福ちゃん。
ほな 早速コマーシャル制作に取りかかるで。
楽しみね おばあちゃん。
そうね…。
福ちゃんの家に撮影隊がやって来たのはその2日後でした。
それでは 奥様 「よ~い スタート」でお湯をついで下さい。
は… はい。
あかん。 えっらい緊張しとるど。福ちゃん 笑顔やで。
僕がナレーションを読みますからそれに合わせて つぎ終えて下さい。それでは いきますよ。はい。
笑顔!
(鈴)そのまま。
回して下さい。
よ~い スタート!「丼に麺を入れて お湯をかけるだけ」。
はい オッケー!
(鈴)えっ 今のでええの?
よかったよ 福子おばちゃん。よかった。
(世良)おい 今のでオッケーか。ええ笑顔でしたね。
あかんやろ あんなもん!えっ。
見てる人が不安になるわ お前。そうですか。
もっぺん撮り直せ。(神部)また最初から…。
(世良)ヤカンが 丼に お前思いっきり当たってたやないか。
(神部)ほんまですか。(世良)カンカンいうてたわ お前。
その後 撮影は どうにか進み…。
最後のシーンです。
「よ~い スタート」で食べて源ちゃんと さっちゃんは「美味しい!」って言うんや。
大きな声でやぞ。(2人)はい。
そしたら 奥様はカメラを見て…。
一家に5袋 まんぷくラーメン。
そうです。 でも今のは あきませんよ。笑顔 笑顔。
分かってます。
セリフのあるシーンはここだけや。
せやけど ガチガチやわ 福子。
(世良)福ちゃん 肩の力を抜け。はい。
まだ力入ってる。
福子。
源と幸を見ろ。
(幸)ああ。(源)ええ匂い。
もう食べたら駄目やの?フフフ… 2人とも全然緊張せえへんの?
全然。お母さんと一緒やもん。
せやね。 3人一緒やもんね。
ええ顔になってきた。はい。
いきますよ。 回して下さい。よ~い スタート!
(2人)美味しい!
一家に5袋 まんぷくラーメン。