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不文律を守らぬなら憲法に明文化

権力を統制する「立憲的改憲」を

山尾志桜里 立憲民主党・憲法調査会事務局長

「専守防衛」にラインを引く

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――9条をどう改めるべきと考えているのですか。

拡大(撮影:吉永考宏)
山尾 集団的自衛権の一部行使を認める2014年の閣議決定以前にとられていた旧3要件(自衛権発動の3要件)を明文化するとともに、国会の事前承認を必要とすることを含む手続き上の統制を書き込むべきじゃないかと思います。

 立憲的改憲は国民の側が提起する権力統制の改憲なので、一通りではありません。たとえば阪田雅裕・元内閣法制局長官がおっしゃっているように、現在の新3要件(武力行使の新3要件)の趣旨を明文化し、いまの安保法制のもとでの活動を限度とする。これも立憲的な改憲案でしょう。伊勢﨑賢治さん(東京外国語大教授)らは、行使できる自衛権のラインを個別的自衛権とか集団的自衛権という概念で引くのではなく、「戦力を日本の外に出さない」といったかたちで地理的に線引きし、統制することを提起していますが、これも立憲的改憲の一部だと思います。

 でも、これまでとったことのない新しいラインを引き、それに国民の合意を得るのは極めて難しい。また、どんなラインを引いてもグレーゾーンは残ります。しかし、旧3要件であれば安倍政権の閣議決定前まで積み上げてきた一定の解釈がある。そう考えると、旧3要件を明文化することが現時点における現実的な選択肢ではないかとは思います。

 もうひとつ、現実的に提起しうるのは新3要件の明文化だと思いますが、私はこの立場はとりません。集団的自衛権の一部行使は、残念ながら日本では米軍との一体化とニアリーイコールになってしまう。戦争に巻き込まれるリスクが高まり、自主防衛を強化する妨げになる。従って私はこれをとりませんが、現在の議論状況をふまえて、いま国民に問われるべき9条改憲の選択肢は「旧3要件を明文化しますか」「新3要件を明文化しますか」「2項を削除して自衛権の統制を法律に任せますか」という三つくらいかなと思っています。

――9条に旧3要件を書き加えれば、安保法制は白紙に戻さなきゃいけないということですね。

山尾 当然、違憲ということが明らかになる。国会には、それを解消する立法義務が生じます。

――旧3要件のもとで許される実力行使は、個別的自衛権の発動として認められる行為全般ではなく、より狭いものですね。

山尾 おっしゃる通り。アメリカも個別的自衛権の名を借りて多くの戦争に参戦しているわけで、国際法上の個別的自衛権はかなり広い概念です。旧3要件によって、日本ならではの絞り込みがかかっていることが大事なポイントです。

――それは「専守防衛」と理解してよいのでしょうか。

山尾 一言でわかりやすくいうなら、旧3要件のもとでの専守防衛。これを貫徹することになると思います。

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筆者

山尾志桜里

山尾志桜里(やまお・しおり) 立憲民主党・憲法調査会事務局長

1974年生まれ。東京大学法学部を卒業後、司法試験に合格。2004年に検察官に任官し、07年に退官。09年の衆院選愛知7区に民主党から立候補して初当選し、現在3期目。民進党政調会長などを経て現職。著書に『立憲的改憲―憲法をリベラルに考える7つの対論』など。