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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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今更

「含み針を放った方も呆気に取られてましたよね」

「何度も尚文に向けて遠くから射撃してくる奴が居たが……」

「僕の世界にある古い……異能力が認知される前に出た外国の映画で、超人が主人公の物があるんですけど、そんな感じで銃弾を平然と受け止めていましたね」


 お義父さんに弾が命中すると、その弾がそのままポトリと地面に落ちるのでしたな。


「むしろ俺達の方が尚文よりも大変だったな」

「ええ、まだ強化も不十分ですから僅かに痛いんですよね」

「エアガンで撃たれた程度にはな」


 錬と樹は刺さりはしないのですが、若干痛いとの話ですぞ。

 俺ですかな? 能力補正のお陰でお義父さんと同じく無傷ですぞ。


「サクラちゃん達には羽毛で命中しないし、大変なのはエクレールさんだけだったね」

「不覚だ。勇者殿達を守る役目を持つ私が守られるとは……」

「で、奴等の台詞が『死ね! 盾の魔王と偽勇者一行め! フォーブレイに行かせるものか!』だもんねー」

「未だに狙ってくるとか、元康さんが教会を焼き払って、世界的に権威が地に堕ちたはずなのに元気に動いてる所は凄いですよ」

「宗教とは根強いんだな」


 錬も呆れ気味に呟きますぞ。


「最初の世界じゃどうやって三勇教を潰したんだ?」

「お義父さんがメルロマルク内で自分勝手に活動する俺達の尻拭いをしていたお陰で、国民が盾の勇者に関して良いイメージを持ったのですぞ」

「後は改宗を何処かの勢力が……とかですか?」


 俺が頷くと錬と樹は首を傾げておりますな。


「ずいぶんと単純なんですね」

「だが、信仰していたはずの神が自分勝手に行動し、悪魔と思っていた奴に施しを受けたら考えてしまうかもしれないぞ」

「ふむ……その作戦で行くと勇者殿達は好き勝手に暴走してしまうのだったか?」

「ですぞ。前回のループでは錬と樹が四霊暴走の引き金を引いてしまう結果になったのですぞ」

「かといって、陰謀に踊らされたまま、尚文を信じているとコンタクトを取ってメルロマルクに滞在する……と言うのは嫌だな」

「ええ、あの死んだ王と王女のご機嫌取りなんて死んでも御免ですよ」


 結局、このような結果でメルロマルクを出る事は鉄則になってしまうのですな。

 お義父さんがメルロマルクに居られなくなると言っていましたが、こういう結果が分かっていたからなのですぞ。


「上手く立ち回る前に気付かれる危険性が高すぎる。離反するのが正しいだろう」

「そうすると今回みたいに、三勇教は俺達に襲いかかってくる……って事になるんだね」

「どこの世界も宗教を駆逐するするのは難しそうですね」

「しかも最初の世界の尚文だって、三勇教の残党に悩まされていたらしいからな」

「メルロマルクはどうなっているのでしょうか? 未だに三勇教が根付いているのでしょうか?」

「さあ……ギルドの方で確認しても大きな動きって無いみたいだし」


 不気味なほどメルロマルクの情勢に関して話がありませんからな。

 クズを仕留めた所為でシルトヴェルトが侵攻したとかの情報くらいはあるかと思いましたが、何もないのですぞ。

 おかしいですな。


「ま、どっちにしても俺達がフォーブレイに到着してメルロマルクの暴挙を説明さえすれば一巻の終わりですよ」

「三勇教=悪という樹が望んだ結末だな」

「そこまで強く言いませんが、こんな事を仕出かして、未だに都合の良い世界を夢見ている方々の為に僕は戦いたくないだけです」

「ナオフミー、今日のご飯はー?」


 サクラちゃんがご飯の催促を始めましたぞ。


「ちょっと待っててね。今夜は宿で食べる予定だし、日がもう少し沈んでからにしないと寝る時にお腹すくよ?」

「わかったー」

「……」


 そんな様子を錬と樹、エクレアは見ておりますぞ。

 ユキちゃん達はベッドに座って休んでおります。


「案外、乗り物酔いって慣れるものなんだな」

「そうですね。旅の初めは不安に思っていましたが、慣れましたね」

「アレだけの揺れに襲われていたら、くも膜下出血とかで死ぬかと思ったがな」

「私も馬やフィロリアルには乗りなれていたつもりだったが、酷いモノだった」

「今ならどんな乗り物であろうとも乗り続けられる自信がありますよ」

「尚文じゃないが乗り物酔いに強い耐性が出来たと思う」

「あの酔いを楽しめないのは不幸なのですぞ。嘆くべきですな」

「元康さんは無視しましょう。完全にマゾの領域です」


 などと談笑を続けておりますと、お義父さんがサクラちゃんを撫でながら俺の方を見ましたぞ。


「フォーブレイに到着すれば、サクラちゃん達にもクラスアップって奴も出来るようになるんだよね」

「そうだな。いい加減、資質の向上で誤魔化すのは限界が来てるだろ」

「ですね。強くはなっていますが、エクレールさんも追いつき始めていますし」

「クラスアップされると私は完全に戦力外になりそうだな」


 ん? エクレアのクラスアップですかな?

 何やらすっかりと忘れていることがある様な気がしますぞ。

 ユキちゃん達のクラスアップはフォーブレイに到着してからでも問題は無いと先送りにしているのは確かですな。


 何が記憶に引っ掛かるのでしょうかな?

 前回のループする時に何か言われていた様な気がしますぞ。

 そしてこれから先で重要になる要素……クラスアップ……。


「思い出しましたぞ!」

「うわ! いきなり何!?」


 俺が勢いよく立ち上がるとお義父さん達がビックリした様な声を出しました。


「クラスアップで思い出したのですぞ」

「だから何が?」

「エクレールの能力に問題があるのは資質向上でどうにかするって話じゃないのか?」

「違いますぞ。クラスアップの限界突破の話ですぞ」

「え? クラスアップって40の時だけじゃないの?」

「ゲームだった時は100で一度打ち止めになって、クエスト達成後に転職と言う形で100超えが出来るようになるのだが……」

「ええ」


 錬と樹がお義父さんとエクレアに説明しております。

 そういえばそんな感じでしたな。

 三次職という奴ですぞ。

 まあそれとは少々赴きが違いますが。


「Lv100を超える為のクラスアップですぞ」

「え? もしかして何かが理由で出来ないの?」

「ああ……伝承には存在するのだが失伝している」

「となるとこの世界の人々は行ってLv100ですか。勇者はその限りでは無い様ですが……」

「一部の亜人は限界が高いが、それでも限界が無いわけではない。キタムラ殿、もしや未来では失伝されていた限界突破のクラスアップが復活したのか?」


 俺は大きく頷きますぞ。

 どうして忘れていたのですかな?

 とても重要な要素ですぞ。


 勇者だけが強くても、この先を乗り越えるのはドンドン難しくなっていくでしょう。

 数は力ですぞ。

 どれだけ勇者が強くても……前回の様に俺だけでは達成できない事態が来ないとも限りません。

 少なくとも仲間は勇者と同じく限界を突破させるべきだと俺は分析しますぞ。


 最初の世界のお義父さんもクラスアップの限界突破は重要視しておりました。

 その先で何が起こったのかは靄が掛って思い出す事は出来ませんが、戦力は多いに越したことは無いですぞ。


 しかも俺が忘れていた所為で大きく出遅れてしまいました。

 何せ、クラスアップの限界突破の条件はアレですぞ。


「では、今すぐメルロマルクに戻りますぞ」

「え!? なんで今更メルロマルクに戻る必要があるの!?」

「フォーブレイはもう目と鼻の先ですよ!」

「そうだ! 目の前まで来ているのにどうしてあの国に戻る必要がある!」

「フォーブレイに到着してからでも良いのではないのか?」


 お義父さん達が各々異議を唱えますぞ。

 言っている事は至極当然ですが、時間的に戻らないといけないのですぞ。


「もしかしてクラスアップに必要な材料か何かがメルロマルクでしか取れないとか?」

「違いますぞ」

「じゃあ何が理由なんですか?」

「限界突破はフォーブレイに行けば入手する事は可能なのですぞ。ただし、方法を解読してくれる者がメルロマルクに居るのですぞ」


 お義父さん達は首を傾げていますな。

 あー……じれったいですな。


「えっと、メルロマルクに住む誰かの力を借りないといけないって事?」

「具体的にはそうですな。正確にはメルロマルクに居る竜帝、フィーロたんのライバルがフォーブレイでクラスアップの力を秘匿している竜帝から知識を奪う必要があるのですぞ」

「知識を奪う? 経過が飛んでいて分かり辛いけど……」

「どちらにしてもその竜帝と言う奴を仲間にしないといけない訳か……メルロマルクじゃ無くて、何処かで勧誘するとか出来ないのか?」

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