俳優でタレントの稲垣吾郎(45)が公開中の映画「半世界」でSMAP解散後、初主演した。これまでエキセントリックな役が多かったが「普通の父親」を演じ「俳優の仕事は一番呼吸がしやすいと感じた。新たな『半世界』に踏み出した運命的な作品」と充実の心境を語った。
炭焼き職人の紘(こう=稲垣)は39歳。元自衛官の親友(長谷川博己)の帰還を機に思春期の息子や仕事と向き合い、人生について考え始める。稲垣は口の上とあごにヒゲをたくわえ、ニット帽にヨレヨレの作業着姿。アイドル時代のイメージをがらりと変え「こういう役が、ずっとうらやましかった。この年齢になって夢がかなった」と喜ぶ。今後のオファーを期待し「こんな役もできるって、タレント名鑑にインプットしてほしい」と売り込んだ。
阪本順治監督(60)はプライベートで出会った稲垣の印象から出演を依頼した。現場では稲垣をこっそりと観察。待ち時間に谷崎潤一郎を読む姿を見て「すてきな過ごし方。次もう1回やろうと思う大事なポイント」と採点し、稲垣も「初めて聞いた! 19歳の時にベテラン監督に褒められてから、落ち着いて待つ時間を大切にしてます」と笑顔を見せた。
撮影は昨年2月、三重県南伊勢町で行われた。稲垣も約1カ月間滞在し「灰のにおいや風景、五感から入ってくる全てに誘われ役作りできた。セットでは絶対できない」と風光明媚(めいび)な街がお気に入りだ。共演は渋川清彦(44)、池脇千鶴(37)、石橋蓮司(77)ら。 (長谷川有美)