日本は11位から61位へ 報道の自由度が下がる理由

In search of truth - Truth, as seen by an American journalist | Jake Adelstein | TEDxHaneda

世界の報道自由度ランキングで日本は、民主党政権下の2010年には11位でしたが、自民党政権下の2015年に61位までに下がりました。アメリカ人ジャーナリスト・Jake Adelstein(ジェイク・アデルステイン)氏は、日本が直面する報道の自由、言論の自由の危機的状況について警笛を鳴らします。本来、ジャーナリズムというのは、印刷してほしくないものを印刷することです。しかし、現在の日本の新聞、雑誌はゴシップや広報にまみれています。日本は昭和の時代、厳しい検閲の時代が続きました。現代でも311(東日本大震災)で起きた、福島第一原子力発電所事故の報道規制を見るとおり、政府やスポンサーにとって不都合な情報は遮断されています。秘密保護法のような法律ができてしまった場合は、言論統制に拍車がかかり、機密事項を聞くだけで投獄をされてしまう可能性も出てきます。アデルステイン氏は秘密保護法を無効にすること、記者クラブは一般に対して門戸を開くこと、スポンサーに依存せず、献金だけで成り立つ報道機関を作ることの重要性について説きました。(TEDxHaneda2015)

日本の報道の自由が危険に晒されている

ジェイク・アデルステイン氏:「ニュースは絶対に眠らない」とよく言います。リポーターも絶対に寝ないといわれますけど、今日のトピックは、日本の報道の言論の自由です。日本には22年間もいます。今日ここにいらっしゃる皆さんよりも、随分長いこと日本に住んでいます。

ここで基本に立ち戻りたいと思います。ジャーナリズムとは何かと言いますと、ジャーナリズムとは、誰かが望んだものが印刷されたものです。

でも、本当はジャーナリズムではありません。例えば、バーガーキングが全てのバーガーを赤、あるいは緑にしたならば、それに関して会社が何かを書きたいと。だけど、それは本当のニュースじゃないです。

外国人特派員協会が「報道の自由促進賞」を作ったんですけども。初めて記者クラブでこのようなものを作りました。というのは、日本の報道の自由があまりにも危機に晒されていると思ったから、このような賞を作りました。

外国人特派員協会は、ちょっと歳を老いた私のような記者のための溜まり場なんですけども、そこで重要な仕事もしています。日本の新聞記者たちがなかなか話せないようなことを話せる場所です。

ジャーナリズムとは、本来印刷してほしくないものを印刷すること

「ジャーナリズムというのは、誰かが望んだ印刷物ではなく、それ以外のものは広報だというような状態ではありません。本当は印刷をしてほしくないものを印刷することです」。

これはワシントンポストの元チーフ・エディターが言ったものです。ジョージ・オーウェルも言ったようなことです。本当は、皆さんが望んだ印刷物というのは、もう広報以外の何物でもありません。

日本ではどのようなものが印刷されているのでしょうか? 例えば、福島の原子力発電所の事故。福島第一原子力発電所が溶融しましたけど、これは地震が起きた直後から溶融をしました。

だけど、人にそれを知らせたくなかったと。なぜ知らせたくなかったかというと、原子力発電所は古くて、この日本では存在が難しかったというようなことを知らせたくなかった。

例えば、オリンピックの副会長は、何回もヤクザといっしょに写真を撮られているような事実があります。クリーンなオリンピック委員会のゲームを開催したければ、そのようなことは隠さなければいけません。

例えば、公安の人は、外国人が大嫌い。そして、在特会に属していて、ヤクザのグループから資金援助を得ていたというようなことが、いろいろ探せばたくさんの事例に枚挙がありません。

ネルソン・マンデラは、かつてこう言いました。「報道は国家の干渉から自由でなければならない。報道は既得権益から十分に独立して、恐れることなく、おもねることなく、大胆に物事を希求していかなければなりません」。

トーマス・ジェファーソンは、こう言いました。「私たちの自由は、報道・言論の自由次第である。それに制限をかけようとすれば、消失してしまうと言っています。私たちが民主主義の番犬であると考えられます。私たちの力が失われれば、民主主義というものも消失してしまいかねません」。

日本の検閲の歴史

検閲の長い歴史です。この長い検閲の歴史に入る前に、日本の自由な報道についての話を少ししましょう。雑誌や新聞は、情熱をもって書かれた時代がかつてありました。

これは1925年に書かれた文章なんですけれども、「日本の報道はイギリスやアメリカよりも素晴らしい時があった」ということが書かれています。これは大正時代のことですが、それ以降、すごく状況が悪くなりました。

この本は、『日本の闇の谷』という題名です。ただ、いろいろな日付があり、いろんな事故が起きて、これについては全部覚え切れませんので、言い切れませんけど。

例えば、日本では新聞法が通過します。日本の治安警察法のようなものも1900年代に作られました。例えば、治安警察法が国会を通った場合、90パーセントの人がそれに対して反対しているのに、衆院を通過してしまうようなことです。これは、基本的に共産主義を避けるために作った法案です。

国のほうでは、映像に関する法律もできました。1930年代、NHKが作られました。NHKというのは国による独占放送機関であり、何かが放送される前に、既に必ず検閲をされるということです。今ちょうど安倍首相のもとにNHKが置かれている立場です。

そのあとは、満州に関して、かなりの報道がされました。戦争があれば支持率も上がりますので、当時の首相の支持率はたいへん上がりました。

治安警察法というのは、もう1回修正されました。そのときに、大衆の前で話をしたとき、国民感情を害すような話をしたときは、それに関して罰則が課せられるということでした。罰則といってもたいへん厳しいもので、一生涯投獄をされかねないような法律でした。例えば、国に対して西洋の思想を持ってくるということは、禁止されることでした。

1941年、全ての雑誌会社は、発行前に政府に承認を得ないと発行できませんでした。ライターのなかには、ブラックリストに載ってしまった方もたくさんいました。私が当時働いていたならば、リストの一番上に載っていたかと思います。

1945年の春夏の頃は、神風の基地の話、そして終戦の話をする方々のインタビューをたくさん報じることがありました。1945年、終戦を迎えました。NHKは、例えば、園芸の放送を始めました。子供のショーも始めました。アメリカは検閲を徐々にやめ始めました。そして、日本は完全な民主主義国家になりました。

戦犯がいました。安倍首相のお祖父さん、岸信介は戦犯だったんですけれども、民主主義の日本では返り咲きました。記者はそれを止められなかったという後悔もあります。

世界の報道自由度ランキングで日本は61位

2010年、世界の報道自由度ランキングでは、日本は11位でした。例えば、スウェーデンのような国です。でも、世界で11位だったのが2010年です。今は、日本は61位になっています。パキスタンと同レベルです。

本当に、日本というのは独裁主義者になってしまったのですか、どこまで落ちていくのでしょうかねぇ。なぜ、このように落ち方が激しいのでしょうか。1つ、2つ理由があります。

311は人々をとても恐れさせました。日本の政府というのは日本人がパニックをするかもしれないということで、なかなかニュースを報道しませんでした。

当時の首相の菅直人さんと話したんですけれども、例えば、どんどんパチンコの玉が出続けるように原子力が爆発し続けるのではないか。日本壊滅ではないか、と日本の方々が怖がったということで、あまり報道をしなかったということでした。そして、時が去っていきました。核溶融がありました。

そして、DPJ、民主党の崩壊もありました。自民党が返り咲いて、安部首相が返り咲いたんですけども、日本は安部首相の副首相が憲法の変更について何かを言ったときに、もっと心配をするべきでした。麻生副首相ですけども、彼がナチスの憲法の話を持ち出したときに、日本はもっと何かを考えるべきでした。

私たちは考えなければいけないのです。なぜ日本の報道の自由が崩壊したか。小さな新聞・雑誌社というのは、ゴシップに取って代わられてきています。そして広報もかなり増えてきています。

つまり、ある企業に対して悪いことを書いてしまうと、そのスポンサーが無くなってしまうということです。例えば、東京電力というのは、このエリアですごく大きな力を持っていますし、日本のどの企業においても広報の費用を持っているのが東京電力です。

でも独占であればあるほど、わざわざ広告をする必要なんて無いですよね。もし使うのであれば、その広告をするときに、プレスが自分たちのことを好意的に報じてくれることを確認すればいいと。そういうことになります。

ゆくゆくどうなってくるかと言いますと、秘密保護法のようなものができて、機密事項を聞くだけで投獄をされてしまう。それを政府が認めるという事が出てきます。

例えば、インドが原子力について、いろいろしたりするかもしれないです。それについて、いろいろ書けることがあります。それが例えば機密事項だったとして、それをどんどん聞き付けると、それが「何かがある」と書かなかったとしても、5年の投獄あるいは10年の投獄になるのかもしれません。

新聞社は心配になってきて、自分たちでは真実を書けなくなってしまう。

怖がってしまって、ジャーナリズムはもはやゴシップに取って代わられるという状況になってきます。

秘密保護法を無効にするべき

自民党が例えば、政府に対して好意的なことを書かないと聞いたときに、こういった報道機関は潰そうではないかと言ったとき、全部の新聞社が抗議をしました。だけど、抗議に対してまた抗議をする新聞社もありました。1社は私のよく知っている、高齢の方々が運営している会社で、もう1つは名前の真ん中にKが入っている会社でした。

これについて、私たちは何ができるでしょうか? 私たちは、この秘密保護法を無効にするということをしなければなりません。記者クラブは一般に対して、門戸を開くことをしなければいけません。

そして、例えば、NPOの報道機関を作るということができるかと思います。アメリカではあるんですけれども、アメリカでは献金だけで成り立っています。

広告の収入に依存することはありません。これは50万ドルからできます。

一般的に、新聞社の人間なので人の言葉を引用するのは嫌なんですが、レイ・ブラッドベリの言葉です。というのはジャーナリズム、そして文章を書くことが、なぜ今大事なのか、ということが書いてあります。

知らない人がいたとして、その人と10分ほど話をしています。その人のことを少しだけわかっているかもしれません。家族のことも知るかもしれません。

でも、この人が何か大変なことをしようとしたときに、その人を止められるかということは、知ることがなければ行動ができないということで、知らなければいけないということです。

知るということはいいことです。知らないこと、または知ることを拒否するということは悪いことです。少なくとも道徳観念が無いということになります。知らなければ人は行動できないのです。そして、私たちは行動をしなければならないのです。

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