「拝啓」はどんな楽曲?
「拝啓」は2018年3月にリリースされたファーストシングル「忘れた」のカップリング曲。
「忘れた」の一言ずつ噛み締めるようなミディアムテンポと打って変わり、振り切ったパンクサウンドとなっています。
また、「拝啓」は「忘れた」に続く世界観のもと制作されました。
「もう会えない人」「死んでしまった人」「過ぎ去った時間、場所」。
こういった忘れ去られたものたちに対する憂いを曲にしたそうです。
作詞作曲した小池貞利は、「忘れた」が内面的な感情だったのに対し、「拝啓」は外側に向けた感情であると語っています。
思いのたけを吐き出すような真っすぐな歌い方は、心が揺さぶられること間違いなし。
この曲は勢いだけにとどまりません。
繊細なギターのカッティングや、透き通るコーラスが、荒々しい中に美しい音色を奏でています。
そして無駄のない曲の構成は、ジェットコースターに乗っているかのようにオーディエンスを曲の世界観へ引き込んでしまいます。
また、勢いのある曲だからこそ、歌詞の意味をじっくり読み解く機会も得られにくいかと思います。
記事の中盤からは歌詞の徹底解釈もしていくので、一緒に紐解いていきましょう♪
歌唱・演奏シーンの詰まったMVをチェック
彼らの歌唱・演奏シーンのカットのみで作られたMV。
スタジオ内で照明を浴びながら演奏する姿は、まるで間近にライブパフォーマンスを見ているかのような臨場感です。
ギターボーカル小池貞利の歌唱中の表情は「狂気じみた」という表現がふさわしいほどの迫力。
全身を揺さぶって言葉を放つ様に、目が釘付けになってしまいます。
実際のライブでも小池貞利のカリスマ的な存在感は観客の注目を集めています。
才能あふれる前奏からスタート
予想を裏切る美しいサウンド
ドラムの入り方から「前のめり感のある激しい前奏が始まる」と思いきや最初から予想を裏切られました。
繊細なギターのカッティング。
そして「uh~」という美しいボーカルコーラス。
これらが一気にサウンドに開放感を与えます。
それにしてもコーラスの音色が美しくてうっとりしてしまいますね。
男性であるのにも関わらず、凄くなめらかで優しい裏声を奏でています。
印象的なコーラスパートを生み出している要素
コーラスの歌唱で「レガート(連続する音を切らずになめらかに移行する歌唱法)」を行っているのが特にポイント。
一般的なパンクロックの荒々しいイメージを一転し、差別化しています。
過去の概念にとらわれない美しいサウンド作りです。
筆者はこの時点で心を奪われてしまいました。
問題提起から始まる歌詞に注目
言葉選びが素敵なAメロ
それでは、1番のAメロから歌詞を見ていきましょう。
いつの間に右に左、西に東、瞬く間に一人
当たり障りの無い言葉選びに飽きた日々
いつの間に耳に忍び、脳内に腐り犯し始めるTV
檻に囚われたポニーの様にいよいよ世に迷子な日々
出典: 拝啓/作曲:小池貞利 作曲:小池貞利
ここでは「人々が出会い、別れ、死んでいくこと」を表していると思われます。
世界中で数えきれない人々が毎日、出会いや別れを繰り返していますよね。
そして大人になるにつれて段々と<当たり障りない言葉>を選んで会話するようになってきます。
こういった「無難に生きていくこと」に飽き飽きしているのでしょうか。
そして3行目後半の「TV」について表現した言葉。
テレビの存在意義や人々に与えている影響を考えさせられます。
現代ではテレビを見ることはごく当たり前になっていますよね?
ところが、テレビによって一般常識が作られている側面もあります。
自分で物事の本質を見抜く能力が奪われた状態を表現していると解釈しました。
何とも面白く確信をついた言葉選びですね。
そして、最後の行も見てみましょう。いままで語った状況を客観的に眺めているようです。
無難に生きている現状。
与えられた「一般常識」を疑わず鵜呑みにする状況。
本当は駆け抜けられるのに、檻の中に閉じ込められてしまった馬に例えています。
自ら走ることがなくなった馬のように、目的や自分自身の能力を見失っている、ということではないでしょうか。
アラームを恨んだ 気性は荒くなった
あの貨物列車は誰かのように不安定だ
出典: 拝啓/作曲:小池貞利 作曲:小池貞利