2008年01月16日

所謂「本門戒壇の大御本尊」彫刻写真の解析(10)

―(1)…(9)からつづく―

『日蓮と本尊伝承』図形検証に異議あり(1)

『日蓮と本尊伝承』の日禅授与本尊と所謂「本門戒壇の大御本尊」の大きさ比較の問題点今回、わたしが提供を受けた所謂「本門戒壇の大御本尊」写真の解析から、敢えて脱線する。現在、入手できるサンプルの検証として重要だからだ。
左図は、金原明彦著『日蓮と本尊伝承』(水声社)67頁に載る大石寺蔵日禅授与本尊と所謂「本門戒壇の大御本尊」の大きさを比較した図である。この書の中の目玉と言える比較図だ。この図をそのままに見ると、提示された2つの図の「原寸大」比較では、中央首題が、まったく同じ大きさになっているように見える。
左・日禅授与本尊の幅尺は 111×58.3cm 、右・彫刻は 144×65cm としての比較だろう。では、実際に同比率の枠を充てれば、当然、ピタリと収まるはずだ。しかし、図のとおり、両本尊の大きさは故意に調整されている。
そもそも右図の彫刻ついての計測には不審がある。上下に白枠を設けて、その大きさを決めているが、これはいったい、どのような根拠によるのか。サンプルとする写真の4隅が写っていなければ、縦横相似に基づく縮小拡大は不可能である。また、縦を 114 としてみると、幅は 65 となっていない。
また、右赤枠縦を 144 とするとき、左の縦の長さは 111 になっていない。
故意に大きさを調整して、中央首題が同じ長さであるように調整されている。
図形検証において、決して、このようなことをしてはならない。これは、まさに読者に対する裏切り行為である。
所謂「本門戒壇の大御本尊」の縦横 144×65

熊田著『日蓮上人』所謂「本門戒壇の大御本尊」の大きさを割り出す熊田葦城著『日蓮上人』に載った所謂「本門戒壇の大御本尊」写真はその全体が写り込んだものだった。また、今回、わたしが提供を受けた写真も厨子から中の宝筺まではっきりと写っている。縦横を相似から推測するサンプルは、このようなものでなければならない。
この彫刻の四隅が特定でき、そこに 144×65 の縦横比率の枠を充て、ピタリとすれば、この推定はほぼ当たっていると見てよいだろう。左図の写真のとおり、熊田本に載る彫刻写真の宝筺の方形はまさに 144×65 の比率を有している。
提供写真・所謂「本門戒壇の大御本尊」の大きさを割り出す同じように、今回提供を受けた写真に、同じ比率の枠を充てたのが、右図である。こちらも、宝筺の方形と一致する。
熊田本、また、提供写真で、このような縦横比率から大きさを測定することができるのは、その四隅がしっかりと写り込んでいるから、可能なことだ。一方、金原本に載る彫刻の写真は、ほぼ全体が写っているようで、しかし、上下を欠いた部分写真にすぎない。このような四隅が写り込まない写真では、いくら宝筺の大きさがわかっていようが、その測定をすることはできないと考えるが、どうか。
そして、何より、大きさを比較するのに、敢えて拡大率を変えて調整するなど、言語道断と言うほかない。

―(11)につづく―

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この記事へのコメント
犀角独歩さん、

談議所でのご案内有難う御座います。
私はすっかり落とし穴に落ちてしまっていたようですね。
しかし恐ろしいというか、本当に創価学会は、トップから末端まで信用におけないということが、よくわかりました。
Posted by 独学徒 at 2008年01月16日 23:09
独学徒さん
コメント有り難うございます。引き続き検証を続けます。ご批正よろしくお願い申し上げます。
Posted by 犀角独歩 at 2008年01月17日 09:55
犀角独歩さん

私は、かなり初期の段階から犀角独歩さん及び「富士門流信徒の掲示板」でご活躍の諸賢方の「彫刻問題」をリアルタイムで見てまいりました。ですから「金原本」に絶対負けるはずがないと思っておりました。今回のご発表であらためてそれを確信致しました。続きがとても楽しみです。外はかなり冷え込んでおりますので、風邪などひかれませぬように。
Posted by 鳥辺野 at 2008年01月18日 12:48
鳥辺野さん、コメント有り難うございます。

「勝ち負け」という意識はわたしにはありませんが、ともかくも事実が明らかになることが大切であると考えています。
いずれにしても、もう少し「金原本」には言及したいと考えております。

寒い日が続いております。ご自愛の程、お願い申し上げます。
Posted by 犀角独歩 at 2008年01月18日 17:32
犀角独歩さん

Posted by SSOJ at 2009年07月28日 21:51
犀角独歩さん

鮮明な写真は、所謂仮の奉安所に置かれて時のものでしょうか。わたしの観た板曼荼羅は、中央首題がもう少し全体右寄りの様に網膜に投影されました。ただし老眼なので断定はできません。南無と妙の字の位置が
微妙に違うような心証です。
Posted by SAIです at 2009年07月28日 22:13
> SAIさん

> 鮮明な写真は、所謂仮の奉安所に置かれて時のものでしょうか

いえ、奉安堂です。

> 中央首題がもう少し全体右寄り…南無と妙の字の位置が微妙に違うような心証

そうですか。ご報告、有り難うございます。
参考にさせていただきます。
Posted by saikakudoppo at 2009年07月29日 18:55