日本銀行が、金融政策としてマイナス金利を実施している時代に、年利や配当が10%を超えるような金融商品は、「ありえない」ということを肝に銘ずるべきだろう。
しかし、詐欺的商品を売りつける側は狡猾である。「儲けたい」「老後の不安を解消したい」「誰かとつながりたい」といった高齢者を中心とする“小金持ち”たちの心理を巧みに揺さぶる形で、投資に引き込む。
終戦直後に摘発された闇金融の「光クラブ」、元祖ネズミ講(無限連鎖講)の「天下一家の会」、純金ペーパー商法の「豊田商事」など、詐欺的金融商法は業者と捜査当局のイタチごっこが続いている。
需要と供給があるから無くならないわけだが、悪徳業者数と被害者数と被害金額が、過去と比べものにならないほど増えており、2019年は「マイナス金利時代の詐欺商法」を連続摘発することになりそうだ。
その皮切りが、ケフィア事業振興会である。警視庁は、2月5日、出資法違反容疑で東京・千代田区の本社などを家宅捜索した。
私が本サイトで、「被害者3万人!ケフィア事業振興会『1053億円巨額破産』の深層」と題して配信したのは、同社が東京地裁に、9月3日、破産を申し立てた直後である。破産から本格的に捜査着手、5カ月で強制捜査に乗り出したのは、記録的な早さだ。
ため息が出るような自転車操業だった。オーナー制度と称して柿などのオーナーになれば半年で10%の利回り、あるいはサポーター制度と称して太陽光などの発電投資で7~8%の利回りを保証していた。
それだけの金利を支払って成り立つビジネスや投資があるハズもなく、結局は出資金を売り上げに計上して、約束の利回りを支払う形態。目先の変わった商品を開発、オーナー募集を途切れなく行ない、一度、ケフィアに入ったオーナーは、歌舞伎やサーカスの無料招待、海外旅行接待などで繋ぎ止めた。
市田柿などを通信販売する「かぶちゃん農園」など傘下の牧歌的ネーミングの会社で行なう詐欺的勧誘で、13年7月期の65億円の売上高が、17年7月期には1004億円と急成長した。「かぶちゃん」は、グループを引っ張る鏑木(かぶらぎ)秀彌、武弥父子に由来。マスメディアの直撃を受けても動ずることがない。「取れるものなら取ってみろ」という開き直りである。