【hey佐藤裕介】天才と呼ばれた男が、20代で経験した挫折から学んだこと「若手エンジニアは“つよくてニューゲーム”状態をつくれ」
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「26歳でGoogleの天才エンジニア」、「30歳のときに2社を上場させた敏腕経営者」、「35歳でエンジェル投資家として活躍」。若くしてさまざまな業界で活躍してきたのが、現在スモールビジネス向けEC・決済サービス、ヘイ株式会社を経営する佐藤裕介さんだ。
なぜ佐藤さんは、短期間のうちにこれほど飛躍的な成果を生み出してこれたのか? エンジニアとしてキャリアをスタートさせた彼のこれまでの歩みを聞いてみた。
※この記事は姉妹サイト『20’s type』の記事を一部修正して転載しています。
“個体差のない人間社会”をハックするための「期待ローン」
人生においてもビジネスの世界でも、僕は「複利」という考え方が大好きなんです。ほんの数パーセントの積み重ねが、時間が経つと非連続的なグラフになり、ものすごく大きな差になっている。関数的な考え方で、長期目線ともいえます。
その概念は、僕にとって衝撃的でした。初めは誰も気に留めなかったような小さな数字の差が、実は結果的に大きな差になることがある。それなら「初めのうちは効果が想像しにくいけど、長い目で見たら大きなこと」をやった方がいいと思うようになりました。そして複利の考えに基づけば、最初の「転がりだし」で発射角を上げて勢いをつけることが大事だと考えたんです。
そこでまずは「すごい人が集まっている」といわれるGoogleに入りました。当時の業務は、アドワーズやアドセンスなどWeb広告の有望な顧客リストを自動生成するシステムの開発。エンジニアではあるけど、クライアントとの距離がとても近かったのが面白かったですね。どこを改善すべきか直接話を聞いて、横で使ってる様子を見て、それをいかにプロダクトに落とし込むかを日々考えていました。
Googleはとにかく極端で、「データ以外の価値は認めない」という文化がありました。「Every Statement is Databasis」という言葉があるほど、データこそ全て。海外の商習慣や文化的な差異、宗教的な背景の違いがあっても、全世界共通であるデータに基づいて仕事をしようという考えでした。そこで、データで目に見える成果がいかに大切であるかを学んだんです。
でも働いていくうちに感じたのは、Googleであっても、優秀な人と、新人の自分との間には、人としては意外とそんなに差がないぞ、ということ。それでも、出している成果には大きな差があったんです。
人間としての“個体差”ではなく、成果の面で極端な差がある。ということは、そこには何らかの特殊なゲームのルールがあるはず。それを見つけ出してハックしたいと思うようになったんです。
働いて周りを見ていくうちにその「特殊なアルゴリズム」の正体のひとつが、「期待ローン」であることが分かりました。今でいうと著名ブロガーのふろむださんが提唱している「錯覚資産」に近い概念かもしれません。
期待ローンとは、期待で機会を前借り(ローン)させてもらうという考え方。僕は、ビジネスパーソンとして重要なのは、いかに真剣勝負のバットを振れる機会を手にいれるかだと思っていて。いつまでも素振りをしてたり、勝っても負けても誰も注目していないような三軍の試合に出ている場合ではないんです。
それなら、実力が足りていなくても「こいつならやってくれるかも」と期待してもらって、出場機会を得ることが大切だと思いました。そしてローンはBS(※Balance Sheet…貸借対照表)上の資産ですから、サイズが大きくなればなるほど、大きな試合の出場チケットを手に入れることができるんだと。
若手だろうが、「こいつはできるぞ」って思わせれば、周りが勝手に期待して、やりがいのある環境を与えてくれたり、成果を出すためのアドバイスをくれたりします。それが成果に繋がれば、また自分の本当のレベルよりも少し上の環境が手に入る。そうすれば人生のスピードも“複利”のように上がっていくんだと知りました。
25歳でGoogleを辞めた時にも、「期待ローン」は僕の力になってくれました。普通に考えれば「Googleを辞めた人=優秀」って、かなり論理の飛躍がありますよね。でも人間の脳みそって、歪んだバイアスがかかっていて、Googleを辞めただけなのに僕は「26歳、ただのニート」じゃなくて、「Googleを辞めた、何かすごいことをするかもしれない26歳」と期待された。その結果、起業するときには多くの人が協力してくれました。
実力は目に見えないし、評価の難易度も高い。でも実績は目に見えやすくて、過大に評価されやすい認知バイアスがある。それなら実績として成果が上がりやすいものを見極めて、規模の大小に関係なく選択し、実行すること。例えば「会社を辞める」ということすら実績になる文脈やタイミングがあるんだと分かりました。
IPO社長なのに“自分探し”。 イタかった上場後の僕
しかしながら、その後、不得意なことに力を注いでしまったのは失敗だったと思います。
20代の頃は、苦手なことでも頑張ればできるとか、自分は変われると思っていました。だけど結局、20年以上生きていたらもう、自分は自分だし、本質が変わることはほとんどないんだなって、今なら思います。起業した後は組織の成長のためとか、いい経営者らしく振舞わなきゃとか、頑固に思っていたんです。でも、そうはなれなかった。
僕が26歳で創業したフリークアウトは割とすぐ業績が伸びて、2期目に100人を採用するまでになりました。でもそれだけ採用すると、採用活動や受け入れで手一杯になって、本業が回らなくなります。そこで事業成長が鈍化してしまいました。
その頃は成長している事業の魅力で人を引っ張っていました。でもそれがなくなったら、メンバーとの繋がりをどう保てばいいか分からなくなった。それなら自分が人格者になって、人間性で関係を維持しないと、と思ってしまったのです。
でも、後から分かりました。ああ、不得意なことって、どれだけ量をやってもダメなんだなって。
当時は、メンバーとの対話をものすごく増やして、毎日毎日、一対一の面談ばかりしていました。朝と昼が面談で埋まり続けている状態がかなり続いたのですが、やればやるほど人の心は離れていった。どれだけ話してもメンバーとの溝は埋まらないし、話せば話すほど僕の人間性が仇になって関係が悪化する。
実は僕、人の気持ちを想像するのが苦手なんです。対人コミュニケーションがそんなに得意じゃないし、時間もリソースも限られているのに、頑張れば何でもできると勘違いして、不得意なことに時間を使っていました。傲慢だったんです。まさに「あいつ、分かってないな」って状態。
結果的に社内にどんどん不満が溜まって、退職者も増えました。正直、事業がうまくいかないことよりも、メンバーの心が離れていくほうがメンタル的には堪えましたね。
それで、IPOした後に“自分探し”の旅に出ました。ヤバいですよね。上場企業を経営しているのにそのフェーズ!? っていう(笑)。僕は就職活動を真っ当にしなかったこともあって、学生がやる自己分析みたいなことを、その時初めて経験しました。
自分の好きなこととか、自分の芯にあるものを書き出すところから始めて、小学生の時から大好きだったゲーム『Mother2』の影響から、糸井重里さんの会社『ほぼ日』へ通いつめたりしました。ほぼ日では、社員向けスピーチを聞かせてもらったり、雑用したり、いろんなことをさせてもらって。そうやって今まで経験してこなかったことや、自分のコアを探る作業に没頭することで、少しずつ「苦手なことで頑張って、成果を出せない」という苦しみから脱け出すことができたんです。
その期間があったからこそ、僕のコアは「今はまだあまりパワーがない面白い人やモノの魅力を探して、面白がれること」だって分かりました。それ以来、そういう人たちを応援しようと、自分の強みを活かせる事業に取り組んでいます。ユニークなベンチャーに投資したり、野心的なスモールセラーの皆さまに、テクノロジーを提供する事業をしているのも、そのコアに基づいています。
「LV.99からニューゲーム」状態をつくれば最強だ
30代になって、ようやく自分のコアが見つけられました。それは今の僕の財産ですが、もし今全てをリセットして20代に戻ったら、やっぱり始めは、コアではなく“勝てる”事業をやります。自分の好きなこととか、考えはかなぐり捨てて、成果が出るもの、出やすいものをやりますね。結果的にそれが、自分の期待ローンになりますから。繰り返しになりますが実力よりも、実績です。「自己成長のために」とかってよく言いますが、僕は 20 代は分かりやすい実績、結果を出すことにこだわる方が良いと思っています。
自分がやりたいことと、世の中から求められていることが一致することってなかなかありません。そんなに都合よくタイミングは合いませんよ。僕だって、20代のうちに資産をつくれていなければ、今頃「10年経っても、Googleの頃は良かったとか言ってるヤバいやつ」だったと思います。
20代でうまく期待ローンを積み上げられれば、30歳を迎える頃には何らかの成果が出て、さらに大きな期待を背負うことができます。それが、今の仕事を続けるにしても新しいことにトライするにしても、「Lv.99から新しいゲーム」を始められるチケットです。いわゆる「つよくてニューゲーム」って状態。そういうふうに、自分の中に資産をストックしていかないと。毎回ゼロスタートではしんどいですから。
さらに若手エンジニアにアドバイスを付け加えるなら、「エンジニアはセールスのことを理解しよう」ということ。逆にセールスの人間も、エンジニアを理解した方がいいと思います。このどちらが欠けてもいけません。
エンジニアは単純にコードを書き出すのではなく、セールスの話からクライアントのニーズを汲み取りながら開発を行うとか。そして「自分の書いたコード一行が売上げを生み出すんだ」という考え方を持つべきです。
特に僕が扱っていたアドテクノロジーは、コンマ何秒の差で広告枠が決まり、その日の売上げが段違いに変わる世界でしたから。すでに「この一行のコードが今日の売上3,000万円を稼ぎ出す」みたいな時代がきているので、今のうちから意識しておくといいと思います。生み出す人・売る人どちらの気持ちも理解して、もっと全体を見ながら動くことが、期待ローンを増やしていくことにも繋がるはずです。
取材・文/石川香苗子 撮影/赤松洋太
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