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【社会】

異なる司法制度 長期勾留批判続く

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 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で再逮捕された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン(64)、前代表取締役グレゴリー・ケリー(62)の両容疑者について東京地裁は十一日、十日間の勾留を認めた。ゴーン容疑者の弁護人は決定を不服として、ただちに準抗告したものの棄却。ケリー容疑者側は十二日に準抗告する。

 日仏の制度の違いはあるが、長期間の勾留は自白を得るための「人質司法」として海外メディアの批判の的となっている。

 「再逮捕で身柄の拘束期間が延長された」。ゴーン、ケリーの両容疑者が再逮捕された十日、フランスのAFP通信が速報した。

 ほかの海外メディアも長期勾留を批判的に報じている。仏フィガロ紙(電子版)は「拘置所でクリスマスを過ごすことになる」とし、米ニューヨーク・タイムズ(電子版)は「日本の捜査当局は尊敬されていた経営者を逮捕し、三週間後に起訴した」と伝えた。

 最初の逮捕は十一月十九日。東京地検の久木元伸次席検事は同二十九日の記者会見で、「国によって制度は異なり、自国と違うからといって批判するのはいかがなものか」と反論した。実際、日本とフランスでは司法制度が異なる。

 日本では検察官が容疑者を逮捕した場合、四十八時間以内に裁判所に勾留を求め、認められれば起訴まで最長で二十日間、容疑者を勾留できる。再逮捕すれば再び勾留請求が可能だ。

 否認を続ければ、裁判所が逃亡や証拠隠滅の恐れを理由に、起訴後も保釈を認めないケースが多い。

 一方のフランス。日本と異なり、捜査の初期は裁判官の令状なしに原則一日の「警察勾留」ができる。検察官がさらなる拘束が必要だと判断すれば、「予審」という公判前の手続きと勾留を同時に求める。

 認められれば、捜査の担当は検察官を指揮する「予審判事」にスイッチされ、原則一年以内、最長で四年八カ月間勾留できる。

 南山大の末道康之教授(フランス法)は「日本の勾留とフランスの警察勾留が混同され、誤解されている面がある。ただ、フランスでは無罪推定の考えが強く勾留は最後の手段。今回のような経済事件は在宅捜査が一般的だ」と解説する。

 また、欧米の大半では取り調べに弁護士が立ち会えるが、日本では認められていない。末道教授は「容疑者の権利保障が不十分だ。国際的な批判を受けても仕方ない」と問題視した。 (小野沢健太、山田雄之)

 

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