GDP=民間消費+民間投資+政府支出+純輸出 の算式を見れば、あまりにも当たり前のことなのですが… 国家経済に関して、 「国の借金それ自体には何の問題もない」ということと並び、 これほど基礎的で重要なことも他にないですので いま一度、しっかり確認しておきたいと思います。 95年-05年の日本を除き、 どの国も、政府支出がものすごい勢いで増えており、かつ名目GDPももの凄い勢いで伸びていますね。 さて、 表の一番右は、名目GDPの増加額が政府支出の増加額の何倍になっていたかを示しています。 95年-05年の日本は、 政府支出が、この表の中でも唯一減少しており、それでも一応は名目GDPが伸びていたので、日本だけは特殊なことに倍数がマイナスになっていますが、 政府支出の伸びと比べて、名目GDPの伸びが3倍とか、5倍というのがザラにあり、中には10倍というのまであります。 政府支出を増やしても名目GDPは伸びないとか、 政府支出を増やしても名目GDPが伸びるのは一時的に過ぎないとかと、 どうしても主張される方がいますが、 いったい全体、 どこにそんな根拠があるのでしょうか? 少なくとも、過去20年の上記表の各国の例を見れば、そんな国は存在しません。 そもそも、 GDP=民間消費+民間投資+政府支出+純輸出 の算式を見て、なんでそんなトンデモ理論が出てくるのか、私にはさっぱり理解できません。 仮に GDP=500兆円とします。 政府支出を100兆円から1000兆円に増やしたとします。 政府支出が増えてもGDPが増えない、というのなら、 GDP500兆円のまま、 政府支出1000兆円+それ以外の項目の合計がマイナス500兆円 にならざるを得ません。 となると、 民間消費+民間投資がゼロで、純輸出がマイナス500兆円とかにならなければ、そうはなりません。 政府支出を増やしてもGDPが増えないなんて、世迷言でしかありません。 現実の結果として、 各国で政府支出が増加、GDPも増加しているのですから、 そのような主張はナンセンス以外の何者でもありません。 それでも、 20年は一時的かも知れないですので、もっと長期のデータも見てみましょう このBEA(Bureau of Economic Analysis)では 1929年からの米国のGDPのデータを閲覧できますが、 インターネットさえつながっていれば、誰でも見られます。 共産主義者だろうが、新自由主義者であろうが、左翼だろうが極右であろうが、国籍を問わず、誰でもです。 政府支出を増やしてもGDPが増えない。政府支出を増やせば、民間の支出が減る と主張なさる方は、 この誰でも簡単に見られるデータすら見たことがないのでしょう。 これが経済の専門家でない一般の方々であれば見てなくて当然ですし、 経済の専門家がそう言っているからそう思ってたというのも それは全くもって仕方のないことです。 しかし、 経済の専門家を名乗る方で、 このBEAのデータを見たことすらなく、上記のような主張をされる方は、 あまりにも怠慢というべきでありましょう。 あるいは、他に何かしら特殊な政治目的があるのかも知れませんが… さて次はもうちょっと細かく。 大恐慌から二次大戦にかけての米国GDPの推移です。 説明書きは、グラフの中に書いたとおりですが、 二次大戦期についてもう少し。 政府支出急増とともに、民間投資は急減しています。 いわば、 「投資」は政府だけ。民間は殆どしない、という形で、 ちょっぴり社会主義チックです。 で、この社会主義的な、なんとなく統制経済な感じの時期ですが、 民間消費がひたすら伸び続けています。 そして、民間人は、生活の営みのためにカネを使うわけです。 結局のところ、 政府支出が増えれば、素直に名目GDPが増えています。 (それなりにインフレになっていますが、それ以上に名目GDPが伸びているので、実質でも超プラス成長だったというのは、「国債を刷れ」でも書きましたとおりです。) あとは、日本のデータも見ておきましょう。 なぜ日本も見るかって?まがりなりにも、世界第二位の経済大国なのですから、しっかり見ておきましょう!!! アメリカと対照的に、90年代後半からは横ばいですね。 そして、 このグラフからも、 「政府支出が増えてもGDPが増えない」とか 「政府支出が増えれば民間支出の増加が邪魔される」 というのは微塵も見受けられません。 見受けられるのは、 「政府支出が横ばい。GDPも横ばい」とか、 「政府支出と民間投資がだいたい同じくらいの金額で推移」 ということになりますね。 日本の場合は、バブル崩壊以降について少し詳しく見てみましょう。 うーん、これはちっとも面白味のないグラフですね… ということで、ちと加工して、 90年の値をゼロにして、90年と比べての増え方や減り方を見てみましょう。 90年から96年にかけて、政府支出がひたすら増えていますね。 その間、民間消費もひたすら伸びています。 そして、注目は民間投資です。 90年から93年にかけては、 バブル崩壊のあおりで一気に24兆円ほど減少しました。 しかし、 政府支出がひたすら増え続ける中、民間投資は93年以降、ようやく回復基調に戻っています。 これはどう見ても、 政府支出が民間の支出の邪魔をしているようには見えず、 むしろ、 政府支出が呼び水になって民間投資が復活した(というか、復活しかけた)ようにしか見えません。 そのことは、 政府支出が横ばい・減少に転じた後、 民間消費も横ばいに転じ、 民間投資に至っては急激に減速してしまったことを見ても明らかでしょう。 02年から07年の景気拡大局面では、 政府支出が減っている中、 民間投資が景気拡大の牽引になっている様子が伺えますね。 ここで、政府支出が増えていたら、どうでしょうか?これまで延々見て来ましたように、政府支出の増加が民間支出の増加を妨げるようなことはないわけですから、 この、 日本における、 近代世界経済史上、極めて稀(まれ)に見る、長期間にわたる政府の支出減少 があった、 02年から07年の期間、 日本の名目GDP増加率は、 あまりにも当然のごとく、堂々の世界最低でした。 ちなみに最近、 中国の潜水艦など軍事向け充電池を作っている中国の企業が、その技術を応用し、 電気自動車向けの高性能充電池の生産・販売をしていると言う話を、テレビで見ました。 軍需産業ですから、当然、政府支出によって育ってきた企業です。 「これだけのデータを見た上でも、まだ『政府支出を増やしてもGDPは伸びない、伸びても一時的だ、政府支出の増加は民間の支出増加を妨げる』という主張を遮二無二に続ける方は、一体何が目的なのかな? もしかして、日本経済を徹底的に弱らせ、立ち枯れさせて、日本が某共和国の『日本省』、または、別の某共和国の『日本道』になって欲しいと願っているのかしら。 あるいは、ただ単純に足し算ができないだけなのかしら…」と思われた方は↓こちらのリンクのクリックをお願い致しますm(_ _)mhttps://blog.with2.net/in.php?751771ブログランキングに参加しております。ご協力、ありがとうございます!http://ecx.images-amazon.com/images/I/51iN5BfVzDL._SL500_SS75_.jpg 「国債を刷れ!」好評発売中です。ご購入はこちらをクリック⇒アマゾン【「国債を刷れ!」補足集】の一覧はこちらをクリック |
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コメント(20)
答えは単純なのにここまで詳しくわかりやすく説明できるヨッシーニ師匠は素晴らしいです。
つまり、今回の「骨太方針2009」 は、GDP増やせばよいという単純なことなのに・・・
消費税率引き上げとか騒ぐマスゴミは馬鹿です。自分のブログでコチラを紹介させていただきます^^
2009/6/10(水) 午後 0:34 [ 鉄人4号 ] 返信する
>ただ単純に足し算ができないだけなのかしら
もう一つ、お得意様がそんな話をして欲しいと頼むから。
というのが有りそうです。
2009/6/10(水) 午後 6:02 [ 丸坊主 ] 返信する
いつも楽しく拝見させていだいてます。アゴラにて池尾和人教授が国債発行で後世に負担が押し付けられるとする記事があります。これを見て心配になりました。
積極財政派の貴殿の反論をお聞かせください。
今だけよかったらいい的なことでは困るので。
2009/6/10(水) 午後 6:40 [ koi*oro** ] 返信する
池尾和人氏はいわゆる 「リカード・バローの中立命題」 を持ち出しているんでしょう。 要するに、公債というのはツケを後世に回しているだけで実は租税と変わらない、という考えです。
しかしデフレギャップが生じている時は違うんです。
2009/6/10(水) 午後 8:41 [ HM ] 返信する
いつも思うのですが、図とか表での表現の仕方が最高ですね。
ただ・・・
ニューディール政策の実施時期の政府支出とGDPの動きを見ると、
政府支出が増えていなくても、GDPが増えているように見えます。
実際に、国債の対GNP比はこの時期40%ぐらいで推移しているようですし・・・。また、何か勘違いしてしまっているのかな・・・
2009/6/10(水) 午後 9:03 [ 9回裏二死満塁 ] 返信する
目的があるにしろ無いにしろ、実際のデータが証明しているのに、「理論と違うから間違いだ!」という学者・専門家は馬鹿にされても仕方ないですね。早くそういう人等が食べていけない世の中にしたいものです。そして、数字やデータに裏打ちされたまともなことを言っている人が脚光を浴びるべきです。
ところで、遅まきながら、河村氏の「この国は議員にいくら使うのか」を読んでいます。
寄付金型はいいとして、集金力と政治力は別じゃないのか?という疑問はありますが、それよりも46pの「議員を寄付金型にすると、お金持ちしか議員になれなくなる」という質問に、世襲が出来なくなるとよくわからない返答をして、質問にまともに答えてないような文脈が気になりました。
読む人が読んだら欺瞞に感じてしまうでしょう。そこがとりあえず気になりました。
2009/6/10(水) 午後 9:09 [ alt ] 返信する
koi*oro**様
国家が存続する限りにおいては、限度を超えなければロールオーバーし続けるので、ある意味後世につけを回してるようで違うと言えるのではないでしょうか?
その限度というのもこのブログで概ね説明されていますよ。
2009/6/10(水) 午後 9:21 [ alt ] 返信する
こういうことは、財務官僚なら知っていて当たり前だと
思うのですが…。
毎日新聞その他を見ていますと、GDPに対する債務残高の
比率抑制を財政再建の目標とするようですが、
プライマリーバランスの黒字化も捨てていないようです。
というより、プライマリーバランスの黒字化こそがメインの
目標であることに変わりないようです。
財務官僚は、竹中氏に洗脳されてしまったのか?
と思ってしまいます。
しかし、当面は、GDPに対する債務残高の比率抑制を
目標とするようなので、その間にGDPが目に見えて
増加し、債務比率がみるみる改善していってくれれば
官僚たちも目が覚めるのではないかと期待しております。
また、官僚たちには、
国債を刷れ!を読み、この記事を読んで目を覚ませ!
とも言ってやりたいです。
名前がnbp*k*01になってるみたいですが、田舎の空手マンで~す。
2009/6/10(水) 午後 9:24 [ nbp*k*01 ] 返信する
nbp*k*01様
財務官僚もそうなのですが、民主党の連中も貧乏性で困ります。(財務官僚は確信犯ですが。)
この前週刊朝日を読んでいたら長妻をはじめとした民主党議員が予算を節約しまくることが国民の幸福につながるかのような話をしていたようです。国家財政と自分たちの家計を全く同じと見なして毛ほども疑っていないようです。
(長妻は質問趣意書で5000ページほどの回答を出させて行政を麻痺させたことがあります。また、北朝鮮の核実験の責任の一端が日本の国会にあると議場で言い放ったことがあります。)
民主党が政権を取ったら日本は取り返しのつかないことになると確信しました。
2009/6/10(水) 午後 9:35 [ boomer ] 返信する
>しかしデフレギャップが生じている時は違うんです
つまり、デフレギャップが解消されると、1000兆円はそのままつけとして圧し掛かってくるってことでしょ。
2009/6/11(木) 午前 7:34 [ MH ] 返信する
koi*oro** さん、こんにちは。
>積極財政派の貴殿の反論をお聞かせください。
>今だけよかったらいい的なことでは困るので。
↓こちらの「質問コーナー」のコメント欄の2009/5/23の分(最後の方です)で、「国債発行の上限は?」という他の方からの質問に3コメント連続で答えさせて頂いておりますので、よろしければそちらをご参照下さいませ。
http://blogs.yahoo.co.jp/eishintradejp/folder/972307.html
↓それと追加でこちらもご参照下さい。
[年金問題、何が問題?]
http://blogs.yahoo.co.jp/eishintradejp/16160579.html
2009/6/11(木) 午前 11:38 [ ヨッシーニ ] 返信する
altさん、
私も河村さんの本を読むまでは「なぜ議員の世襲がダメなのか」と思っていました。古今の英雄の多くは世襲の中からも出てきてますので^^
思うに、
河村さんが問題にしているのは議員の世襲そのものではなくて、議員が貴族化することにある、ということでしょう。
(本の中でも、老舗旅館とか伝統工芸の職人の世襲は否定していません)
例えば、幕府の第二次長州征伐のとき、伝統的に徳川の先陣を務めてきた井伊家と榊原家の武士軍団が、長州の百姓軍団にコテンパンにやられてしまいました。また、この戦争の他の局面では、幕府側の百姓出身の部隊はかなり健闘したようです。
そして、本来、幕府を最後の最後まで守るべき「旗本八万騎」は、幕末、戦争に巻き込まれるのがイヤで、ほとんどが隠居して逃げ、百姓出身の新撰組なんかの方がなぜか命がけで頑張ってたという話もあります。
武士が貴族化して役に立たず、百姓の方がバイタリティーや変化に富んでいたということのようですね。
河村さんの危惧や問題意識はその辺りにあるのかなと、勝手に推察している次第であります^^。
2009/6/11(木) 午前 11:53 [ ヨッシーニ ] 返信する
ヨッシーニさま
世襲だろうとなかろうとその時代の変化についていけない人間は、どうにもならないのではと私は思っています。
ですから、今回の金融危機でこの時代の変化についてこれない議員はいらないのではないかと思っています。与謝野大臣なんか素晴らしいほどに鞍替えしましたし(笑)
alt 様
私は、物理屋ですので理論と結果が違うときは、やっぱり理論が違うのではと感じますが、経済学者さんは理論にこだわりますね。
これも、変化に対応できない典型例だと思います。
2009/6/11(木) 午後 0:34 [ 鉄人4号 ] 返信する
>>河村さんが問題にしているのは議員の世襲そのものではなくて、議員が貴族化することにある、ということでしょう。
私もそう思いました^^
世襲で貴族化してるのは政治家よりも外交官はじめ官僚も酷そうですねw
日本も国防予算を増やしてハイテク技術に投資して欲しいですね~
優秀な日本の人材流出を防ぐ為にも;
北朝鮮の核開発、米国軍需産業でも日本人研究員が居ますから。。
2009/6/11(木) 午後 0:55 [ より ] 返信する
9回裏二死満塁 さん、
>政府支出が増えていなくても、GDPが増えているように見えます。
このグラフでは平坦に見えますが、
アメリカの政府支出は、
1933年87億ドルから、1940年の150億ドルに1.7倍に増えています。そして41年からが本格的に増えていますね。
それから、大恐慌の問題は、急激な民間消費と民間投資の落ち込みに対して、何もしなかったことです。これだけ急激に落ち込んだのですから、その後、そこまで政府支出を急激に増やさなくても自然回復するのも必然ではないでしょうか。何だかんだ言って、名目GDPが1929年の水準に回復するのに、11年もかかっています。その間は名目GDPは戻っただけであって、成長していません。
2009/6/11(木) 午後 1:04 [ ヨッシーニ ] 返信する
ヨッシーニ様
おっしゃるとおり河村氏は世襲を否定していません。議員の世襲も寄付金型であるならば肯定しています。
そして私も、河村氏が議員の貴族化を根本的な問題にしていると読みました。貴族化による硬直性は、議員だけでなく公務員を含めて問題だと思います。
平安貴族から武家社会に移ったのがわかりやすい例だと思います。そういう意味では政権交代が必要なのですが、今の状態では実害の方が大きいのが目に見えてるので、民主党政権は断固反対せざるを得ません。
私の気になったことは枝葉末節の部分なのですが、他に事業を持った経済的に余裕のある金持ちしか議員になれないのではないか?という疑問に答えられていなかったのが残念に思った次第です。
Xマン様
その理論もデータを基に構築してるはずなのにおかしな話ですよねw
ただ、物理や科学の方にも少なからず理論偏重型の学者さんがいるみたいです。以前、新型風車の特集をWBSで放送してて、認められなかったというエピソードがあったので。
2009/6/11(木) 午後 1:33 [ alt ] 返信する
alt 様
学者は、どの分野でも大体理論偏重型の方が多いと思います。専門性に固執しすぎて、違うアプローチが出来ませんから。特に研究の長い方ほど・・・
2009/6/11(木) 午後 4:17 [ 鉄人4号 ] 返信する
ヨッシーニ様
ご回答ありがとうございます。元データでも確認しました(最初から確認しなければいけませんでしたね)。それを見る限り、しっかりと相関関係が出てましたね。最近どうもニューディール政策は公債もそうですが、どちらかというと銀証書や金証書の発行でファイナンスされたのではという・・・疑いをもっていたもので・・・
2009/6/11(木) 午後 7:05 [ 9回裏二死満塁 ] 返信する
図表を駆使してみても。。。国債の格付けが下がり、
国債の国内消化が難しくなって、外国に買ってもらわなければならなくなったら金利を上げないといけなくなります。
へ理屈を言っても日本国債は買わないよと皆が言い始めてます。
さて、どうしますか? へ理屈では日本を救えません。
2011/2/28(月) 午後 2:32 [ ジャズマシン ] 返信する
jazz_machine_japan様
屁理屈はあんたでしょうに。なんで「日本国債は買わないよと皆が言い始めてます」なのに国債の金利が下がってるのですか?意味分からん。だいたい格付け会社なんてあてにならんのはサブプライムローンのときに証明済みだっつーの。現実を見れない人は本当に救いようがないね。
2011/6/20(月) 午後 1:33 [ AA- ] 返信する