(cache)「秋葉原連続通り魔事件」そして犯人(加藤智大)の弟は自殺した(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(8/8)


「秋葉原連続通り魔事件」そして犯人(加藤智大)の弟は自殺した

週刊現代 プロフィール

「加害者の家族のくせに悲劇ぶるな」

「加害者の家族には苦しむ資格すらない」

これは一般市民の総意であり、僕も同意します。

ただそのうえで、当事者として言っておきたいことが一つだけあります。

そもそも、「苦しみ」とは比較できるものなのでしょうか。被害者家族と加害者家族の苦しさはまったく違う種類のものであり、どっちのほうが苦しい、と比べることはできないと、僕は思うのです。

だからこそ、僕は発言します。加害者家族側の心情ももっと発信するべきだと思うからです。

それによって攻撃されるのは覚悟の上です。犯罪者の家族でありながら、自分が攻撃される筋合いはない、というような考えは、絶対に間違っている。

攻撃、結構なことじゃないか。どうやったって自分たちが良い方向にはもう修正されない。だから自分が悪評で埋め尽くされ、人間らしい扱いをされなくなっても、僕は構わない。

こういう行動が、将来的に何か有意義な結果につながってくれたら、最低限、僕が生きている意味があったと思うことができる。

 

兄に会いたかった

優次は、自身を「犯罪者家族」にした兄に、会うことを望んだ。事件以来、拘置所に手紙を送り続け、その数は50通をゆうに超えた。だが一度として返事が来たことはなかった。

兄に会うために拘置所を訪れる優次に、私は何度か付き添った。初めて出向いたときは、押し寄せる緊張で、彼は拘置所の前で嘔吐した。面会受付を済ませ、窓口で「加藤さん」と呼ばれると、面会が決まったわけでもないのに、身体の震えが止まらなくなった。

「自分は兄とは違う。直接会って、それを確認したいんです」

だが、優次は最後まで、兄に会えなかった。加藤は家族を拒否していた。面会どころか、差し入れすら拒否された。

実は死の少し前にも、優次は拘置所を訪ねている。

「今度こそ会えると思ったのに。一度でいいから会いたかった」

優次が私にそう明かしたのは、死の1週間前、2月上旬に会った時だった。私に会う前にも、自殺を図って失敗したのだという。選んだ手段は餓死だった。

「餓死って難しいですね。10日目に水を飲んでしまった。なぜ餓死か?いちばん苦しそうだから。やっぱり、加害者は苦しまなければいけない。楽に死んではいけないんです。

唯一心配なのは、母親です。事件発生時の母は病的に取り乱していて、思い出すといまだにザワザワします。その母親が僕の死を知ったらどうなるのか……」

こう言って力なく笑う優次の覚悟は、この時もう、完全に固まっていた。

事件が少しずつ風化していく一方で、被害者家族だけではなく、加害者家族の苦しみも続く。加害者とともに罪を背負わなければという思いと、「こんなはずじゃなかった」という思い。

その二つの狭間で揺れ続けた繊細な男は、苦悩の時間をみずから終わらせることを選んだ。目を背けてはならない、事件のもう一つの側面がここにある。

「週刊現代」2014年4月26日号より

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