経済評論家の上念司という人がいる。
この人,「実質賃金が下がるのは大した問題ではない」旨を喧伝し,熱烈に安倍政権を応援する人々の一員なのだが,そもそも前提を理解していなかったことが分かった。
最近話題になっている「実質賃金」とは,正確に言うと,実質賃金指数のこと。
厚生労働省の説明によると,実質賃金指数の算定式は下記のとおり。
要するに,実質賃金指数=名目賃金指数÷消費者物価指数×100
ここで,厚労省による指数の説明は下記のとおり。
要するに,ここでいう指数というのは,「ある時点の基準数値を100とした数字」のこと。
ここで上念氏のツイートを見てみよう。
「名目賃金を物価上昇率で割り戻した指数」と言っている。
いや,違うんだが・・
物価指数で割らないといけないんだが・・率で割ったら全然違う数字になるぞ。
そして,彼が計算した実質賃金指数と称する数字が次のツイートに掲載されている。
悲劇的な間違いが,そこにある。
この表を拡大したのがこちら。
おいおい・・・そもそも,この名目賃金指数の列にある「30」っていうの,指数じゃなくて「実数」だぞ。
この時点から既に間違えている。
再掲すると,実質賃金指数=名目賃金指数÷消費者物価指数×100
再度言うが,ここでいう指数というのは,「ある時点の基準数値を100とした数字」のこと。
しかし,この30というのは明白にただの30万円を意味している。つまり,指数ではなく実数である。
で,思い出してみよう。上念氏の脳内では実質賃金の計算式は「名目賃金÷物価上昇率」ということになっている。
そして・・・彼は,実数を物価上昇率で割るというとんでもないことをしている。
その結果,実質賃金指数と彼が勘違いしているものの数字は「6000」になるのだ。
(「1年目」の行。最後に100をかける,という点だけ合ってる。)
本当にびっくりした。
日頃から統計分析していればこんな間違いは絶対にしない。
6000なんていう桁違いの数字になってる時点で気付くだろ普通。
で,もっと驚くのがリプ欄。
だーれも気づかない。突っ込まない。
それどころか「分かりやすい」とか言ってるし。
そういうレベルの人達がヨイショしているということ。
このように,上念氏は実質賃金指数を全然理解していない。基本中の基本なのだが。
ちなみに,私が野党合同ヒアリングで提出した実質賃金指数の計算表がこちら。
これは前年同月を100とする指数を算出して計算している。
これが実質賃金指数計算の見本。
なお,上念氏は以前にもエンゲル係数でトンチンカンなことを言って私につっこまれていることを付記しておく。
それでも彼を信じたいなら私はもう何も言うまい。
なお,上念氏らリフレ派の財政楽観論を完全否定する拙著が明日7日発売。