第3回 理想は8時間睡眠もウソだった!
理想の睡眠時間は8時間、とよく聞く。しかし、それには根拠がない、というか、事実に反しているそうだ。
「人が必要とする睡眠は人それぞれなのに、日本では、どこからきたのか、8時間睡眠が良い睡眠のように言われています。でも、8時間というのは、働き盛りの30代から50代の人たちの必要な睡眠時間からすると長すぎなんです。60代70代だと、もう6時間くらいしか必要なくなる。長く寝過ぎるとかえって調子悪くなることもあって、睡眠酩酊と呼ばれます。私の知り合いにも3時間睡眠の人がいますが、人間の睡眠って、例えば何時間眠るにしても、最初の3時間くらいにかなり深い睡眠をだいたいとってしまうんですよ」
3時間でしっかり眠れて、それで充分な人がいるというのはまことにうらやましい。眠り始めて最初の方が深い眠りが多いということを、「俗説」として知っていたけれど、今の睡眠科学でもそれはだいたい正しい知識のようだ。
「睡眠には2つ、ノンレム睡眠とレム睡眠というのがあって、本質的に異なります。特に先ほど述べた深い睡眠というのは、深いノンレム睡眠のことです。これは大脳皮質を冷却する睡眠で、霊長類などの高等動物で発達しました。一方、レム睡眠はより古くからある睡眠で体の休息、エネルギーの節約が主な目的です。ノンレム睡眠をしている中で、だいたい90分周期でレム睡眠が「侵入(sneak in)」してくるかんじですが、レム睡眠が浅い睡眠というわけではないんですよ。外部から刺激があっても、レム睡眠の状態は、浅いノンレム睡眠よりも覚醒しにくいと分かっています」