【ドラニュース】【龍の背に乗って】開幕マスクヘ どれだけ投手に寄り添えるか2019年2月16日 紙面から 新生ドラゴンズの象徴が捕手だ。大胆な抜てきはあるのか。首脳陣はその方向を模索しているが、扇の要に据えるのは簡単なことではない。そう思い知らされたのがシート打撃での「3暴投」だった。 吉見-加藤、ロメロ-木下拓、山井-大野奨、ロドリゲス-杉山のコンビで計26打者に投げたが、その間に山井を除く3人が暴投した。といってもすべて変化球のワンバウンドで、そらしはしなかったが前にこぼす間に進塁を許した。僕が見た限りでは投手が「止めてほしかった」と思う球。わずか26打者、しかも走者を置いたケースだけの話だから、やはり「多い」と言いたくなる。
「まあ、準備不足ということになるよね。ブルペンとは違う。打者に投げれば投手は力むから引っ掛かる。練習ではワンバウンドが来るとわかっているからきれいに止められるけど、試合だとどうしても体が一瞬、浮いちゃう。その分だけ対処が遅れてしまうんです」 中村バッテリーコーチの説明はわかりやすかった。投手は力み、捕手は浮く。それが練習と実戦形式の違いだ。だから捕手は恥じる必要はないが、大切なのは同僚の球の軌道を覚えていくことだ。山本昌のスクリュー、今中のカーブを止め続けた中村コーチは自身の体験談を語った。 「ずっと受けてれば、わかってくるんです。それがレギュラーの強み。逆にオールスターなんかで斎藤(雅樹)さんや桑田の球は止められなかった。それと外国人の球は難しかったね」 中村コーチが選手に「とにかく受けろ」と指示した理由も、ここにある。仲間の球をとことん知る。そうすれば、止められなかった球もいつかは止まる。 1989年4月9日の大洋戦(ナゴヤ)。記念すべき平成初試合で、5年目の中村は初めて開幕捕手を任された。うれしさの余り、前夜はユニホームを着たまま眠ったそうだ。敗れはしたが「ただの1試合じゃなかった」と大きな財産を手に入れた。誰が自軍の投手の球に最も寄り添えるのか。その捕手が平成最後の開幕前夜、ユニホーム姿で眠るはずだ。 (渋谷真)
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