新年初の投稿が2月となりましたが、よろしくお願いします。
書き易いキャラでということでジャンヌ・オルタの短いお話です。
(なんで私は『こんな物』を作っちゃったのよぉぉ?!)
バレンタインデーの前日自室のキッチンで、ジャンヌ・オルタ(以降オルタ)は床にへたり込んで頭を抱えていた。
何やら身悶えしている彼女の頭上にはバレンタインで渡す目的で作られたと思しきチョコが置かれていた。
どうやら彼女が苦悩しているのはそのチョコの出来、というより見た目が関係しているらしかった。
(作ってるときは全く無意識だったけど、出来上がった『モノ』を見た瞬間のあの正気に戻った感覚はなんだったの? いくらなんでも自分の顔をデザインしたのを作っちゃうなんてどうかしてるわ! これを渡したらある意味『私をたべ……』渡せるわけないじゃない!!)
謎の強制力によって作られたチョコ、オルタは『ソレ』を渡すか渡さないか散々悩んだ挙句、やはりあまりにも羞恥心に耐えることができないという結論からチョコを適当に廃棄する事にした。
(仕方ないわ。適当に購買でチョコでも買って渡そ)
ちょっと涙目になってそんな事を考えながらカルデア内を購買に向かって歩いていた時だった。
「あ、オルター」
「え?」
普段なら声を掛けられる前に気配で気付いたのだが、傷心から油断していたオルタは完全に虚を突かれ、彼女は声がした方を驚いて振り返った。
「な、何よ」
「ちょっと今いい? あ、なんかごめん?」
マスターはオルタの雰囲気から話しかけてはまずかったかと思い、一旦彼女への用事を後に回そうとしたが、持ち直したオルタがそれを察して慌てて止めるのだった。
「大丈夫よ。で、何?」
「あ、うん。これさ、良かったら」
「え……」
マスターから渡されたギフト用の紙袋にドキッとするオルタ。
まさか彼の方からプレゼントを渡してくるなんて思ってもみなかった彼女はそれを受け取った後も戸惑っていた。
「一応バレンタインの贈り物って事で良かったら」
「あ、ありがと……ん? なんか変わった形というか……薄いわね?」
「ああ、うん。チョコじゃないからね」
「へ?」
「まぁ開けてみてよ」
「……」
彼の了承を得てプレゼントの包み紙を剥がすと、オルタは中から姿を現した意外な物を見てつい小さな声で驚いてしまった。
「あっ……ブ、ブルーレイ……てやつ? これ?」
「うん、そう。これさ俺も観て面白くて気に入ったからオルタにも観てほしくて、丁度今ならプレゼントとして贈れば良いかなって思ったんだ」
「……なるほど」
「うん、良かったらどうぞ」
「あぁ、うん。わざわざありがとうね」
「いいって。じゃ、俺はこれで」
「あっ……」
用も済んだのでマスターが別れようとした瞬間、オルタは頭の中に浮かんだ案を実行したいという思いが無意識に働き、去り行く彼の背中に声を掛ける。
「ん? 何?」
「せっかくだから一緒に観ない? 時間は大丈夫、よね?」
「ああ、今は大丈夫だよ。そう? オルタが良いなら、じゃあお邪魔しようかな」
「そう、良かった。私もあんたに渡そうと思ってた物があるしね。丁度良いわね」
「あ、そうなんだ。ありがとう」
「……言っておくけど、受け取ったモノ見ても絶対に私の前では感想言わないでね」
「は?」
「い・い・わ・ね?」
「……ハ、ハイ?」
「うん、なら良し。じゃ、解説とかもいろいろ頼むわよ」
「了解」
戸惑ったり急に凄い剣幕になったり、いろいろ態度が変わったオルタを不思議に思ったマスターだったが、最終的には何となく嬉しそうな雰囲気で自分の後に付いてくるように促す彼女の背中を少しホッとした気持ちで追うのだった。
筆不精、怠け癖、もっと能動的に動けたらなぁと最近思っています。
歳の所為にしてしまえば何でも片付く気がするのですが、それはそれで危うい気もしまね。