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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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ギルドの権力

「背格好まで表示するって、凄くわかりやすいね」

「どうやらこの辺りを根城にしている盗賊に賞金が掛っているようだな」

「盗賊ですか」

「然る貴族が輸送中だった金品を略奪した罪と、罪も無い村を襲った者の様だ。他にも余罪はあるようだな」

「ここまで来ると盗賊では無く賞金首ですな」

「違いがあるの?」

「ありますぞ」


 俺はお義父さん達に向けて説明します。

 そう、賞金首と盗賊の違いとは……。


「盗賊とは資源であり雑多な連中ですな。賞金も微々たるもので、万引き犯に近いですぞ。奴等の理屈では殺しをするのは三流だそうですぞ」

「今資源って言ったよ!」

「盗賊は資源……初めて聞いたぞ」

「言い出しっぺは最初の世界のお義父さんですな。所有者不明の金品を没収出来るからとおっしゃってました」

「イワタニ殿……」

「俺じゃない! 誤解だよ!」


 エクレアがお義父さんを半眼で見ておりますぞ。


「お義父さん曰く、身元が分かる物ならともかく、所有者を主張する怪しげな連中に恵んでやる物は無いそうですぞ」


 と、言うとエクレアは嘆いておりますな。

 しかしすぐに納得がいった様な表情になりました。


「確かに、常に盗賊から没収した金品の行く先での問題ではある……なるほど、所有者を証明できない金品を自分の物だと主張する不埒な輩がいないとは言わない」


 むしろ多いくらいだとエクレアは溢しています。


「私の父の領地でも付きまとっていた問題だ。被害者が本当に被害者であるかの証明は確かに難しい。大抵は自警団の運営費用に回されることになる。もしくは自身の物である証明を持ってくるのを前提に保管されるな」

「基本泣き寝入りになりそうな話だな」

「物騒な話ですね。奪われた物を取り返せないなんて」

「事前に近くの町村に報告でもしておかないといけないのかもよ」

「ああ、その証明をせずにいる者も多いな。盗賊に出会った事=不運だと諦める商人も居る」


 国に報告しても返って来る可能性は低いですからな。当然の反応ですぞ。

 そして……とエクレアは続けます。


「自警団が盗賊狩りをする時に、被害者を主張する偽者の存在も確かに存在するのだ」


 エクレアは語り始めました。

 被害者に盗賊から押収した金品を返した所、夜には買い取り商の所に金品が売り払われ、受け取った本人が自警団から金目の物をだまし取ったと自慢していた、という話を。


「なので被害者を主張する者は絶えず、返すに返せないという事例は星の数ほどあるのだ」

「腐ってる……」

「まったくだ」

「逞しいとでも言うのかな」

「つまり盗賊を狩って得た物は一人占めしても咎めるのは難しいと言う事か」

「ですぞ。そういう意味でお義父さんは資源とおっしゃったのでしょう。また聞きですが盗賊を子飼いにして、盗賊を盗賊に狩らせて宝を町村に義賊としてばらまく事をさせていたとか……」

「まだマシなの……かなー?」


 首を傾げながらもお義父さん達は納得した様ですな。

 ま、一介の盗賊団を狩っても、持っている金銭などタカが知れてますがな。

 精々金貨10枚程度が手に入れば、良い方ですぞ。

 山奥のドラゴンを狩った方がまだ入りますな。


「話を戻しますぞ。賞金首とは完全に身元を特定された証拠持ちの、被害者とギルドが公認で賞金を掛けた相手ですな」

「盗賊との違いは?」

「盗賊は捕えても安いですな。ほとんどの場合、タダ働きになりますぞ」


 下手をすれば治療費を取られるとか聞きましたな。

 限りなく黒ですが、裏で何に繋がっているかわかりません。

 おや? なんとなく記憶が蘇ってきましたな。


「思い出しましたぞ。聞いた話なのですが、最初の世界で錬は落ちぶれて盗賊王になったそうですぞ」

「俺がか!?」

「盗賊王……」

「この世の全てでも置いて来たの?」

「知るか!」

「呪いの武器に浸食されて、お義父さんに不意打ちをしたそうですぞ」

「錬さん」


 樹が何やら錬に嬉しげに肩を叩きますぞ。

 どういう反応ですかな?


「な、なんだ?」


 震えた声で聞き返す錬に樹はこう言いました。


「仲間ですね」

「……」


 錬は嫌そうに樹を見ていますな。


「経緯は……どうやら赤豚に騙されて身ぐるみを剥がされたのが原因だとかそんな話だった様な……」


 あんまり聞いていないのは元より、錬は俺が村に来た頃には既に居ましたからな。

 推測も混ざっていますぞ。

 すっかり忘れていましたな。


「またあの王女か! アイツは俺達に何か恨みでもあるのか!」

「尚文さん、元康さん、錬さん、そして僕ですからね」

「そんなに勇者をハメて何がしたかったんだろうね……」


 まったくですな。

 穢れた赤豚のする事など常人には理解出来るはずもないですぞ。


「元康、話を戻せ」

「わかりました。賞金首は文字通り捕まえる事で金銭が手に入る相手ですな。条件によっては仕留めても問題は無いですぞ」


 世の中のゴミですからな。

 俺達の金になるという点では役に立ちますぞ。


「お義父さんの冤罪が晴れる前は俺や錬、樹が挙って狩った相手ですな」

「へー……」

「目撃情報などをギルドで知ることが出来るのですぞ。上手く捕えれば一攫千金ですな」


 ちなみに活躍に応じて金をもらう事が出来ますぞ。


「なるほどねー……」

「ゲーム知識で異世界冒険をしていたお義父さん以外の勇者は、クエストボードで達成条件が難しい仕事をやったりしてましたな」

「例えば?」

「強力な魔物退治ですな。生態系を狂わせている魔物のボスなどを仕留めて素材を納品するのですぞ。錬が好んでやっていました」

「一石二鳥だもんね。素材だけじゃなくて、経験値とお金まで手に入るし」


 Lv上げに効率の良い魔物を狩り過ぎて、実は俺達が生態系をおかしくしてしまっていた事がありましたな。


「後は勇者限定でしたが国からの依頼で悪徳貴族の視察、主に樹が好んでやっていました。俺が赤豚に頼まれて達成した時は樹に嫌味を言われましたな」

「「へー……」」


 お義父さんと錬が樹を見ていますな。


「な、なんですか?」

「今の樹には関係ないよね」

「そうですね。気をつけましょう。それって国にとって悪徳に見えるだけで良い領主も居たのかもしれませんし」

「後は村や町が直面している問題の解決とかですな。状況で色々と変わりますが、飢饉の解決とか魔物に連れ去られた子供の救出とか、それこそ賞金首に支配された町の解放とかもありますぞ」


 ま、どれも過去の輝かしい……実際は怪しいクエストですな。

 その中にどれだけ嘘偽りが混じっていたのか、想像も出来ません。


「つまりギルドは仕事の宝庫って事かー……」

「一般冒険者が出来る仕事は競争率が激しいですな。割に合うかは知りません」

「そうなんだ?」

「冒険者と聞けば耳当たりは良いが、自由業なのだ。国の信頼を得なければ難度の高い依頼は出来ないのもあって長く続けるのは難しいな」

「この辺りはお約束かー……確かクラスアップをしないと普通の人はLv40を越えられないんだっけ?」

「今の俺達からしたらすぐに届く数字だな」

「元康さんに至っては一日で達成してしまう数字ですよ」

「これが壁となって難しい依頼を達成し、一攫千金を出来ない様にしている」


 はー……と、お義父さんは感心したように声を出しますぞ。


「住み分けが出来ていると言うのかな。40以下の仕事は冒険者でも無い一般人でも出来る仕事もあって競争率が高い」

「反面、国に信頼をされてクラスアップを済ました者は高難易度の競争率が低い依頼を請けられる。まさしく引く手数多か」

「冒険者、国が抱えた傭兵、騎士と仕事の差がある訳ですね」

「この辺りは錬も樹も知ってる感じだね」

「一応はな」

「ええ」

「で、勇者はLv限界が無いから難易度の高い依頼も達成可能なんだね」


 俺達は頷きました。

 色々と制限された世の中ですが、なんだかんだで上手く作られているものですな。


「じゃあ試しに何かやってみる? 寄り道になり過ぎない範囲で」

「金はあるからな……やる価値はあるのか?」

「……無いかもね。まあ、情報収集には良さそうだし、エクレールさんも色々と調べてくれない?」

「ああ、そのつもりだ」

「ちなみにここは冒険者ギルドですが、他に商人ギルド、鍛冶ギルド、服飾ギルド、魔法ギルド、治療ギルド等、いろんなギルドがあるのですぞ。仕事の内容も変わったりしますな」

「異世界での生活も大変なんだね。小説とかじゃ冒険者ギルドの権威が強かったりするけど、この世界だとどんな物なの?」

「大抵は都市毎の運営だそうですぞ。国や最寄の都市など、繋がりはあるようですがな」


 俺もそこまで詳しくはありませんが、国からの命令はどの都市でも強いのだと思います。

 実際、霊亀事件の後、メルロマルクの女王の一声で、俺達は冒険者ギルドで稼げなくなりましたからな。

 しかし冒険者ギルド同士の繋がりは、本部を除けば隣の都市位まで、と聞いた気がします。

 隣の隣まで来ると築き上げた地位も、そこまで信用出来ない感じになるんでしょうな。

 それこそ勇者の様な、都市を跨いでも響く様な、高い名声でもあれば別なのでしょうが。


「なんだ、国を跨いだ巨大組織じゃないんだ」


 そういうのは宗教でしょうな。

 三勇教やシルトヴェルトの教会などは例外として、四聖教は世界各地に、それこそ国を跨いで広まっていると聞きます。

 三勇教などの例があるので、敵に回すと厄介な連中でしょうな。


「でも他の国に行ったりする為の通行証とかは発行出来るんだね」

「冒険者ギルドに限らず、多くのギルドは所属国と繋がっている。ある程度の権利委託もなされているのだ」


 と、エクレアが説明してくれました。


「イワタニ殿の言っている意味が少々分かり辛いが、冒険者ギルドもこの都市に大きな物で二つ三つは存在する。その冒険者ギルドの中に他国が後ろ盾しているケースも存在する。そういう意味では国を跨いでいる所も多い。ただ、本国よりも権力は弱いだろうな」

「ふーん、完全に下請け会社って感じなんだね」

「その呼び方をやめろ」

「夢が壊れますよ」


 と、お義父さん達がギルドについて学んだのですぞ。


「手紙とかもここですぞ」

「郵便局も兼ねてるんだね。そういえば通行証の発行もしてくれたしね」


 とまとまった所で、エクレアがカウンターの方へ行きますぞ。


「少しイワタニ殿達が欲している情報を集めて置くので待っていてくれないか?」

「うん、わかったよ。俺達は俺達で見ていようか」

「そうですね」

「少しは強くなったんだし、ついでに町を見て回るか」


 と言う事で、ギルドで集合する事に決めて俺達は解散しました。

今更ながら冒険者ギルド説明回。

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