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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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冒険者ギルド

 前回のお義父さんが言った事を俺は言おうとしていますぞ。


「言わなくて良い」

「ええ」

「元康くんの話は何度か聞いたからね。ギャルゲーの世界って言ったんだろうね」


 おや? 完全に察せられてしまいましたぞ。

 しかも正解とは、さすがお義父さん。


「錬の世界ってゲームで死ぬと現実で死ぬとかそんな事件ありそうだよね」

「小説の読み過ぎだ。俺の世界でもVRが発祥した頃にそんな夢物語はあったらしいがな。精々……ゲーム内時間加速認識でゲームでの死=死ぬ様に見せかけた作り手の暴走があった話が関の山だ」

「そんな事件があったんだ?」

「昔の話らしいがな。オープンテストで始まりから1時間内にログインしたユーザーにそう思いこませた事件があった。もちろん死人なんていなかったし、開発者のやり過ぎなイベントで片付けられた」

「サービス終了してそうだね」

「逮捕者が出たらしい。が、ゲームで死ぬ=死はほぼ不可能だと俺の世界では言われている」


 なんと、錬の世界の話を聞くのは割と新鮮ですな。

 色々と事件があるのですな。

 俺の方はどうですかな?


 ……あまり事件らしい事件は聞きませんな。

 むしろ俺は世論よりも豚を追っていたので、あんまり詳しくありません。


「脳をハッキングとかありそうな事件なのにね。俺の世界のラノベでVR系だと洗脳ってワードがかなりの頻度で出てくるよ」

「そこまで科学は進んでいない。いずれは起こったかもしれないがな」


 と言いながら錬はポツリと呟きました。


「何せ……感触は殆ど無い世界だからな。意識はネット内に入れるが……この違いは、俺はまだ学んでいないから知らん」

「あくまでゲーム内の画面を見せられてる感じ?」

「体の動きは再現されているが痛みや触感は無い。精々ダメージエフェクトのような振動程度を使っている機材が再現してくれるだけだ」

「なるほどね」


 あまり語らない錬がお義父さんに色々と教えてくださっていますな。


「ただ、現実と勘違いしてしまう人がいたらしく、解像度を落とされたと聞く」

「へー……そういう弊害もあるんだね」

「絶対音感の様に、そんな解像度でも臨場感を感じてしまう後天性の資質がある者は……ゲームでは確かに強い相手だったな」


 そこでお義父さんは何か気付いた様ですが、話題を逸らす様に樹の方を向きましたぞ。

 錬の話に樹が関係あるのですかな?


「樹の方の世界にもそんな異能力者いそうだよね」

「いますね。確かネットダイバーという電子の世界に意識を潜らせる能力者です。彼等からしたらネットの世界はVRなのかもしれませんね」

「やっぱり樹の世界の話が面白いよね」

「そこに落とさないでくださいよ! 錬さんも頷かないでください! お願いしますから錬さんの話を楽しんでください」

「んー……とは言っても、VRのゲームの話をされても、実際に異世界に俺達は居るんだし、日常はちょっと近未来程度で車も空を飛ばないそうだから代わり映え無いんだよ」

「空を飛べる異能力がある世界の方が楽しめるな。今は」

「くッ!」


 悔しがっている樹ですが、そこまで嫌そうにしていませんな。

 何せ、人に話しを聞いてもらうのが樹は好きですからな。


「勇者殿達はとても変わった世界に住んでいたのだな。私は誰の世界の話でも楽しめるぞ」


 と、呟いたエクレアにお義父さん達は若干照れくさそうにしていました。


「Lvも無い世界とはどのようなものなのだろう? 異能力は魔法との違いが分からないし、ブイアールが何かはわからないが、夢の世界みたいなモノなのだろう。その点で言えばイワタニ殿とキタムラ殿が居た世界こそ、私には異世界だ」

「そういう認識もあるんだね。とはいえ、錬や樹、元康くんの話を聞く限り、俺の世界は……フォーブレイの科学技術が広まって、魔法の無い世界みたいな所と言うのが近いかな」

「なるほど」


 そんな雑談を繰り返しました。

 しばらくしてエクレアが言いましたな。


「ふむ……さて、休憩はこれくらいにして訓練を再開するか?」

「そろそろ食事が出来るから食べてからにしてよ。どっちにしても俺達は少しでも強くなるしか道は無いみたいだし」

「話は戻りますが、僕は何をすべきなのでしょう」

「要するに樹って弓を使う者としては完成してるって事だろうし、他には回避技術を学ぶくらいしかないんじゃない? こう……忍者みたいな感じで」

「それって結局、Lvによるごり押しが出来そうな箇所ですよね……はぁ」


 樹の嘆きは深い様ですな。

 まあLv以外での強さを手に入れるのは難しいのですぞ。

 あのお義父さんですら、何日も修行していましたからな。


「ちなみに最初の世界の樹は銃器も扱えていた様ですぞ。フォーブレイでコピーしていましたな」

「え? 弓だけじゃないんですか!? 僕の武器のバリエーションは!」

「現代社会基準で考えて……銃が使えて、レンジャー部隊とかそんな感じ? ガンカタとかロマンだよね」

「なんかますます体を鍛えて避ける以外やることが無くなりそうです」

「何もしないよりはマシだと思いますぞ」


 俺の言葉にお義父さんと錬とエクレアが頷きました。


「錬さんが羨ましいですよ。僕は尚文さんよりも狭い避けるだけだなんて……」

「受け流しくらいは許されると思うから……参加出来ると思うよ」


 お義父さんを見て樹の表情が若干晴れますぞ。

 仲間はずれがそんなに嫌なのですな。


「とはいえ……経験の少ない者が武器を振りまわしている状況なのは否定できないな」

「そこはしょうがないかもしれません。勇者とは言っても平和な日本から来た一般人な訳ですから」

「最初の世界の俺達をなぞってLv上げ以外での技術向上をして行けばいいんだよ。ね? 元康くん」

「そうですな」

「サクラちゃん達が三人で攻撃しても避けられるくらいになれば怖く無くなるでしょ」

「尚文さんがサラッと凄い事を言いましたね」

「エクレールの攻撃を避けるのもやっとの俺達に出来るのか?」

「ではユキちゃん達! 今日の遊びの時間ですぞ!」

「今からやるんですか!?」


 俺は先に食事を終えたユキちゃん達を呼んで、ここ数日やっている遊びをやっていますぞ。

 お義父さんが発案した、俺を捕まえる遊びがまだ続いてるのですぞ。


「今日こそ元康様を捕まえて見せますわ」

「コウもがんばるー」

「サクラ飽きてきたーナオフミと遊びたいー」


 などと言いながらもユキちゃんの鋭い蹴りやコウの不意打ち、サクラちゃんの突撃を俺は避けますぞ。


「あんな感じに……」

「出来るようだな」

「ですね。がんばって技術を向上させるように努力しましょう」

「その前に、ご飯だね」


 こうして今日も夜は更けて行ったのですぞ。



「ここが冒険者ギルドか……毎度思うけどなんか市役所みたいだね。もしくは職業案内所?」

「悲しい事を言わないでくださいよ。なんか冒険者の方々が失業者に見えてきましたよ」


 立ち寄った町でお義父さん達は世の中の動きを見る為に冒険者ギルドに来たのですぞ。

 場所が場所なのでエクレアと俺が良く来て情報を仕入れている所ですな。

 ユキちゃん達は辺りをキョロキョロと見渡していて可愛らしいですな。


「これがクエストカウンター?」


 お義父さんがボードに張り付けられている書類に目を向けますぞ。

 あまり割の良い依頼は無いようですな。

 安いクエストばかりですぞ。


「大体が近隣での雑務が書きこまれているな。ここで気に入った仕事を見つけて請け負うのだ」


 エクレアがその中の一枚を指差しましたな。


「これは商人ギルドとの合同での依頼書だな。薬草の採取だそうだ」

「良くある薬草採取だね。小銭なんでしょ?」

「どうやら危険な所に生えている薬草の様だな。報酬額も地味にある」

「文字が読めない奴はどうするんだ?」

「そういう人用に語学が堪能な者が受け付けをしている。高額の依頼もそこで請け負うそうだ」

「エクレールさんはやったこと無いの?」

「私は無いな。騎士として一般常識の範囲で知っているが、全て受け売りだ」


 ふーん、とお義父さん達は色々と見て回っていますぞ。


「お? 賞金首みたいに人相書きがあるね。あ、全身映像付きだ」

「地味に凄い技術だな」


 クエストカウンターの隣にある映像水晶で犯人を撮った物をお義父さんは指差しています。

 ホログラムの様な物で、顔から身長まで全て映るのですぞ。

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