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チョコレートで皮膚がかゆくなる? アトピー性皮膚炎と高カカオチョコの意外な関係

連載「現役皮膚科医がつづる “患者さんと一緒に考えたいこと、伝えたいこと”」

大塚篤司週刊朝日#ヘルス

大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

チョコには多くのニッケルが含まれているため、金属アレルギーの方は食べすぎないように(写真:getty images)

チョコには多くのニッケルが含まれているため、金属アレルギーの方は食べすぎないように(写真:getty images)

 一部のアトピー性皮膚炎の患者さんでも、金属アレルギーが関与することが知られています。金属アレルギーの有無をみる検査がパッチテストというものです。金属パッチテストとは、皮膚に金属の成分を含む試薬を貼り付け、かぶれが起きるかどうか確認する検査。アトピー性皮膚炎の約20%の患者さんが金属パッチテスト陽性です。金属の中でも特に、ニッケル、コバルト、クロムに対するアレルギーが多いことがわかっています。

 さて、金属アレルギーとアトピー性皮膚炎の関係について、もう少し話を掘り下げてみましょう。アトピー性皮膚炎は現在、二つの病態に分類できることがわかってきました。外因性アトピーと内因性アトピーとよばれるものです。

 外因性アトピーはアトピー性皮膚炎の約80%を占めます。湿疹のない部分の肌もカサカサしており、皮膚のバリア機能に異常があることが特徴です。また、アレルギーの数値として使われるIgEの値が高いことがわかっています。一方、内因性アトピーはアトピー全体の10~20%を占めます。皮膚のカサカサは少なく、IgEは正常範囲内か軽度高値。内因性アトピーの約7~8割が女性で、鼻炎やぜんそくの合併が少ないことが知られています。

 2013年の論文では、61.3%の内因性アトピーの患者さんがニッケル、コバルト、クロムのいずれかの金属に対してパッチテストが陽性でした(J Dermatol Sci. 2013 Dec;72(3):240-5)。一方の外因性アトピーでは、25.5%の患者さんで金属パッチが陽性でした。このように、内因性アトピーの多くの患者さんが、ニッケル・コバルト・クロムに対する金属アレルギーであることがわかりました。

 私の外来でも、IgEが正常範囲内で肌がカサカサしていないアトピー性皮膚炎の患者さんに、チョコやコーヒーを我慢してもらうことがあります。内因性アトピーは金属アレルギーを合併している割合が高いためです。もちろん、金属アレルギーの確認には金属パッチテストが必要です。この検査は偽陽性も多いため、アレルギーを専門とする皮膚科医のもとで検査を行うことをおすすめします。


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