非常事態宣言、国民の権利を一部制限

北米
2019/2/15 10:06
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非常事態宣言は、戦争や大規模な災害、テロなど、国の安全に関わる事態に対応するための行政手続きの一つだ。危機に迅速に対応するため、国家元首や治安機関、自治体の首長などに通常よりも強い権限を与えることを各国が法律などで規定している。

トランプ米大統領は非常事態宣言を発令して国境の壁を建設する狙い(13日、ワシントン)=ロイター

一般的に、非常事態宣言が発令されると、危機対応を優先するため、国民の権利が一部制限される。例えば、捜査令状なしに治安機関が国民の身柄を拘束できるほか、私有地の使用や国民の移動などを制限することができる。

主要国では、2001年の米国、15年のフランスでそれぞれ起きた同時テロの後に非常事態宣言が発令された。テロを未然に防ぎ、テロ組織の捜査をしやすくするためだが、最近でもフランスではデモが全土に拡大し、仏政府は非常事態の宣言を検討したとされる。

米国の法律では、国防長官は米軍に国防のために必要な工事の実施を命じることができるとも規定している。今回、トランプ米大統領は中南米から多くの移民が押し寄せていることを理由に非常事態を宣言。国内で反対論が多い国境の壁の建設を強行する狙いがあるとみられる。

ただ、非常事態宣言の発令に警戒する意見も多い。独裁政権の国家では、非常事態宣言を理由に国民を弾圧するケースもある。例えば、2011年に独裁政権が崩壊したエジプトでは、30年にわたって非常事態宣言が発令されており、国民の言論や集会、出版などの自由が制限されていた。

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