2018年5月26日土曜日

YF-23, F-22, F-35B ステルス戦闘機の表面比較 リベット・ファスナーボルト・RAM材, YF-23, F-22, F-35B Stealth Fighter Surface coating, rivet, fastener bolt, RAM

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YF-23, F-22, F-35B Stealth Fighter Surface coating, rivet, fastener bolt, RAM









YF-23, F-22, F-35B ステルス戦闘機の機体表面比較とリベット、ファスナーボルト、RAM材の施工方法について。






1.YF-23 in Western Museum of Flight


Western Museum of Flightで、ATF試作機でYF-22と争ったYF-23を見てきた。
フェンスの向こう(地方空港内)に展示されていたが、博物館のおっちゃんにお願いして、付き添いで入れて貰えた。ありがとう、おっちゃん。

美しい機体で、30年近く経過した今でもまだ未来的である。
YF-23こそ、未来だったんや!


 

Western Museum of Flight and YF-23




未来的なフォルムのYF-23側面(©Orbit Seals)




YF-23の紹介動画(Youtube)


YF-23機体の表面を見てみると、リベット、ファスナー等、製造上の凹凸がある部分とない部分に気づいた。RAM材(Radar absorbent material:電波吸収体)を張り付けてる部分とそうでない部分と思われるが、F-22やF-35Bはどうなってたかなぁと思い、自分で撮影した写真やネットの画像等を使用して比較を行った。






2.YF-23 Grey Ghost (PAV-2)





YF-23機体前方側面(©Orbit Seals)



YF-23 ファスナーボルト部拡大写真(©Orbit Seals)



機体材質の上から、表面塗装、あるいはRAM材・RAMシートを張り付けてる様に見える。経年変化のため、表面塗装・RAMシートを張り付けていても、下の構造物の凹凸が色の変化によって可視化されている。その様子は、灰色の機体下に白い格子状の模様が浮かび上がっている所を見れば分かるだろう。

その中で、機体前方側面に円形部が四角形状に配列され、横一列に並んでいる事に気づくだろう。当初、リベットがむき出しになっているのではないか?と考えたが、拡大すると中心部に穴が開いているため、ファスナー(ボルト)がむき出しになっている様である。



 

リベット打つ前の製造ラインのF-35と製造後のF-35
ステルス機のリベット跡は、RAM材・シートの下に隠れて基本的に外から見えない




MH-53E ヘリコプターの後方写真,(©Orbit Seals)
数多くのむき出しリベットが確認できる


材料を塑性変形させて半永久的に接合させるリベットに対して、ファスナーボルトは、文字通りボルト締めをしている。機体内部メンテナンスの際に、分解できる様、機体表面のパネルを再度取り外すことが出来る様になっている。(詳細はF-22の項目で解説)

本機体は、カリフォルニアで野ざらし展示されており、展示開始から25年、分解再組み立て3回、再塗装2回以上行っている上で、表面の状態を再現している。

ファスナーボルトがむき出しになってる部分は、当初単純に表面塗装やRAMシートが剥がれている訳ではなく、試験当時の状態を再現していると考えられる。


◆ 関係リンク等
[1] YF-23 フライトマニュアル【PDF 107MB】
   https://sobchak.files.wordpress.com/2011/03/northrop_yf-23a_utility_flight_manual.pdf
[2] YF-23.net, http://yf-23.net/



         







3.F-22 Raptor







2010年に米空軍横田基地祭に飛来したF-22ラプターを撮影した写真を持っている。それを使い考察した。Web上野の他の写真も確認したが、どうやら、側面側の処理はYF-23と同様であり、ファスナーボルトが暴露されている部分も確認できる。





F-22(米軍横田基地, 2010年  ©Orbit Seals)



F-22 機体表面の考察
  1. YF-23、F-35Bの機体表面と比べ、機体表面が金属の様に極めて光反射具合が強い。導電体塗装が施工されており、ステルス性に効いている物と考えられる。写真を比較すると他機種の表面塗装とは、明らかに異なる事が分かる。機体表面で確実に反射させるためか?(複合材等の内部反射防止)
  2. 側面のエッジから離れた部分は、ファスナーボルトが見えている部分がある。これはYF-23と同様である。F-22の方がファスナーボルトが晒されている部分が多い。
  3. これは、日本の基地祭で公開するために、この様な仕様になっているという訳ではない。他のWeb上の画像を比較確認しても同様のため、常用でこの状態と見られる。
  4. 機体下部にも凹凸が見えてる部分があるが、上部の側面部の方が圧倒的に多い。レーダー波が当たっても、大して影響がない部分と判断し、この様な処理にしたのだろうか?
  5. 地上からレーダー照射を受けるならば、下面部に当たって反射する。このため上面部より気を使う必要がある。上部の側面部で反射したレーダ波は、上に反射されるので、地上及び空からのレーダ波はそれほど気にしなくて良いためか?
  6. 高速飛行時の加熱対策として、あえてRAM材を手当てしていない部分もあるのではないか。


戦闘機用レーダーの一例として、F-15に搭載されている戦闘機用火器管制レーダーである、AN/APG-63は、X帯周波数(8~12.5GHz)を利用している。これを波長に変換すると、約37.5~24mm程度だ。それに比べれば、ファスナーボルトの直径はサイズ的には小さい様に見える。ボルトの穴部分は直径1cm程度に見える。

このため、影響は問題になるレベルではないと考える事も出来るが、機体表面が不連続となるため、好ましいとは言えないだろう。完全に問題なければ、機体全体に渡って、ファスナーやリベットが散見できるはずである。

頻繁にメンテナンスする部位のため、機体表面パネルを外さなければならない需要があり、この処理に落ち着いたと考えるのが妥当な線であろう。


また、全体的に、F-22機体下面より機体上面の方が、RAM材を手当てせず、ファスナーボルトが暴露している部分が多い。これは、メンテナンスを考慮したであろう他に、レーダー照射を受けた場合の特性が影響している可能性がある。

高速巡航するF-22は、高高度を飛行する。その場合、レーダー照射は、ほぼ下面か側面から受けることになる。地上から受ける場合は、必ず下面から受け、戦闘機から受ける場合でも側面・横から受ける幾何学的配置となるだろう。ルックダウンの特殊な場合を除いて、大体、この条件になる。この場合、下面は丁寧にRAM材塗布して、頻繁にメンテナンス・分解する部位は、機体上面に配置した方が良さそうだ。





機体上面がラフな理由説明図(©Orbit Seals)



つまり、地上からレーダー照射する場合は、下面の反射が支配的であり、上面はあまり関係が無い。側面から照射された場合は、上方向・上斜め方向に反射してくれれば、それより上にセンサーを持った戦闘機等が配置されて無ければ、まず観測されることはない。

加えて、約37.5~24mm程度の波長を持った、戦闘機用火器管制レーダーに対して、ボルト穴部分は直径1cm程度であり、影響もたかが知れている(?)

これにより、機体上面をメンテナンスをしやすくするために、RAM材が手当てされていないファスナーボルトをラフに複数見える状態にしても、言い訳と説明は付く。






4.F-22の実際のメンテナンス




F-22 Jet Fighter Maintenance on the Flightline





米空軍の整備員がF-22のファスナーボルトを外し締め付けている様子


実際のF-22のメンテナンスでは、機体表面に施工したRAM材を削って、出てきたファスナーボルトを1本1本外していくという作業が実際に行われている。上記の動画と画像は、ティンダル空軍基地のF-22整備員を撮影したものである。




F-22コックピット下のメンテナンス(©Orbit Seals and US AirForce)


 

エルメンドルフ空軍基地でのF-22メンテナンスの様子と拡大図



先程示した、横田基地で撮影したF-22の画像と照らし合わせることで、該当部位がファスナーボルトであることが分かる。

これらのF-22機体メンテナンスに伴い、ボルトを外し、取り付ける作業は、機体に塗布しているRAM材を削り落とし剥がした上で実施される。以下に作業風景の画像を示すが、これは極めて面倒な作業に見える。F-35からは、RAMシートを用いており、メンテナンス面では多少改善されたと考えられる。(次項参照)



レッドフラッグ17-1にあたり、ネリス空軍基地でF-22のRAM材を
メンテナンスしている27th Aircraft Maintenance Unitの整備員(2017年2月3日)




      






5.F-35B LightningII JSF






2016年及び2017年の米海兵隊 岩国基地祭で撮影した、F-35Bの外観を以下に示す。全体的に凹凸を無くした、平べったい印象を受ける。





F-35Bの外観(©Orbit Seals)



F-35B 機体表面の考察
  1. 機体のほぼ全体に渡って、製造上発生する段差の上から、RAM材を貼って手当している。例えば、コックピット斜め下側のメンテナンスハッチ部は、凹凸形状が薄く見えつつも、上からRAMを貼っていることが分かる。
  2. 全体的に、凸凹が少なく、極めて工作精度の高い工業製品の印象を受ける。
  3. エンジン部ノズル真横側面にリベットが見えている部分が存在する。エンジンからの放射熱の影響を考えて、あえてRAM材は貼ってないと考えられる。
  4. F-22の表面塗装と比べて、シンプルに仕上げている。表面の導電体塗装は、重点的に行われてない。表面は光るが、よりマットな感触。
  5. 各部品や機体の加工精度は高く、剛性が極めて高い様に見受けられる。(機体が簡単に変形するとステルス性能にばらつきが出るため)
  6. 機体中央・後方上面部に、リベット、ファスナボルト跡が見えるが、むき出しではなく、上からRAM材で手当てしている様に見える。


まず、F-35の場合、定常的なアクセスパネルを取り外しするボルトには以下の様な表記がついている。ボルトの周辺には扇形の白色マーク、そしてボルト自身は、六角ボルトの穴を埋め込んだ様な形状になっている。これは、コックピット右側のパイロット用はしごを収納しているパネル部分も同様である。

六角ボルトの穴は、機体やボルト表面に対して凹凸が無い様に見える。この部分はプッシャー式になっており、回す時だけ引っ込む機構になっているのかもしれない。


この部分が定常的なアクセスパネルであることは、嘉手納基地に着陸したF-35Aが、アクセスパネルを落とした2017年11月30日のニュースより判明している。嘉手納基地に着陸したF-35Bのニュース(NNN)を見るに、RAMシートを剥がさなくとも、常時アクセスパネルとして使用出来る箇所であることは間違いない。




F-35Bのアクセスパネル(機首下方左側)とボルト部拡大図
(©Orbit Seals)




アクセスパネルが脱落したF-35A戦闘機




パイロット用のはしご格納部にもアクセスパネルと同じ表記が示されている
(©Orbit Seals)
FWD MASTER LATCH (7/32 HEX)と、AFT MASTER LATCH (7/32 HEX)との記載があり、7/32インチ六角レンチで、普通に取り外せそうである。



次にF-35Bの機体の所々に、ファスナーボルトを見る事が出来る。これは、YF-23やF-22と同じである。しかし、F-35Bが他の機種と異なる部分は、ファスナーボルトの穴を更に埋めるボルトが存在していることである。

下記に例として示すのは、F-35B 機体上部のファスナーボルトである。斜め横から見ているので、ボルトの公差等が良く分かる。拡大すると、ボルトの穴がそのまま放置されている物と、穴を埋めている物がある。穴を埋めているボルトは、より小さなボルトが入っており、中心の穴形状からすると、六角レンチで固定できると見られる。



F-35B 機体上部のファスナーボルト(©Orbit Seals)



F-35Bのファスナーボルト拡大図(©Orbit Seals)


ファスナーボルトは、より小さい薄い灰色のボルトを内包することで、ボルト穴の陥没した隙間を塞ぐことが出来る様だ。小さいボルトでふさがっている物もあれば、全く無い物、あるいは、多少斜めになって歪んでいるもの、ボルトが割れているものが上記の写真から分かるだろう。


何故、ボルト穴を埋めるためのボルトが入っているものと入っていないものがあるかは不明だが(ミッション時には埋めるのだろうか?)、より高いステルス性能を得るために、YF-23やF-22にはない、新しいファスナーボルトの仕組みが取り入れられた様である。

F-35Bに使用されているボルトの様々な条件を映した図が下記である。
通常のボルト、高ステルス性のボルト、その上からRAMを塗布しているボルトの3種類を映しており、F-22に比べてバリエーションが増えたのではないだろうか。



F-35Bにおける3種類のファスナーボルト(©Orbit Seals)






5.ステルス戦闘機のファスナーボルト比較






ステルス戦闘機のファスナーボルト比較(©Orbit Seals)


今までの情報を基に、上記にステルス戦闘機のファスナーボルト比較をまとめた。なお、F/A-18Eは、別途筆者が撮影した画像を用いており、純粋なステルス戦闘機ではない。

これらを比較すると、YF-23は解像度が低いものの、F-35B、F-22、YF-23はほぼ同じ様な構造に見える。特にF-22とF-35Bは、製造会社が同じロッキードマーチンのステルス戦闘機であり、構造は似ていてもおかしくはない。

F/A-18Eと他が異なるっているのは、F/A-18Eのボルトは、ドライバーとの接続部である6つの波打ち形状が機体表面に露出していることである。

YF-23は解像度が低いので不明として(ただし、機体表面への露出部は丸穴形状の模様)、F-22もF-35Bのボルトも、機体表面と同じ高さになる部分は、新円の丸穴形状となっている。

一方で、F-35Bのボルトの穴の内部、F-22のドライバーやボルト穴の内部を見ると、銀色に光沢のある金属の歯型が見える。F/A-18Eの様にドライバーとの接続部は6つの浪打ち形状となっていると見られる。

つまり、ボルトを締め付けるためのドライバー・器具は、従来戦闘機とほぼ同じ物を利用しているが、使用しているファスナーボルト自体は、ステルス機特有の物になっている様である。そして、このF-35BやF-22に使用されているファスナーボルトは、機体表面と同じ高さにあるボルト穴入口は新円形状であり、内部に存在する6つの歯型によって、ドライバーの接続部とかみ合って回転すると考えられる。

F/A-18Eでは入口から奥まで連続的に6つの波打ち形状の歯型が入口から内部奥まで続いているが、F-35BやF-22では、入口はバカ穴でドライバーをそのまま遠し、内部の金属の歯型によってかみ合い、ボルトが回転出来る。

これは、レーダー反射の観点から、機体表面にF/A-18Eの様な不連続な形状を晒すのを嫌ったためであろう。そして、F-35Bは、そのボルトの穴さえもより小さなボルトによって内部を埋め、六角レンチ?で締めて固定出来る新型のファスナーボルトが使用されていると見られる。

また、サンプル数が少ないが、F/A-18に比べてF-35BとF-22側のボルトは、頭部のサイズを大きく取ってる様に見える。中心のボルト穴に対して約3倍以上のサイズを持っている。F/A-18のものは、約2倍以下であろう。この辺も低RCSを獲得する設計と何か関係があるのだろうか。


しかし、この穴埋めボルト、F-35Bの機体上部だけではなく、ジェットエンジンの空気取り入れ口手前の機首下面にも使用されている。機体上面に使用されていた物は、写真で確認した限り、斜めになっていたり、外れそうになっていたり、実際に外れていたり?、クラックが入っていたりするものも見受けられた。

飛行中に取れないか非常に心配になったが、空気取り入れ口の手前に配置するということは、固定方法には余程自信があるのだろう。それとも、表面にRAMを塗ったプラスチックとかですかねぇ・・・?





空気取り入れ口手前に使用されている穴埋めボルト部位と拡大図





    







6.F-35の実際のメンテナンス




RAMシートを施工する整備員



RAMシートが部分的にカットされて機体の地肌が見えている


F-22の項目では、RAM材を削って落としている写真を示したが、F-35Bのメンテナンスは上記の写真の様に実施されている。機体の地肌に当たる緑色サーフェイサー色の上からRAMシートを貼ることで、ステルス性を担保している。

2枚目の画像は、RAMシートが部分的にカットしている写真であり、メンテナンス用の取り外し可能なボルトの部分を切り取っている様に見える。やはり大変な作業に見えるが、F-22の様に材料を削り取るよりかは、遥かに整備員にとっては健康的かつ労力が少なくなったであろう。

しかし一方で、仮にこれまでの筆者の考察が正しければ、F-35Bのファスナーボルトは、これまでよりも特殊な物を使用しており、トルク締め付け後に蓋をする工程がある場合には、こちらの作業は単純に2倍になると見られる。




References

[1] Joint Base Elmendorf-Richardson, 
[2] F-22 Jet Fighter Maintenance on the Fligh, Youtube
     http://www.youtube.com/watch?v=uFAyc1SHOGg
[3] LO technicians keep pilots undetected, alive
     https://www.f-22raptor.com/index.php?nid=461
[4] Programma F-35, 
[5] http://twitter.com/54_98554/status/654952371659804672
[6] 0テレNEWS24, 嘉手納に暫定配備のF-35、パネル落下か, 2017年11月30日 19:11

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