飼い主さんと猫の関係
猫が飼い主さんと一緒に寝る理由は、飼い主さんと猫との関係が大きく影響すると考えられます。「猫は家に付く」といわれますが、ご飯をくれたり世話をしてくれたりする飼い主さんのことを猫は、自分を守り愛してくれる保護者だと思っています。本来、猫は自分の縄張り(自分の世界)をとても大事にする動物です。そのため、自分の見知らぬ世界に行くことは苦手なのです。自分の慣れ親しんだ、自分の世界だと思っている場所にいることが幸せであり、飼い主さんはその世界を構成する大事な存在です。
筆者は保護活動をしており、目も開かないうちに捨てられてしまった子を何十匹も育てましたが、自分の親の姿を見たことがない子は筆者に対して母猫のように甘えます。
また、自分の親の姿を知っているであろう猫たちも、最初こそ警戒することもありますが、面倒を見る筆者を親猫と同等の保護者であると思っていることは、甘えてきたり自分の要求を伝えてきたりするさまを見るとよくわかります。猫と飼い主さんの関係は、人でいうと子どもと親に近い保護者(大人)の関係に似ているといえるでしょう。
不妊後は終生、子どもの心を持ち続ける
避妊・去勢術を行った後は、猫は終生、子どもの心を持ち続けます。大人の猫として第一にしなければならない繁殖行動をしなくてもいいからです。自分の縄張りを守らなくてもいいですし、メスをめぐって争う必要もありません。最大限の警戒心を払って子育てする必要もなくなります。
不妊手術後もいつまでも子どもっぽく、甘えっこなのは特にオスに多い傾向です。それに比べてメスは避妊してもクールに見える子もいますが、やはり避妊後のほうが甘えっこになることは多く見られます。
筆者は何度か妊娠した母猫を保護しましたが、子育てが終わった後に避妊手術を行い、子育ての必要がなくなると、それまでおもちゃなどにもあまり興味を示さなかったのに遊び始めたり、甘えてくるようになったりします。子猫を育てるという緊張感から解き放たれたせいからなのでしょう。
猫が飼い主さんと一緒に寝る理由
猫が飼い主さんと一緒に寝るのが好きな理由を具体的に解説します。飼い主さんのそばが一番安心だから
前述したように猫は飼い主さんを保護者だと思っています。慣れ親しんだおうちにいれば、寝るときも普段からあまり警戒したりしないでしょうが、やはり寝るという行為は起きているときよりも危険に対する対処が遅れるので、寝る場所は安心できる場所でなくてはなりません。そうなると、自分を守ってくれる飼い主さんのそばは一番安心して眠れる場所ということになります。母猫に甘えている気分になる
子猫のときは母猫の柔らかいお腹に抱かれて、ぬくぬくと眠ります。飼い主さんを保護者だと思っている猫は母猫に甘えたときと同じように飼い主さんに甘え、一緒に寝たいと思っているでしょう。
筆者は捨てられた子猫たちの面倒を年中見ていますが、十分に成長するまで母猫に育ててもらえなかった子たちは、母猫に甘える欲求が強いようです。大人になっても、飼い主さんのお腹などの柔らかい部分を押しながらお乳を吸うように吸い付いてくる行為がよく見られます。これは、大きくなるまで母猫に育てられた子はまずしません。
家族となった猫の中には、ペットショップやブリーダーからであろうと、保護猫であろうと自然に乳離れするまえに母猫から引き離された子もいるはずです。十分に母猫に甘えることができなかった欲求を、飼い主さんと一緒に寝ると思い出し、子猫の気分になってまるで母猫に甘えるような気持ちで一緒に寝ているのです。
寝心地がいいから
猫は居心地いい場所を自分で探して、そこに寝ます。やわらかいお布団やベッドは猫にとっても寝心地がいい場所。しかも飼い主さんの匂い付きですから猫は心地よく寝ることができるのです。温かいから
夏の暑いときはお布団に潜り込んでくる子はほとんどいませんし、飼い主さんと一緒に寝る率は寒い季節に比べるとかなり低くなります。猫は寒さが苦手です。お布団は猫にとっても暖かい場所ですから、特に寒いときは飼い主さんと一緒に寝ることが多くなります。飼い主さんと一緒に寝るときは飼い主さんを湯たんぽ代わりにしているという意味もあるでしょう。飼い主さんも猫を抱っこして寝ると暖かい思いができますので、暖房代わりにしているのはお互い様ですね。