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【放送芸能】

権力と闘う姿を描く 映画「金子文子と朴烈」 主演チェ・ヒソ「国籍は重要でない」

「金子文子と朴烈」の一場面。法廷に立つ金子文子(チェ・ヒソ)

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 朝鮮人アナキスト(無政府主義者)の妻となり、23歳で獄死した大正時代の日本人女性思想家を描いた韓国映画「金子文子と朴烈(パクヨル)」(イ・ジュンイク監督)が、16日の東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムから、順次公開される。主人公の金子文子を演じたチェ・ヒソ(32)は「100年近い過去の時代に自由や平等について考え、行動した女性がいた。国籍は重要ではなく、その姿と精神を知ってほしい」と話す。 (酒井健)

金子文子への思いを語る主演女優のチェ・ヒソ=東京・渋谷で

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 貧しい生い立ちの文子(チェ)は、アナキスト朴烈(イ・ジェフン)の「犬ころ」という詩に共感。同志となり、同棲(どうせい)を始める。しかし、危険思想者としてマークされていた二人は一九二三(大正十二)年、関東大震災の直後、警察に拘束される。皇太子暗殺を企てたとして大逆罪の疑いで起訴され、裁判を通じて主張を展開する。

 作中で、文子は判事に「人間はみな平等。馬鹿(ばか)も利口も、強者も弱者もない」と訴える。チェによると、文子は貧しく、両親にも愛されなかった女性。つらい過去が「虐げられる人のために生きる。権力に対して自分の意思を貫く」精神の柱になった若き思想家だ。日本の観客には「反日映画と誤解されるかもしれないが、国籍を超えて権力と闘った文子と同志たちに注目してほしい」と望む。

 韓国では二〇一七年に公開され、二百三十五万人の動員を記録した。チェは大ヒットした理由を「二人は韓国でもあまり知られていなかった。『こんな人たちがいたのか』という驚きと感動があった」と説明する。韓国政府は昨年、文子に「建国勲章」を授与。「百年近く前の人に今、勲章が出たのは、この映画の影響だと言う人も多い」。

 ソウルで生まれ、小学二年から卒業まで大阪市で過ごしたチェは、日本語も流ちょう。文子の手記や裁判記録も日本語で読み込んだという。映画は二回目の主演だが、本作で文子を演じ「役者として強い影響を受けた。主体的に生きる女性に魅力を感じるようになった」と話す。

 日本はチェにとって「考え方や生き方を形成する時期に、幸せに暮らした特別な国」。日本の映画もよく見るといい「ぜひ出演してみたい」とアピールする。

 一月に韓国で公開された大森立嗣監督の「日々是好日(にちにちこれこうじつ)」を「毎日の価値を語ってくれる映画」と気に入っている。茶道の先生役として出演し、昨年九月に他界した樹木希林を「とても好きな役者さんでした」といたんだ。

 

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