米運輸省(Department of Transportation:DoT)が2016年9月20日(現地時間)、新たな政策として、「連邦自動運転車政策(Federal Automated Vehicles Policy)」を発表した。米国では、自動運転技術が目まぐるしく変化する中で、それを規制する法律が州ごとに異なるため、こうした状況を解決すべく取り組みを進めていく考えだ。
今回のガイドラインにおける重要な点は、自動運転車の分野が、連邦規制機関の直接管理下に置かれることになるというところだ。自動車メーカーは、これまで長期間にわたり、自社の自動運転車を“自前で承認”するという特権を保持してきたが、米運輸省がこの“特権”を取り上げることになる。自動車メーカーは今後、米運輸省の“お墨付き”を得なければならなくなる。
米運輸省長官のAnthony Foxx氏は、「自動運転車は、ソフトウェアが自動車を操作することから、運輸省の規制対象となる」と述べている。
さらに規制当局は、自動車メーカーに対し、高度に自動化された自動車の安全性の評価方法について示した安全性評価報告書を、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)に提出することを求めている。
自動車メーカーは、今回の米運輸省のガイドライン発表を、慎重ながらも楽観的に受け止めているようだ。
Ford Motor(フォード)とGoogle(グーグル)、Lyft、Uber、Volvo Cars(ボルボ)の5社が共同設立した利益団体「Self-Driving Coalition for Safer Streets(安全な道路のための自動運転連盟)」で、代表を務めるDavid Strickland氏は、今回の米運輸省のガイダンスドラフトについて、「自動運転車の導入に向けて国家的枠組みの基盤を構築していく上で、重要な一歩だといえる」と述べる。
Strickland氏は、記者会見の中で、「連邦ガイドラインは自動車メーカーや車載部品のサプライヤーにとって、厄介な存在になるのではないか」と問われると、「今回のガイドラインは、自動運転車の品質保証を確立するための基礎となるだけでなく、関係当局にとっては、自動運転車に関する知識を深めることにもなる。また、われわれは現在、116ページに及ぶ連邦自動運転車政策の中で概説されている詳細部分について、見直しを進めているところだ」と答えている。
米運輸省のガイドラインは、まだ正式な法律ではないが、将来的に議会に提出される規則の基礎となる。同省は今後、60日間にわたり、パブリックコメント(意見公募)を実施していく。ガイドラインについては、技術開発の進展に伴い、DoTとNHTSAが、必要に応じて毎年更新していく予定だという。
新しい連邦自動運転車政策により、まだ答えが出ていない数々の問題の解決に向けた取り組みが進んでいくのではないだろうか。政府当局者は、自動運転車に関する政策報告書の中で、以下のように述べている。
「現在も、重要な懸念事項が新たに出現している。『自動運転車は、いずれ人間のドライバーを完全に置き換えることになるのだろうか』『自動運転車の製造にあたり、どのような倫理的判断が求められるのか』『劇的な変化により、どのような社会経済的影響が生じるのか』『自動運転車は、プライバシーやセキュリティの本質を破壊することになるのか』などの疑問点が挙げられる」
しかし、技術的観点から見た最大の課題は、自動運転車のテストだ。
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