確定申告時期、フリーランス・個人事業主の方が聞きたくないワードの1つに「支払調書」が入るだろう。
この時期になると「取引先から支払調書を貰えなくて(届かなくて)、確定申告書が作れない」、「支払調書を確定申告書につけなければならないの?」など支払調書に関する話をよく聞く。
そして、支払調書集めが忙しく、本業がおろそかになってしまう方もたまに見かける。
そもそも、支払調書ってなんなの??
フリーランスの方ならば「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」、不動産の貸し付けをしている方は「不動産の使用料等の支払調書」をよく目にするのではないでしょうか。
そもそも支払調書とは、企業が税務署に提出する法律に決まった資料のこと。
法定調書と言われる書類の1つなのです。
この支払調書は、原稿料やデザイン料、印税、不動産の賃料など、法律で決まった取引をしたときだけ発行されます。
これらに該当する取引をした企業は、「この1年間、誰に、なにを、いくら支払い、いくら源泉徴収しました」と翌年1月31日までに税務署に提出しなければなりません。
その報告書類が、支払調書なのです。
支払調書は、「この1年間、誰に、なにを、いくら支払い、いくら源泉徴収しました」と税務署に報告するための書類。
そのため、これをもとに帳簿を作成している方もいらっしゃるようですが、支払調書はフリーランスや個人事業主に必ず送られる書類なのでしょうか?
答えは「NO」です。
「支払調書は、『この1年間、誰に、なにを、いくら支払い、いくら源泉徴収しましたよ』と伝えるための書類でしょ?」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、それは税務署に対してだけ。
フリーランスや個人事業主へは、その発行自体義務づけられていません。
あくまでも、今までの商慣習やほかの企業が作成しているから、事業取引上重要な相手だからなどの理由から「所得税の確定申告をするときに大変だろう」と源泉徴収義務者である企業が好意で発行しているものなのです。
また、企業が税務署に発行しなければならない支払調書は、それぞれの取引内容ごとに発行すべき金額基準が設けられています。
たとえば、原稿料やデザイン料、印税であれば「1年間に支払った合計額が5万円を超える場合」、個人事業主に対する不動産の賃料や権利金等であれば「1年間に支払った合計額が15万円を超える場合」の時だけ支払調書を作成すればよいのです。
そのため、源泉徴収義務者であっても「一定金額以下の取引については、そもそも支払調書を作成していない」なんて企業もよくあります。
さらに、最近では、支払調書の発行に人件費や郵送代がかかるため、フリーランスや個人事業主向けに支払調書の発行を行わない企業も増えているようです。
今までのように支払調書を待って帳簿を付けるようでは、所得税の確定申告ができなくなってしまいます。
今後は、届かない事を前提として、日々の帳簿をしっかりと整え、送られてきた支払調書は「帳簿チェックの目安」にするぐらいの感覚の方が良いかもしれませんね。
ちなみに日ごろから取引をする際には、源泉所得税の扱いを事前に明確にしておき、できれば、取引契約書に報酬や料金を請求する際の源泉所得税の扱いについて、双方で事前に合意しておくことをお勧めします。
その上で、請求書に取引金額とは別に源泉所得税額を記載して作成・送付しておけば、支払調書を待たなくても帳簿をしっかりと付けられますし、万が一のトラブルも予防できますね。
【関連記事】
・「源泉所得税のある請求書」の発行の仕方と取引の仕訳方法
・請求書に書く? それとも書かない? 源泉所得税の扱い方とは
さて支払調書は確定申告書に添付する必要があるのでしょうか?
こちらも答えは「NO」です。
私が企業の経理職をしていたとき、フリーランスや個人事業主の方から「確定申告書に支払調書を添付しているから、送ってくれなければ困るよ」と連絡を受けることがよくありました。
そういう場合は、もちろん送付しますが、本来、所得税の確定申告書には「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の添付は必要ないんです。
たまに、税務署職員も間違えるのか、確定申告をする際に「支払調書を、確定申告書に添付するように」と指導される場合があると聞きます。
そんなときは「支払調書は、添付しなくていいんでしょ?」「支払調書は添付書類じゃないよね。」と優しく、そしてしっかり伝えましょう。
法律で決まっていない書類をあえて税務署に提出する必要はありません。
また、確定申告書に添付されても、税務署は対応に困ってしまうと思います。
とは言っても、数多くの企業が支払調書を送ってくれます。
送られてきた支払調書は、封筒などに入れほかの帳簿と同様に保管しておくことはお忘れなく。
【関連記事】
・青色申告に必要な帳簿(複式簿記)のつけ方と帳簿・領収書の保存期間
・どこが違うの? 支払調書と源泉徴収票
確定申告の準備前に支払調書を必死になってかき集めている方がもしいらっしゃれば、この記事を読んで「不要なんだ」と思ってもらえれば嬉しいです。
そして支払調書を集める労力を、事業成長に向けていただければ幸いです。
なお、フリーランスや個人事業主でも支払調書を発行する側になる可能性があります。もしかして?と思った方は、ぜひこちらもご確認ください
・「どうすればいい?フリーランスの外注問題。支払調書は発行すべきか?」
・「経営者なら知らないとヤバい!支払調書の作成方法」
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この記事の執筆者
一般企業で働くサラリーマン。経理職を18年経験したのち、営業職に異動した2児の父。今までの経験と保有する資格を生かして、個人事業主のみなさまに役立つ税金、会計ネタをバシバシお届けします。
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