精神科医・高木希奈が提唱する“心の愛撫”「女性にとってセックスは、愛情の確認作業」
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――昨年あたりから「女医が教えるセックス本」が大ブームとなりました。こうしたブームの要因はいったい、なんなんでしょうか?
「単に子供を残すとか、快楽を求めるだけでなく、現代ではセックスに心の結びつきを求めている人が多いような気がします。震災や経済的な不況もあり、人と人とのつながりとか、絆といったものが重要視されていることも無関係ではないと思います。女医ブームは、私の大学の先輩でもある西川史子先生が道を築かれたのが大きいと思います」
――高木先生も“女医ドル”といわれていますが。
「いやー、アイドルなんて年ではないので、こっぱずかしいばかりです(笑)。これまで精神科医で表に出られていたのは香山リカ先生ぐらいだと思うんですけど、香山先生は真面目路線。私は性格上バラエティ路線なので、親しみやすい女医さんだと思っていただけるとうれしいです(笑)」
――著書では主に「セックスと心」の関係性について説いていますが、そこを重要視されるのはなぜでしょうか。
「子孫を残すという前提を除外すると、セックスをする目的は、快感を得ることです。しかし、ただ快感を得るのであればひとりでも可能ですよね? けれど私はセックスにはひとりで味わう快感とは違う、ふたりでしか得られない快感があると思っています。例えば行為中に彼女が見せる恥じらいであったり、彼氏が示す優しい気遣いといった心ある行為が、信じられない官能的な心地よさを呼ぶことがあります。つまりセックスの快感とは、体と同時に心を愛撫されることで初めて得られるという考え方です」
――やっぱりひとりよがりではダメなわけですね。
「男と女では欲情するポイントが根本的に違うんです。一般的に男性は右脳が優位で、女性は左脳が優位といわれています。右脳は“感性脳”と呼ばれていて、つまり男性は視覚による刺激を受けやすい。一方左脳は“言語脳”と呼ばれ、女性は、言葉による刺激を受けやすい。AVなんかはまさに男性の視覚に訴えるようにできていますし、女性が好む韓流ドラマは、ロマンチックな雰囲気のシーンや台詞であふれていますよね。だから男性が自分の欲求をグッと我慢してロマンチックなムードをつくれば、女性の性欲スイッチは入りやすくなるんです」
――なるほど。
「基本的に男性は“種をまく”という本能があるので、感情抜きでもセックスができますが、女性は性欲と感情を切り離せません。これはオキシトシンというホルモンの影響で、別名“絆ホルモン”と呼ばれています。女性がセックスに求めるのは、“相手が自分を捨てない”という確信で、手間のかかった前戯や後戯といった、自分は相手にとって大切な存在であり、愛されているんだといった確証なんです。加えて『愛しているよ』といった言葉。女性にとってイク、イカないよりも、こういった愛情の確認作業のほうが重要だったりするんです」
――例えば、心理的に女性がセックスのときイキやすい男性像みたいのってあるんですか?
「イギリスの進化学者トマス・ポレットとダニエル・ネトルが行なった調査があるんですけど、彼らが08年に男性パートナーがいる女性1534人にリサーチした結果、彼女たちがオーガズムを得られる頻度は、パートナーの収入や銀行預金に比例しているのがわかりました。出産や育児に長い時間と労力が必要となる女性は、自分と子供を養ってくれる相手じゃないとイキづらいそうです」