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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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回復+援護=?

「なんか元康さんのペースに慣れてきました……諦めませんか?」

「……そうだな、どんどんループ前の尚文が被せた化けの皮が剥げて来てるみたいだしな。きっと将来、尚文が育てるはずのフィロリアルを探してるんだろ」

「ですぞ! 俺はお義父さんの娘であるフィーロたんと出会う為に日夜努力しているのですぞ」


 ですが今回俺が買いに行くのはフィーロたんではありませんぞ。

 そう! ユキちゃん、コウ、サクラちゃんですぞ。


「お義父さん達を手早く高Lvにする為にフィロリアル様達に協力してもらうのですぞ」

「ああ、勇者同士は反発するがその仲間はその限りじゃない。パワーレベリングをするんだな」

「冒険の醍醐味を台無しにする行為ですが、致し方ありませんね」

「尚文を育てるのに必要だろうしな」


 錬と樹はお義父さんの方を見ますぞ。

 友好的な視線ですな。


「では私はどうしたら良いのだ?」

「エクレールさんは……」

「一応、元康がフィロリアルを育てるまで尚文と一緒にいれば良いんじゃないか?」

「おや? 錬とではないのですかな?」

「何故、俺が一緒にいなければならない」

「錬は将来、エクレアと一緒にいた覚えがありますぞ」


 錬とエクレアが顔を見合せますぞ。

 それから首を傾げています。


「フィロリアル様の噂話だと、錬はエクレアの事を好いていると聞いていましたが気の所為でしたかな?」

「え? 錬の将来の恋人って奴!?」


 お義父さんが楽しげに食い付きました。

 逆に錬はエクレアを見て目を細めております。

 嫌なのですかな?


「……俺がか?」

「何故私がアマキ殿と恋仲にならねばならん」

「経緯は知りませんな。お義父さんの管理する領地に俺が行った時には既にそんな関係でしたぞ」


 見た感じ錬は尻に敷かれているようでしたな。

 錬も満更でもない感じで真面目にエクレアの命令に従っていた覚えがあります。


「きっと色々とあるのではないですか?」

「便利な言葉だね。元康くんの話が本当なら、ループする前の通りに付き合ったら?」

「冗談じゃない」


 錬は不快そうに言い放ちましたぞ。


「せっかくだが私も色恋に現を抜かす状況では無い。仮にそれが真実だとしても周りが間違って認識していたのだろう」

「同意だな」


 おかしいですなー。

 ま、気にしてもしょうがないですな。

 これもいろんな変化なのでしょう。


「そうだな、この中ならば盾の勇者であるイワタニ殿と同行するのが最善だろう」

「まあそうだよね。エクレールさんって真面目そうだし、恋愛とかは二の次だよね」

「そう言われると不服だが、否定しようがない」


 何やら賑やかになった様な気がしますな。

 しばらくはLv上げですが、冒険の旅の始まりですぞ。


「シルトヴェルト……僕のゲーム知識だと来れない地域ですね」

「俺も似たようなモノだ」

「ゲームじゃなくて現実なんだよね……」


 お義父さんの言葉に錬も樹も頷きますぞ。


「ゲーム知識を頼りに魔物を探しに行ったら危なそうだな」

「ですね。何も敵は魔物だけではありません。エクレールさんが体験した奴隷狩りと言う話もあります。人間である僕達は危険かもしれません」

「ハハハ、フィロリアル様が育つまでの間、みんな宿で休んでいるのはどうですかな?」

「引きこもっていると言うのもどうかと思うけど……」

「なら元康と一緒にエクレールがLv上げに行って来い。二人なら多少は安全だろうし、それで良いだろう」


 おや? 錬の言葉にお義父さんが頷いております。


「良いね。フィロリアルを買うのにそんなに時間が掛らないなら孵化までの時間、エクレールさんのLvを上げてもらおうよ」

「私はクラスアップ済みであり、多少腕に覚えはあるが……」

「クラスアップ?」


 この時点でお義父さんは知識があまり持ち合わせておりません。

 後で色々と説明する必要があるでしょうな


「さて、そういえば錬、樹」

「なんだ?」

「なんですか?」

「勇者の武器の強化方法に秘密があるのを自覚していますかな?」


 俺の問いに錬と樹は深く考えてから頷きました。

 今回の二人はスムーズに話が通って楽ですな。


「あくまで可能性としてしか見ていないが、俺の知る強化方法とは別の物があるのか?」

「元康さんの武器が特別仕様では無いのでしたら、あると思うしかないですよね」

「未来ではNPCの力を宿しているとか言ってましたぞ」

「そう思いたくもなる程の強さだったぞ」

「ええ」

「残念ですが違いますぞ。錬も樹も俺も……自らの信じた強化方法を盲信した所為で強さの限界にぶち当たり、後悔する事になるのですぞ」


 ゴクリと錬と樹は唾を飲みましたぞ。


「俺は?」

「そこを打破したのがお義父さんですぞ。お義父さんの言葉が無ければ俺は弱いままでしたでしょうな」

「へー……どんな秘密があるの?」

「色々と複雑ですな。今すぐ教えても良いですが、ゆっくりと腰を落ち着けてからの方が良いと思いますぞ」

「長くなるのか?」

「これまでのループで錬と樹は一度足りとも出来た試しはありませんな。出来たのは俺同様、最初の世界で大きな挫折を経験してからですぞ」

「大きな挫折……ある意味似た様な経験をしたな……」

「そうですね。元康さん、わかりました。どんな事であろうとも、あんなことが出来るのなら信じ切って見せましょう」

「じゃあ、今日宿泊する予定の宿でも決めてから、出来る限り問題を起こさない様に行動しようか」

「最悪、お義父さんが盾を掲げて盾の勇者を自称すればどうにかなるのではないですかな?」

「凄く……危なそうです」


 何やらお義父さんが独特のテンポで答えました。

 何の真似なのでしょうか? 俺には理解できませんな。


「僕達がやったら殺されそうですよね。宗教的な意味で」

「そうだな、あの国の二の舞は御免だ」


 そういえば前回シルトヴェルトに来た時はキールがいましたからな。

 人間しかいないのと亜人を連れているのとでは大きな違いがあるのでしょう。


 それからエクレアの武器を適当に買いに行くついでに宿を決めました。

 錬と樹は警戒を強める意味を込めて宿で休む事になりました。

 エクレアは念の為にと入り口の近くで椅子にもたれ掛かる形で休むらしいですぞ。


「では出発前にエクレアの傷を治しておきましょう」


 安めの装備を着用していますが、先ほどまでのエクレアの格好は奴隷と良い勝負でしたからな。

 何だかんだで傷が残っていますぞ。

 俺は意識を集中して回復魔法をエクレアに施しました。


 みるみるとエクレアの傷口、古傷を含めて治って行きますぞ。

 おや? 錬も樹も興味ありげに見ておりますな。


「うむ、すごく調子が良いぞ。キタムラ殿は相当な魔法の使い手なのだな」


 エクレアは治った傷跡に触れて言いました。

 そう言われると照れますな。

 お義父さんから教わった魔法なので、俺も鼻が高いですぞ。


「うわ……回復魔法って実際に見るとこんな風に治るんだ。ちょっと感動」

「俺よりもお義父さんの方がこういうのは得意ですぞ」

「そうなんだろうけどさ、俺はまだ魔法なんて使えないし」

「防御担当で回復と援護か……盾職と見るよりもハイブリットの援護職……僧侶と見れば良かったんだな」

「そうですね。未来の僕達は尚文さんを内心馬鹿にしていたのかもしれませんが、援護職となれば別ですよね」

「違いますぞ。お義父さんは防御において右に出る者はおりません。最大強化されたお義父さんなら俺の攻撃など耐えきれますぞ」

「アレを耐えきるのか!? あの皆殺しと建物を一つ焼き焦がしたアレに!」


 そんなのお義父さんなら余裕ですぞ。

 俺の攻撃など缶でも蹴った様な音がするだけでしょうな。


「錬、ちょっと思い出したくないからやめよう」

「そ、そうだな。悪夢を見そうだ」

「ええ……今夜寝られるか、別の意味で不安です」


 先ほどからお義父さん達がテンションを落とす時がありますな。

 特定の話題でもあるのでしょうか?


「気にしてはこの先、生き残れませんぞ!」

「そうなんだろうけど……夢だけで生きていけないんだよね」

「ああ……俺も強くなりたい」

「いろんな意味で、ですね」

「でも元康くんを見てると、強くなるんじゃなくて大事な物を失って行くような気がする」


 その言葉に錬と樹が微妙な表情を浮かべております。

 今回のお義父さん達は仲が良いですな。

 がんばった甲斐がありますぞ。


「では行ってきますぞ。待っていて欲しいですぞ」

「元康くんは置いて行っても追いついてくるでしょ」

「きっと何処までも追いかけてきそうだ」

「僕達は逃げ切れないでしょう。裏の世界を知る殺し屋のボディガードに守られる主人公はこんな気持ちなのかもしれませんね」

「あ、わかる。その例え上手いね」

「的確過ぎるな。しかし……味方なのが唯一の救いだな」


 お義父さん達は楽しげに談笑を始めました。

 エクレアはそんな様子を真面目な感じで、廊下に意識を向けたまま黙って見ておりましたな。

 俺は手を振り、ポータルでユキちゃん達を購入しに出発したのですぞ。

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