モリ＠Travelbook

柴田「かつての福音主義フェミニズム。「清らかな存在である女性に選挙権を」。教会と女性は資本主義から取り残された人たち。資本主義批判と結託して、女性の地位向上を目指した」 二村「「男と違って、売春婦を私たちは買ったりしない」と言った時点で女性の内部で分裂を起こしている」

千葉「ドゥルーズ＝ガタリ風に言い換えれば、脱コード化に抵抗する再コード化の拠点として、家族主義的なものや清く正しい道徳（生殖）を持ち出している、と。交換不能な、資本主義に侵されない身体の希求。近年のフェミニズムは、再コード化によるバックラッシュが起きている、と見ることも出来る」

千葉「捉えようとしても捉えられないブラックホールのような穴。母親がぴったり一体化している状態＝穴がない。母の代わり＝言葉。言語能力は穴と関係。穴の周りをぐるぐる巡り続ける主体性を精神分析は考える。言葉を言えなくなるような秘密＝石を立てる。「ただ物質として居る」というだけのあり方」

千葉さんの「穴」と「石」の対立概念は面白いなー。世界（あるいは人間）を二元論で捉える発想はしっくり来る。

欲望会議ニコ生のメモ続き。 二村「AV女優はみんな病んでる的言説はどうかと思う。倒錯ではない、ポジティブな側面だってありうる」 柴田「二村さんの男性論では「穴」と「石」の両方があるのに、女性論になると寄り添うばかりで「穴」論が強く出過ぎる。でもヘテロのフェミニストには歓迎されがち」

受動に置かれると傷つきが起こるのは、能動＝精神／受動＝モノという構図を前提がある。「女性＝最初から受動に置かれている」というのはフェミニズムの歴史上重要な指摘だが、それを手放さずにいると本質主義に陥る、と。 「なぜずっと受動で居続けるのか？」という柴田さんの批判は理解できる。

コンビニエロ本撤去の話題。 左派フェミニズムが表現規制に反対してきたのは、アルチュセールが指摘した「規範＝国家のイデオロギー装置」の問題意識に基づき、フーコー、バトラーへと続く系譜。「どう考えても道徳的におかしい」と思える価値観自体が国家権力による構築物かもしれない、と疑う視点。

でもいまはその視点がすっかり忘れられている。PTA的な、コンビニエロ本撤去賛成＝フェミニズム、という図式では全くなかったはずなのに、と。

欲望会議ニコ生のメモ続き その２。 千葉「心の穴のために愚かな恋愛を繰り返してしまう女性にアドバイスする際には2つの戦略がある。良い恋愛・良いセックスへの転向（二村的立場）か、愚行権の行使と肯定的に捉える（柴田的立場）か。穴戦略の治療と、石戦略の治療」

千葉「人々が戦争状態に陥らず共存するために、規範は当然必要。だから二村さんは「規範が大切だ」と自身の立場をはっきり言うべき。規範は単に抑圧を生むだけのものではなくて、人間は規範との関係で新たな欲望を形成する（わざと規則を破る等）。純粋欲望状態などというものはない」

柴田「米国の学生寮では「酒を飲んだらセックスの合意は成立しません」という段階まで来ている。かつては抑圧解放の言い訳（愚行権）にできたものが、今やレイプの根拠（自己決定の不成立）にすらなってしまう。比喩的に言えば、失敗した＝中身が気に入らなかったからと、福袋を返品できてしまう時代」

千葉「セックスを巡って完全な合意・自己決定を重視することは、リベラルを自認する人が採りがちな立場。でも同じ人が、経済の文脈になると自己責任化する社会を批判している場合が多い。性規範においてはグレーゾーンを排除した自己責任論を求めてしまっている。一貫していない自覚は持って欲しい」