二度目の人生は艦娘でした   作:白黒狼
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 誰か、誰か資材をくれええええええええ!!!



コンゴウ、説明を受ける

 

「さて、先ずは貴女の置かれた状況の確認をしましょうか」

 

 響の用意した椅子に座りながら少女……鈴音七海は真っ直ぐな姿勢で〝私〟を見つめてきた。

 先程まで笑あっていた雷と響も、怒っていた暁も真剣な顔で少女の後ろに控えている。

 

「貴女は大破して轟沈寸前の状態だったところを私の艦隊の潜水艦の娘が発見して救助しました。今は所用で秘書艦の電と共に外出中だから、後でお礼を言っておくといいわ」

 

「……そうだったんですか、ありがとうございます」

 

 七海にお礼を言うと頭を下げる。

 轟沈寸前だったのならば本当に危なかったのだろう。命を救われた事への感謝と、〝彼女〟の思いを無駄にしないですむ事への安堵に自然と笑みが浮かんでくる。

 

「困っている時には助け合わなきゃね。……さて、貴女に関しての質問に移りたいのだけれど、いいかしら?」

 

「あ、はい」

 

 彼女が質問に移ると、背後の暁が机の上にメモ用紙を広げるのが見えた。提督の行動をしっかりと見て、何をするべきかをちゃんと理解している。抜けているところがあると響と雷は言っていたが、やることはしっかりできる子のようだ。

 

「まずは貴女の所属している鎮守府を教えてくれる?」

 

「はい、横須賀鎮守府です」

 

「横須賀かぁ、今の日本の要となる最大の鎮守府ね。」

 

 ふむふむ、と頷く七海と「凄い」と驚く雷と響。

 私の所属は横須賀サーバーだったからそう答えたのだが、もし、この世界と私の世界が別物だとしたら私の存在自体の記録がこの世界にはない事になる。このまま私の情報が横須賀に伝わってしまうとマズイのではないだろうか?

 

「あ、あの……」

 

「ん?どうかしたの?」

 

「私の所属していた鎮守府なんですが……その、実は提督が亡くなってもう解体されてるんです」

 

「そうなの?……横須賀の提督が変わったなんて知らせ、あったかしら?」

 

 少しばかり苦しい作り話だが今はこれ以上の考えが浮かばない。私が死んだのは嘘ではないし、何とかしてこの設定でゴリ押さなければ……。

 そんな時、救いの神が現れた。七海が首を傾げながら考えている横で雷が「あ、そういえば……」と、何かを思い出したように声をあげた。

 

「少し前に横須賀の提督が深海棲艦との戦いで負傷したから他の人に代変わりしたって聞いたわ」

 

「あら、そうなの?」

 

「ああ、思い出した。たしか司令官が会議に出席してる時にきた報告書に書いてあったね。どうも、その負傷した提督は助からなかったみたいだ」

 

「あらいけない、その書類はまだ目を通してなかったわね」

 

 雷と響の話を聞いて「しまった……」、と苦笑いする七海。

 しかし、私にとってはチャンスだ。本当に横須賀の鎮守府の前提督が亡くなっているなら、非常に申し訳ないが利用させてもらおう。

 

「私はその時に戦闘で負傷して流されたんです。一応、万が一の為に持っていた特殊な発煙筒を使用したところまでは記憶にあるのですが……」

 

「なるほど……それは大変だったわね……」

 

七海は表情を暗くすると、私の手を握りながら話を続けた。

 

「急な話になってしまったけれど、貴女の提督が亡くなって代変わりしている以上、貴女は既に横須賀鎮守府の艦娘としての権限を失っているとみていいわね」

 

「そう……なんですか?」

 

「ええ、悲しいでしょうけど、それを踏まえてこれからどうするかを決めなくてはいけないわ」

 

 小さく溜め息をつきながら椅子に座る七海に雷がお茶の入った湯呑みを差し出した。話を纏める意味でもこちらに考える時間ができたのは嬉しいことだ。

 まず、私がこれから考えなくてはいけないことは私がこれからどうなるか、である。

 

「あの……」

 

「ん?何かしら、金剛さん?」

 

「私はこれからどうなるのでしょう?」

 

「そうねぇ……解体された鎮守府の艦娘については本人の希望を遵守するようになってるから、好きな鎮守府に行くもよし、新しい提督の艦隊に入るもよし、滅多にいないけど解体を希望する娘もいるみたいよ」

 

 なるほど、ならば私は私の意思で好きな鎮守府に行けるわけだ。しかし、私はこの世界の状況がよくわかっていないし、今はこの鎮守府で詳しい話を聞くのが一番かもしれない。

 ……と、なるとまずは七海にこの鎮守府の事を教えてもらおう。

 

「私は助けてもらった恩もありますし、此処にお世話になろうかと思っています。提督、貴女さえ良ければ、私をこの鎮守府に置いてはいただけないでしょうか?」

 

 七海は目を見開いて後ろに立つ雷と響と暁に視線を向ける。

 雷達三人も驚いて目を丸くしていたが、やがて嬉しそうに頷いていた。

 

「雷達も大丈夫みたいだし、私としても戦艦である貴女が居てくれるのは非常にありがたいわ」

 

「それじゃあ……」

 

「ええ、是非この鎮守府で私達と共に戦ってくれないかしら」

 

「……はい!!」

 

 笑顔で私達は笑い合う。

 それからしっかりとした握手をして、私は正式にこの鎮守府の艦娘として暮らしていくことになった。

 

「あ、そういえば此処がどの鎮守府か聞いてませんでした……」

 

「ああ、そういえば言ってなかったわね。此処は岩川基地に所属する鎮守府よ。私もまだ着任して一ヶ月の新人提督なんだけど、よろしくね!!」

 

 

◇◇◇

 

 






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