アイテム番号: SCP-1683-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1683-JPの周辺半径500mの領域は財団フロント企業により買収され、機動部隊によって警備が行われます。現時点では地質学的探索の名目の偽装のもと、民間人の立ち入りは禁止されています。
SCP-1683-JPに侵入する場合、上下左右の反転を矯正したコンタクトレンズの装着が義務付けられています。また、同オブジェクト内での長時間の滞在は帰還時への影響を考慮し、推奨されません。
説明: SCP-1683-JPは後述する人型実体(SCP-1683-JP-1)を中心に発生していると推測される、シンガポールのラッフルズプレイスに存在する時空間異常です。この時空間異常はおよそ直径5kmの球状で存在しており、外面上は地理上に存在しているビル街との相違点は確認されていません。SCP-1683-JPの認識はこの範囲内に侵入する事で可能となります。
SCP-1683-JPの範囲内に侵入した場合、対象者は感覚機能の反転を同時に認識します。これにより、当該オブジェクトは認識上、上下左右の反転した風景である時空間となります。この影響はSCP-1683-JP内部を撮影した映像記録、並びに写真にも適応されます。
SCP-1683-JP-1は球範囲の中心点に存在する、頭部を下方とした起立状態で浮遊している意思疎通が可能なコーカソイド系の男性実体です。外見的特徴からの身元調査において、有用な結果は得られていません。球範囲内で計測可能であるHm値が1~2であるのに対し、男性実体付近では5 4~6を記録可能であることから、SCP-1683-JP-1は現実改変能力を有しており、それがこの時空間の発生の起因であると推測がなされています。
発見経緯: 2018/09/20にSCP-1683-JPが現在存在している地点において瞬間的なHm値の上昇、並びに通常値への低下が確認されました。そのため、財団の情報管理部門による調査が実施され、SCP-1683-JPが発見されました。その後、調査は情報管理部門から時空間部門へと引き継ぎが行われ、現在、当該オブジェクトは同部門内の調査チームイプシロンによって担当、管理が行われています。
以下の記録は主としてチームイプシロンによって行われたインタビュー記録です。財団側のインタビュアーは定期的に変更されている点に留意してください。
インタビュー対象: SCP-1683-JP-1
インタビュアー: 勝浦博士
<記録開始>
勝浦博士: こんにちは、SCP-1683-JP-1。気分はいかがですか?
SCP-1683-JP-1: 良いように見えるなら眼科にでも行った方がいいぜ、クソ野郎。
勝浦博士: そうですね。今の眼鏡だと報告書が見づらいですし、そろそろもう一度、視力を測定し直した方がいいかもしれません。
SCP-1683-JP-1: 皮肉も通じないのか。お堅いな、博士ってやつは。
勝浦博士: そうでないとこの職業なんかやってられませんよ。さて、この上下左右が倒置した空間は貴方が作り出したものなのでしょうか?
SCP-1683-JP-1: 知らねえ。
勝浦博士: 他の要因に心当たりがありますか?
SCP-1683-JP-1: そっちで考えてみたらどうだ、それが仕事だろ。博士。
勝浦博士: では考えた結果、あなたが起因となってこの空間が発生した前提でお話をします。2018年09月20日に、あなたはここで何を行いましたか?
SCP-1683-JP-1: 答えない。
勝浦博士: 答えない、という事はあなたがここに居たことは間違いないのでしょうね。
SCP-1683-JP-1: [沈黙]
勝浦博士: 有用な情報をありがとうございます。恐らくこれ以上は何か聞くことは難しいでしょうから、私はここで。
SCP-1683-JP-1: 待て、待てよ。
勝浦博士: 何か?
SCP-1683-JP-1: 話すよ。話せばいいんだろ。俺はここで、そう、仕事をしていた。見ろ、ビル街だからな。仕事をしていて当然だ。
勝浦博士: なるほど。それ以外には?
SCP-1683-JP-1: ない、ああいや、書類仕事だ。何枚も何枚も、不必要な書類に印を押してた。あとお茶も飲んだな、あと……(重要性の薄い供述であるため省略)
勝浦博士: なるほど。ではそれ以外には?
SCP-1683-JP-1: それ、以外には……そうだな……
勝浦博士: もうなさそうですね。詳細にありがとうございました。本日の供述は持ち帰って、参考にさせていただきます。
SCP-1683-JP-1: 待てよ、待てって、とっておきだ。とっておきのがあるんだよ。ほら、その。
勝浦博士: では私はこれで。
SCP-1683-JP-1: 待てよ! いいか、ここから離れたら死んでやる。死んでやるからな。
勝浦博士: それは困ります。……なぜそこまで引き止めるのでしょうか?
SCP-1683-JP-1: それは……ああいや、もういい。わかった。勝手に帰ればいい。どうせまた来るんだろ。
勝浦博士: ええ。定期的に。私以外の人間も。
SCP-1683-JP-1: なら構わない。どっか行っちまえ。
勝浦博士: はい、ではまた。
<記録終了>
インタビュー対象: SCP-1683-JP-1
インタビュアー: 稲倉研究員
<記録開始>
<省略>
稲倉研究員: 年齢は?
SCP-1683-JP-1: 覚えてない。
稲倉研究員: 身長、体重、或いは身分を証明できるものは?
SCP-1683-JP-1: ない。
稲倉研究員: 勝浦博士からの聴取では2018年09月20日に仕事を行っていたと主張していますが。
SCP-1683-JP-1: 嘘だよ、嘘。どうせ調べてあるんだろ?
稲倉研究員: なるほど。では資料にはジョーン・ドウと記載させていただきますね。
SCP-1683-JP-1: 好きにしてくれ。
稲倉研究員: この上下左右が反転した時空間を発生させたのは貴方であるとの推測が私たちの機関では有力であるのですが、心当たりは?
SCP-1683-JP-1: あの博士にも話したけど、ない。
稲倉研究員: なるほど。貴方自身はこの時空間をどこまで認知していますか?
SCP-1683-JP-1: 移動できないんだから認知もクソもねえよ。
稲倉研究員: 移動できないのですか?
SCP-1683-JP-1: 落ちてんだから当たり前だろ。
稲倉研究員: 貴方は落下しているのですか?
SCP-1683-JP-1: [沈黙]
稲倉研究員: なぜ、落下してそのような状態に?
SCP-1683-JP-1: 知るか、出ていけ、クソッ。
稲倉研究員: なるほど。ではこれ以上の情報は得られないとして今日は引き下がります。
SCP-1683-JP-1: いや、行くな。待て。待ってくれ。
稲倉研究員: 他に何か?
SCP-1683-JP-1: どこかに行くなら、この時空間をそのまま消してやる。どうだ、それは困るだろ。
稲倉研究員: それは本当に可能なのですか?
SCP-1683-JP-1: 可能だ。
稲倉研究員: では貴方は何らかの改変能力を有しているのですね。
SCP-1683-JP-1: それは……[沈黙]
稲倉研究員: であるなら私たちも何かしらの手段を取らざるを得ません。
SCP-1683-JP-1: 手段、手段ってなんだ? もしかして俺を、殺すのか?
稲倉研究員: 場合によってはそれも視野に入れて機関にて協議を行う事もあるかもしれません。
SCP-1683-JP-1: 待て、わかった。嘘だ。死にたくない。そんなことできない。
稲倉研究員: ではこの空間を消失させることは貴方はできないと。
SCP-1683-JP-1: できない。冗談だ。
稲倉研究員: 証言をありがとうございます。
SCP-1683-JP-1: わかった、もういい。どうせまた来るんだろ。
稲倉研究員: ええ。定期的に。
SCP-1683-JP-1: なら……いい。殺さないでくれるなら、いい。
稲倉研究員: では、失礼させていただきます。
<記録終了>
補遺: 以下は直近のインタビュー記録です。現在、SCP-1683-JP-1の精神状態は安定していません。そのため、カウンセラーを用いた療養的な対話が試みられています。
インタビュー対象: SCP-1683-JP-1
インタビュアー: 勝浦博士
<記録開始>
<省略>
勝浦博士: SCP-1683-JP-1。先ほどから沈黙してばかりですが、どうかいたしましたか?
SCP-1683-JP-1: 気づいてたのか。
勝浦博士: 何にでしょうか。
SCP-1683-JP-1: ああ、クソ、死にたくない。殺さないでくれ。何かないのか。なんで何もしてくれなかったんだ。
勝浦博士: SCP-1683-JP-1?
SCP-1683-JP-1: [罵倒]、[罵倒]、[罵倒]。
勝浦博士: 落ち着いてください。
SCP-1683-JP-1: 落ち着いていられるか? なあ、あんたは目の前に回避できそうもない、とてつもない力が迫っているとして、どうして正気でいられる?
勝浦博士: 発言の意図が理解できません。
SCP-1683-JP-1: あと数cmの距離に迫ったそれを、あんたは直視できるのか? あんた、いくつだ?
勝浦博士: ██ですが。
SCP-1683-JP-1: そうか、あと半分だ。俺に迫ったそれをあんたが感じ取るまで、あと半分くらいだな。だがあっと言う間だ。きっといずれ理解する。
勝浦博士: 発言の説明を求めます。
SCP-1683-JP-1: あんたが羨ましくて仕方ないよ。
勝浦博士: SCP-1683-JP-1。
SCP-1683-JP-1: ああ、死にたくない、死にたくない、死にたくない……[同一ワードを繰り返し呟く]
勝浦博士: ……聴取を終了します。
SCP-1683-JP-1: 死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたい。
<記録終了>
SCP-1683-JP-1の発言を受け、インタビュー後に調査を行ったところ、SCP-1683-JP-1のHm値がごく微量ながら低下し、1日に0.00█mmずつ落下(上昇)している事が判明しました。現在、一時的な措置としてSCP-1683-JP-1の直下(直上)を掘削する事による遅延作戦の協議が行われていますが、オブジェクトそのものへの破壊行為、異常性の変質のリスク、Hm値の低下に対しての根本的な解決が求められない等の意見の面から協議は現在も継続中です。
ページリビジョン: 5, 最終更新日時: 28 Sep 2018, 12:27 (136 days 前)