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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 真・槍の勇者のやり直し

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チラチラ悪女

「勇者殿達……私はそれよりも船の後ろの水面を泳いで付いてくるフィロリアル達が気になってしょうがないのだが……」


 エクレアが些細な事で話に割り込んできますぞ。

 俺は育てたフィロリアル様たちに目を向けます。


「もっと育てたかったですな」 

「これだけ居てまだ望むんだ……」

「今までの周回の中にはもっとたくさん育てた周回があるのですぞ」


 今回はお義父さんの制限は元より、十分に数を確保できなかったのですぞ。

 あの生産者の牧場があのようになっていた所為ですな。

 魔物商から購入したのと多少調達した程度ですので満足とは程遠いですな。

 ああ……あの時はフィーロたんを探して無数に挑戦したのでした。

 ですがフィーロたんはサクラちゃんでした……歯がゆいですぞ。


「エクレールさんが抑えてコレなんだから、その……我慢しようよ」

「……わかった。別の可能性の場合はもっと酷い状況なのだろう」

「賑やか過ぎて疲れるねぇ。エルメロはフィロリアル共に色々と教えるのに疲れたろう?」

「いえ……会場でみんながそれを歌交じりに物語を演じさせただけなのでそこまでは……」


 やはりゾウは良いゾウですな。疲れていないようですぞ。

 ユキちゃんやコウなどの先輩フィロリアル様達の指導もあって島でのアイドル活動は成功したのですぞ。

 それに貢献したのはゾウなのですぞう。

 実に有能なゾウですな。絶対に覚えておきましょう。


「……なんていうか、色々と振り回されて錬の事を考える余裕が……早く見つけてあげないと」

「行方不明の剣の勇者様の捜索ねぇ……勇者ってのは忙しいったらありゃしないねぇ」


 なんて感じでお義父さん達はバカンスだったと言うのにお疲れな様子でカルミラ島から帰還したのですぞ。






 カルミラ島から帰還した所でメルロマルクでライバル達と合流する事になりました。

 どうやら女王達と共にライバルが外交をしてきたらしいですからな。


「盾と槍の勇者様方、カルミラ島での修行はどうでしたでしょうか?」


 シュサク種の代表が帰ってきた俺たちに聞いてきますぞ。


「とても有意義な島での日々をお過ごしになられたと耳にしておりますが」


 女王も俺達の島での優雅な日々が気になる様ですな。


「島でどんちゃん騒ぎしていたって聞いたなの。相変わらずの槍の勇者なの」


 ライバルはそこで呆れ気味に助手を膝に抱えながら言いますぞ。

 どんちゃん騒ぎとは、言ってくれますな。

 俺達は優雅に、そして華麗にアイドル業を成功させただけですぞ。


「否定できない……正直、休まる暇のない日々だった……」


 エクレアが嘆くように言いますぞ。

 なんですかな? 不満だと言うのですかな?

 これだから修業しか頭に無い頑固な騎士はダメなのですぞ。

 少しはパンダやゾウのように状況を楽しむ余裕が欲しいですな。


「失敬な。お前が愚かな外交をしている間にカルミラ島はフィロリアル様が占拠したのですぞ。ライバル、お前の支持は得られる場所ではないから諦めろですぞ」

「それはそれで色々と間違っているんじゃないかい?」

「私もそう思います」


 パンダとゾウが何かを指摘していますな。


「そもそもどんちゃん騒ぎではなく、ライブと言うべきですぞ」

「いや、そうじゃないんだけどねぇ……もういいさね、面倒臭い」

「あはは……元康くんはそうだね」


 お義父さんが乾いた笑いをしながら同意してくれました。

 わかってくれるのはお義父さんだけですぞ。


「それで……既に報告は行っていると思いますけど、錬を見つける事は出来なかったよ」

「聞いているなの……本当、どこに行ったのか、面倒極まりないなの」

「そうですね……剣の勇者様の性格に関して槍の勇者様は十分にご理解している様子。にも関わらず見つからないと言うのなら、もっと捜索範囲を拡大すべきでしょうね」

「うん、俺もそう思う。こう……色々と不穏分子が動き回っているからね」

「なの。まあ、周回記憶による敵の方はガエリオンがある程度覚えているから囲い込みは着実に済んでいるなの。後はそいつらの処理をすれば多少はどうにかなるかと思うなの」

「うん。ガエリオンちゃん、いつもありがとう」

「なのー……なおふみに褒められて嬉しいなの!」


 お義父さんがライバルに笑顔で返しますぞ。

 あくまで礼義的に返しているだけですぞ!

 勘違いするなですぞ!


「……」


 それを助手が無言で見ておりますな。

 アレからしばらく経ちましたが何か変化はあったのですかな?


「それでガエリオンちゃん、俺達がカルミラ島に行っている間に外交に行って来たんだよね。どうだった?」

「ええ。私共も共に外交を行い、霊亀復活の予兆の警告をした事を報告します」


 シュサク種の代表と女王が揃って俺達に報告をしてくれるようですぞ。


「結論的に述べるとするならあちらは私共の提案を一歩も譲歩する事はありませんでした……危機が迫っているなら四聖勇者を連れて来いの一点張りでして……」

「彼の国の悪女もこちらの提案に対してやや不快に思える笑みを浮かべるだけでしたね」


 どうも外交に関しては上手く行かなかった様ですな。

 ここでライバルがシュサク種と女王に抑えろとばかりに手を挙げて下げますぞ。


「悪女という割に苦労しているのがわかるなの。アイツの国内の支持率は高いなの」

「誰の話?」


 そうですな。

 俺もよくわからない人物がいる様ですぞ。


「んー……腐った王宮を更に堕落させようとしたら既に堕落しすぎて何も出来なくて、自分自身を勇者に倒してもらえるように上げて落とす為にがんばっている女なの」

「えーっと……それってメルロマルクの第一王女と何が違うの?」

「比べられているのが我が娘である事が恥ずかしいですね」


 お義父さんの質問に女王が嘆くように答えますぞ。


「アレは根っからの悪女で、こっちはチラチラ悪女の根は善人の違いなの。メルロマルクの女王と本質は近いかもしれないなの」

「はぁ……」


 お義父さんもピンと来ない様子ですな。


「じゃあ外交は俺達が行くまで上手く行きそうにない感じかぁ……もしくは日程的に霊亀復活は阻止できそうにない感じ? となると少しでも被害を抑える為に行くべきだよね?」


 準備は万端ですぞ。

 その為に修業をしてきたのですからな。

 今の俺たちなら容易く霊亀を倒せるほどに実力がありますな。

 そういえば……霊亀の体内に行く為の洞窟はせまいですからゾウは入れるか不安ですな。


「あ、その心配は無用なの」


 ここでライバルが何故か自信を持って言い切りますぞ。


「一体どうして今までの周回で勇者達が何もせずにいるのに封印が解かれるのか、ガエリオンあの国に行って見張っていたなの」

「うん。それで?」

「で、ガエリオンがもしかしたらと思って見張っていたら、やっぱりというか原因がわかったから処理しておいたなの。だから霊亀の復活はなおふみ達が着かなければほぼ無いようなものなの」

「ん? いや、なんで?」

「いやぁーまさかと思ったら案の定出て来て呆れたなの。これも最初の世界で収集した知識のお陰なのーこれで面倒な芽が一つ潰せたからきっと問題ないなの」


 などとライバルは何やら訳のわからない事を言っていましたぞ。

 ライバルだけがわかっており、俺達は首を傾げ続ける事しか出来ませんぞ。

 しっかりと説明しろですぞ!


「えーっと……つまり霊亀の方はガエリオンちゃんが何か事前に解決したって事で良い訳?」

「そう思ってくれて良いなの。槍の勇者、もしループしてガエリオンがその場に居ない事態になった際に教えておくなの。そうすれば霊亀はずっと寝てて封印は予定の時まで解けないなの。まあ……予定時刻には波が終わっているから霊亀もそのまま寝てるなの」


 ライバルはそういうと日時と時間を設定し、霊亀の体内へ入る洞窟の入り口から奥へブリューナクをぶちかませば良いと言いました。

 全く訳がわかりませんぞ。


「まー……ガエリオンちゃんって竜帝で応竜の記憶も持っていた事があるみたいだから大丈夫って事で良いのかな?」

「なの!」

「錬が封印を解く可能性は無いのですかな?」

「それもガエリオンが事前に先回りして封印に強固な結界を張っておいたから雑魚のままの剣の勇者どころかタクト一味でも解けないはずなの。そして何か弄ったらガエリオンに通知が行くからわかるなの」


 激しくむかつく態度でライバルは俺たちを見てきますぞ。

 誰がお前を褒めるのですかな。誰も褒めませんぞ!


「仮に剣の勇者が出てきたら飛んで火に入る夏の虫なの」

「錬がそこで捕まえられたら良いんだけどなー」


 お義父さんがライバルの張った罠に期待しておりますぞ。


「どこぞの槍の勇者よりもいろんな面で有能だねぇ」


 パンダ! なんですかな! ライバルの方が俺より優れているとでもいう気ですかな!?


「という訳で外交は失敗したけどタダでは転ばずに問題を解決してきたなの」

「あ、ありがとう。ガエリオンちゃん。助かるよ」

「なのー。これも当然の事なの!」


 く……ライバルめぇ……こうなったら錬を俺が見つけてお義父さんに差し出さねばいけませんな。


「後は各地にある四霊の封印を解く引き金にも強固な結界を設置しておけば強さを得に来た剣の勇者を取り押さえられるなの」

「うん。お願い出来る? 錬が何かした所為で大きな犠牲を出すのは避けたいからね」

「任せてなの!」

「ありがとう。ガエリオンちゃん」


 お義父さんがライバルに近づいて礼を言いますぞ。

 ライバルはここぞとばかりに身を乗り出して撫でてほしいと言った顔をしております。

 お義父さんは撫でて良いのか悩んだ表情で助手をみると、助手の方はつまらなそうな顔をしながら静かに目を閉じて無視しますぞ。

 ダメと言えですぞ! お前は何のためにライバルについてきたのですかな?

 俺の呪詛の念は届かず、お義父さんはライバルの頭をなでますぞ。


「なのー……ありがとうなの!」


 撫でられたライバルが誰が見ても楽しげな様子ですな。振り振りと尻尾が出ていますぞ! 殺意が湧いてきますぞ。


「ブー……」


 サクラちゃんがここで抗議の声を出していますぞ。

 もっと声を上げるのですぞ!


「ブー! ですぞー!」

「ぶー……」

「まあまあ、これくらいは我慢してよ。ガエリオンちゃんは島に来なかったんだからさ。サクラちゃん達は十分俺たちと遊んだから……ね?」

「ぶー……」


 サクラちゃんの抗議の声が小さくなりますぞ。


「ライバルには譲歩しなくて良いのですぞ!」

「フィロリアルよりも物わかりが悪いって言うのもどうなんだろうねぇ」


 パンダ、お前は一言多いのですぞ!


「コウさん、真似しちゃダメですよ」

「えー……ドラゴン相手なら良い気もするよー?」

「ここは譲歩する所なんですよ。じゃないともっと困らせちゃいますからね。ユキさんもわかりますよね?」


 ゾウがここでコウとユキちゃんを何故か諭しております。


「激しく不本意です……」


 おお、ユキちゃんは俺の意見を察してくれるようですな!


「元康様、ここは我慢を提案しますわ。強者の余裕を見せつけましょう。私共はカルミラ島での成功があるのですわ!」

「そうですな!」


 この成功はお義父さんの中で高く評価されているはず!

 ライバルのやった成功するかわからないおまじないの様な出来事等、気にする必要は無かったのですな!

 少しくらいライバルを撫でた程度で抗議してはお義父さんを困らせるだけだと言う事でしょう。


「色々と指摘したいが、このノリは放置した方が結果的に良いのだと私は学んでいる」

「真面目な女騎士様は達観を覚えちまったようだねぇ……」

「それが良いと私も思います」


 と、お義父さんの警護をしているエクレアに、パンダとゾウが何やら謎の同意をしていますぞ。


「あはは……とにかく、みんなありがとう。引き続き警戒をしながら錬を見つけるようにがんばろう」

「なの! 後は各地に隠れている七星勇者の残りを集める事なの!」


 なんて様子で俺達はライバルや国の首脳陣たちと今後の事を決めて行ったのですぞ。

 で……会議が終わった後の事ですぞ。


「……ガエリオン」

「なの? お姉ちゃん、どうしたなの?」


 ずっと黙ってライバルの膝の上等に腰かけて成り行きを見守っていた助手が会議が終わって休憩をしていた所で喋りますぞ。


「そろそろ私、家に帰るわ」 

「なの? もう良いなの? もう少しいても良いなの」


 すると助手はライバルの顔を見てから頭を横に振りますぞ。


「色々と貴方ががんばっているのは十分にわかったわ。なんか大変だって言うのも」

「わかってくれたなの?」


 そんなに長い時間、助手はライバルと一緒に居ましたかな?

 まあ、気にする必要はきっと無いですぞ。


「……私も負けていられないのはわかった。こんな所で見てるだけじゃダメね」


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