いろいろな方の原稿を見せてもらう機会が多い。手書きとワープロ原稿の二つがあるのだが、手書き原稿の場合は、人によっては行間などに訂正が書き込まれたものがある。書き直してもらえばよいが、面倒ということなのだろう。
ワープロの場合は印字された文字なので読みにくくはないが、手書き原稿の修正は小さい文字、また崩し字で書かれていると分からないことがある。原稿用紙ならば、行間に書かれていると、文字が小さくなり更に読み辛い。
或る編集者の方から、印字された原稿の直しを見せてもらう機会があった。よく見ると、A4の用紙が、A3の紙に貼り付けられている。
『編集者の仕事』(柴田光慈 新潮新書 平成22年刊)に、ゲラ刷りの校正について次の一節がある。
編集者の指定に従って組まれた原稿が見開きの2頁単位で印刷されているもので、最終的に使用する判型よりはずっと大きな紙に刷られていて、周囲にかなりの余白があるのは、「赤字」と称される訂正の文字などを校正者や編集者や著者が書き込むためのスペースが必要だからです。
見本として画像のものを作ってみた。
外枠はA3用紙を示し、中の一重線で囲んだところはA4の用紙である。つまり訂正等を書く場所が広くなっているということで、これは「訂正する人への配慮」ということになる。
ゲラのA4判用紙の周囲に文字を書くことが出来るという工夫である。これを行間に書き込めば、書き辛く見にくかろう。
むろん、A4用紙の四辺には余白があるから、そこに書けないことはない。修正用ゲラがA4用紙であってもA3用紙に印刷されていれば、『編集者の仕事』に書かれているように訂正が楽であり、当然だが細かい文字ではなく大きく書くことができる。
左の画像は、周囲の余白がない例である。
何百枚のA4用紙のゲラならば大きな紙に貼り付けるなどという細工は出来ないが、数枚ならちょっと手をかけさえすれば出来る。
要はゲラの修正に限らず、いかに相手のことを、原稿を見る人のことを考えるかという心の問題だろう。
単にゲラのことだけではなく、自分以外の人に見せる、つまり「読んでいただく文章」は、内容はむろん、形式や印字の仕方など全てにわたって読み手に配慮したものであることを、書き手の心がけとしたい。
余談だが、画像の原稿は、江波編集工房が発行するフリーマガジン『八雲半島』第2号(発行日未定)に載せるものである。
なお、二つの画像はクリックすれば、別頁に拡大表示する。
また、下の画像は、『校正記号の使い方』(日本エディタースクール 平成11年刊)より引用した。
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