SCP-826-JP
アイテム番号: SCP-826-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-826-JPの生成手順を記した資料はサイト-8105において保管されています。実験によって生成した、もしくは未発見のSCP-826-JPが確認された場合、密閉した専用の容器にて一時的に保管してください。その後、容器内に当該オブジェクトを設置したまま、SCP-826-JPが炭化するまで焼却処置を施した上で廃棄を行ってください。
説明: SCP-826-JPは特定の手順によって生成されるチョコレートです。SCP-826-JPは固体である場合、その異常性を示す事はありません。
当該オブジェクトを熱する等して溶融した場合、その溶融した箇所は意思を持った実体のように移動を開始します。異常性を示したSCP-826-JPは周辺10m付近を移動し、人間を探します。しかし、移動開始から約10分が経過した場合、もしくは温度変化により固体へと戻った場合、当該オブジェクトは移動を停止します。また、SCP-826-JPの廃棄実験において、炭化するまで焼却処理を行った場合、SCP-826-JPの異常性が失われる事がわかっています。
周辺10m以内に人間を発見したSCP-826-JPはその人間(以下対象と記述)の性器をコーティングするように移動します。対象の性器のコーティングを完了した当該オブジェクトはその後、尿道へ刺激を与え始めます。その際、対象は非常に強い性的快感を訴え、幾度かオーガズムに達します。そして10~30分ほど経過した後、SCP-826-JPは対象から離れ、対象の性器の形状を再現し凝固、一連の活動を停止します。この状態のSCP-826-JPに対して行われた成分調査より、対象と同等の細胞組織が発見されています。この事から、対象がオーガズムに達する際に分泌される体液から、当該オブジェクトが遺伝子情報を読み取っている可能性がある事が判明しています。
以上の説明は実験記録826-JP-05、並びに826-JP-06の結果より、修正が行われる可能性があります。詳しくは以下の実験記録を参照してください。
SCP-826-JPは栃木県の一般住宅より、「チョコレートが形容しがたい形になった」という消費者庁への通報を元に、エージェントによる調査、回収が行われました。回収の際、SCP-826-JPの包装紙と推測されている紙に、以下のようなメッセージが筆記されていた事が確認されています。
お元気ですか? こちらでは2月14日に向けて、皆がお菓子作りを始めています。
申し訳ないのですが、そちらの方に私達の仲間が一人、逃げ出してしまったようです。
悪い子ではないのです。ただ、少しやんちゃなだけで。
本当はとっても人の気持ちを大切にする子です。
きっとその子なら、あなたを思う相手が喜ぶ物を作ってくれるはずです。酩酊街より 愛を込めて
補遺: SCP-826-JPを製造していたと思われる個人経営店の店主である、██氏の確保に成功しました。なお、██氏の個人経営店は既に業績不振により閉店しています。以下はその██氏に対して行われたインタビューです。
対象: ██氏
インタビュアー: 相坂研究員
<録音開始>相坂研究員: それでは、SCP-826-JP、いえあのチョコレートを製造していたのは貴方で間違いありませんね?
██氏: ああ、間違いない。俺の作ったチョコレートだ。全部あいつに買われたと思っていたんだけどな。
相坂研究員: 買われた?
██氏: ある時期から返品が相次いだもんで、在庫を抱えて困ったもんだと思っていたところに、それらを買い取りたいという奴が現れてな。全て買い取っていったんだ。
相坂研究員: その人物に関してはまた後日お尋ねしたいと思います。何故、返品が相次いだのですか?
██氏: それは[6秒間の沈黙]俺が、真理を見つけてしまったからかもしれない。
相坂研究員: 真理?
██氏: このチョコレートのレシピはな、もう亡くなった師匠から教えてもらったんだ。あの包装紙のへんてこなメッセージを書くようにと教えてくれたのも師匠なんだよ。ただ、たださ。
██氏: メッセージにも書いたけどさ、あのチョコレートは、あれを溶かしてチョコを作ろうとした人が考える、好きな相手が最も欲しがるであろう物になるんだよ。だから最初は指輪とか、花束とか、チョコレートが変身したって凄く喜ばれてた、けど。
相坂研究員: けど?
██氏: [4秒間の沈黙]わかるだろ。
相坂研究員: 何がですか。
██氏: [7秒間の沈黙]だからさ。
相坂研究員: ハッキリお答えください。
██氏: 俺も、一回だけ、本当に一回だけ、あれを使ってチョコを作ろうと思ったんだ。最初はハートマークになった。けど、それだけじゃ俺は思いは伝えきれないって思った。
██氏: そんでもっかいそれを溶かして作り直した。今度は札束になった。でも、俺の彼女がそんな汚い人間だと思いたくなかった。
██氏: どうしてもわからなくなった時、チョコレートが勝手に動き出した。そんとき、俺は気づいちまったんだ。相手が一番欲しがるであろう物。
相坂研究員: [5秒間の沈黙]参考までにお尋ねしますが、一体?
██氏: そんなの決まってるだろ。[7秒間の沈黙] 俺自身さ。
相坂研究員: [20秒間の沈黙]インタビューを終了します。[ため息]間違いなく、あなたの彼女はそれを欲しがってはいないと思いますよ。
<録音終了>
終了報告書: SCP-826-JPの生成手順を聞きだした後、██氏に対しては記憶処理を施し解放しました。なお、当該オブジェクトを買い取った人物に関しては現在調査が進められています。