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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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自慢失敗

 俺が横殴りをしようとした樹の仲間をパラライズランスで痺れさせてやりました。

 その姿を見ていた樹の仲間達は抗議の声を上げ始めます。


「おのれ槍の勇者め! 何をする!」

「迷惑行為をした罰ですぞ。これから俺の命令に背いて傲慢な態度を取った奴は問答無用で痺れさせますぞ」

「ふざけるな! 付き合ってられるか!」

「こんな所に居られるか! 俺達はお前の奴隷じゃない!」

「俺達は帰らせてもらう!」

「ブヒ! ブヒブヒ!」

「ではお前等全員痺れて反省するのですぞ!」

「なにをする!? や、やめろおおおおおおぉぉぉぉ!」


 帰ろうとした樹の仲間達を豚を含めて痺れさせてやりましたぞ。

 ビクビクと痙攣して倒れている樹の仲間達を見下します。

 はあ……お義父さんの命とは言え、面倒ですな。

 というよりも……前回の周回でお義父さんが言っていた事が思い出されますぞ。


『元康くんはかなり過激な所があるから自分の行動に注意して。間違っても国や宗教を滅ぼせば争いは無くなるとか、そういう考えはやめた方が良い。絶対に失敗する。どんな組織も頭を潰しただけじゃタクトと同じ様に残党が暴れまわるだけだ。それ所か頭が替わるだけで終わっちゃう』


 この言葉に当てはまる事がヒシヒシと感じますぞ。

 燻製を消した事で樹の仲間達が少しはまともになるかと思いましたが、頭が変わっただけで結果は変わっておりませんぞ!

 欠員も誰だかわからない奴が補充されて、減っていません。


 歴史の強制力という奴ですかな?

 まさか……今まで何度もループしていますが、そんなのは感じませんでしたぞ。

 まあ、樹の主観によって足りないメンバーを補充した結果、似たような結果になってしまったと思うのが正解ですな。


 ですが……お義父さんの言う通りになってしまいました。

 燻製を消しても未来に大きな差は出なそうですな。



 とりあえず縛り上げて強引にでも引き摺って行きますかな?

 俺は痺れた樹の仲間達を縛り上げてから島の奥地へと向かったのですぞ。


「あが……」

「うう……」


 何やら呻いておりますが知りませんな。

 というかこいつ等、一応仲間として勧誘しておりますが将来的に存在するのですかな?

 結局は問題を起こして仲間では無くなるのでは?

 ま、この島までの限定であっても俺の強さを知らしめるには良いですな。

 三勇教に下げられたLvを取り戻すのに調度良いですからな。


「さーて! どんどん行きますぞー!」


 駆けだす様に俺は樹の仲間を数珠つなぎに引き摺って島の奥地へと駆けて行きますぞ。

 後ろを見るとミミズみたいな道が出来ていますな。


「う――」

「ぐは――」

「や、やめ――し、死ぬ!」


 何やら騒がしいですが、この程度で死ぬはずありません。

 重症になったら回復魔法くらいは掛けますからな。


「ハーハッハッハ! エイミングランサーⅩ!」


 島の奥地、冒険者が見えなくなった頃に近寄ってくる魔物共を仕留めて行きますぞ。

 そのお陰で俺のLvは急速に上昇して行きます。

 樹の仲間達も程々に上がっているでしょうな。

 島の一番奥に居るボスも今の俺なら雑魚も同然、再出現に時間が掛る分、面倒ですな。

 その間に出現する魔物共を駆逐して行きますぞ。


「ははははは! 弱い! 弱過ぎるぞ!」

「あ……ああ……」


 何やら樹の仲間達が脅えるような目で俺を見始めましたぞ。

 何を脅えているのですかな?

 勇者とは人よりも遥かに強いのはわかりきっている事だと思いますぞ。


 そんな感じでサクッとその日は狩りを終えましたぞ。

 何なら樹の仲間達のLvをカルミラ島での上限である80まで上げても良かったのですが、麻痺から回復した連中が、陽が落ちそうだから帰りたいと涙ながらに懇願したので宿に戻ったのですぞ。


「逃げたらただではおかないですぞ」

「ヒィ!?」


 どうやら樹の仲間達も俺の強さをちゃんと理解した様で、偉そうな態度はとらなくなりましたぞ。

 もう少し教育が必要ですかな?

 お前等の正義など無いも同然、樹のくだらない正義が如何に人々を困らせるかみっちりとたたき込むのも良いですな。


 とは思ったのですが、こいつ等に期待などしていないのでやめました。

 性根まで腐った連中に何を言っても無駄ですからな。

 ま、こんな感じで翌日も樹の仲間達を強引に連れまわって俺の強さを見せつけてやりましたぞ。

 その甲斐もあって、コイツ等をLv80まで上げる事に成功しました。



 で、打ち合わせ通りに夕方に狩り場から戻って本島のホテルに帰ると……。


「「「ねえねえねえ」」」


 樹がフィロリアル様達に囲まれて何やら楽しそうにしておりますな。

 俺も混ざりたいですぞ。


「あ、元康様ですわ!」

「本当だ! キタムラー」

「ねえねえねえ……」


 フィロリアル様は俺がくると元気よく出迎えてくれましたぞ。

 いや、樹もですな。

 ガバッと立ち上がって俺の方へ走ってきますぞ。


「元康さん! どうかこの子達を早く連れて行ってください。お願いします!」


 何やら泣き顔ですぞ。

 なんですかな? 傲慢で偉そうな樹がこんな子供みたいな顔をしていると楽しくなってきますな。

 ユキちゃん達もハッとなって再度樹の周りを回る様に尋ねております。


「「「ねえねえねえ」」」

「うう……」


 とても楽しそうですぞ。

 俺も混ざりますかな。


「ねえねえねえ」

「も、元康さん!?」


 樹が俺の顔を見てがっくりと膝を落としましたぞ。

 哀れな姿ですな。


「なんでそんなに脅えているのですかな?」

「い、イツキ様! おのれこの鳥の魔物共め!」


 樹の仲間の戦士が激怒して武器を片手に一歩踏み出した所で俺が顔を向けますぞ。


「う……」


 そこで何やら動きが悪くなりましたぞ。

 先ほどの威勢は何処へ行ったのですかな?

 逃げるに逃げられず、かといって攻撃相手がいる訳でもない。

 そんな様子ですぞ。


「だ、誰か助けて……」


 樹が弱音を吐いていました。


「ユキちゃん、何があったのですかな? 樹がこんなに弱るとは」

「それはですわ――」


 ユキちゃんが樹との出来事を話し始めましたぞ。



 俺とお義父さんが出かけた後、お義父さんの仲間であるキール達は別室で待機となったそうですぞ。

 で、樹がユキちゃん達が待機している部屋に来たのですぞ。


「開けると良いですわ」

「失礼します」


 樹は何だかんだで礼儀良く部屋に入ってきたそうですぞ。


「……」

「……」


 まあ、何だかんだで監禁生活中に顔を合わせた事のある関係ですからな。

 実際に戦う事は無くても多少の話はしてますぞ。


「自己紹介をしますか?」


 沈黙を破ってユキちゃんが尋ねると樹はハッと我に返る。


「では、改めて自己紹介をしましょう。弓の勇者をしている川澄樹です。これから2日間よろしくお願いしますね」

「元康様のフィロリアルを統括しているユキと申しますわ」

「コウの名前はコウ! よろしくね。カワスミ」

「……ルナ」


 コウとルナちゃんがユキちゃんに見られて自己紹介をしましたぞ。


「何度か顔を合わせた事はありますが、一緒に戦いましょう」

「わかりましたわ。元康様からの言いつけ通り、イツキ様に私達の強さをご教授しますわ」

「……」


 樹はユキちゃんの言葉に不満そうな顔をしたそうですぞ。

 きっと誰かに教えを乞う事に対して不満を持っているのですな。


「さっそくですがLv上げに行きましょうか。では勧誘するので了承してください」

「そうですわね。私共の強さをちゃんと理解すると良いですわ」

「コウ退屈だったー早くいこー!」


 編成した後、そのまま部屋を出て港の方へ歩いて行ったそうですぞ。


「……」


 港に行く途中ルナちゃんがフィロリアルクイーンの姿になって樹を後ろから何度も凝視していたそうですぞ。


「な、なんですか?」


 徐にルナちゃんは樹の頭を撫でますが、その態度が気にくわないのか樹は払いのけます。


「いきなりなんですか!」

「はぁ……やっぱり思ったより可愛くない」

「だから何なんですか!」


 不快そうに樹は言いますが、ルナちゃんですからな。

 樹が小柄で可愛いかどうかを見定めていたのでしょう。


「では行きますわよ。イツキ様、私共の背に乗るのですわ」

「え? 乗るって……」


 樹は小船を指差しましたが、ユキちゃん達はフィロリアル形態になって徐に海に飛び込んで行きましたぞ。


「どうしたのですか? さあ、移動しますわよ?」

「あ……はぁ」


 樹はポリポリと頭を掻いてからユキちゃんの背に乗って狩り場の島へと移動を開始しました。

 う、羨ましいですぞ。

 俺も自由行動になったら乗せてもらう事にしましょう。


「では、移動をしている最中に確認しましょう。僕のLvは70です。貴方達は?」

「95ですわ」

「90ー」

「89……」

「え……」


 すいすいと島へと水鳥の様に優雅に泳ぐユキちゃんの背中で樹は何やら絶句していたそうですぞ。


「そ、そうですか……」


 まだ限界突破は出来ていなかったのが惜しいですな。

 ささっとタクトを仕留めないとこの先が厳しくなって行くでしょう。

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