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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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槍の勇者とメンバー交換

「ブー」

「ここが樹の仲間がいる部屋ですな」


 豚が頷きましたぞ。

 影と呼ばれる連中の半分くらいは豚の様ですな。

 それとも、偶然豚の影だったのでしょうか?


 俺は樹の仲間の部屋をノックしますぞ。

 前にも一度経験しましたからな。

 あの時の樹の仲間を思い出すと少々不愉快な気持ちになりますぞ。


 まああの時の俺は樹の仲間である豚をナンパしていましたがな。

 それ以外に、あの燻製が自己主張してうるさいと覚えていましたが、もう燻製は爆殺したのでいません。


 なので、あの時とは状況が異なりますな。

 虚栄心の塊である樹の仲間達はいないかもしれません。

 寄せ集めの仲間ですかな?


「どうぞ」

「では入りますぞ」


 樹の仲間がいる部屋に俺は入りました。


「よくきてくださいました。槍の勇者さん」


 ……何故でしょうか。

 前のカルミラ島でも見た様な光景がありますぞ。

 樹の仲間達が思い思いの姿勢で寛いでおります。


 まあ、さすがに燻製はいませんが。

 おや? ストーカー豚の姿も見えませんな。

 大方、樹をストーキングしているのでしょう。


「今日からしばらく樹に代わってお前等の面倒を見る北村元康ですぞ。これから二日ほどよろしくなのですぞ」


 と、俺は言ったのですが樹の仲間達のテンションは低めですな。

 えっと、確か樹の仲間になるはずの燻製の次に偉そうにしていた戦士だったかが俺の方に顔を向けますぞ。

 どうも何か引っかかる目付きで俺を睨んでおります。

 大方、自分達は悪じゃないとか樹と同じ考えなのでしょう。


「ええ、よろしくお願いします。我等、イツキ様親衛隊の戦いを槍の勇者さんは見ていてください」


 おや?

 この台詞は燻製が言った気がしますぞ。

 しかし親衛隊ですか。


 んー……樹の仲間に関してはうろ覚えの所がありますが、どうも数が減っていない印象がある様な、無い様な。

 正確な人数を知らないのですぞ。

 とりあえず、今はストーカー豚がいませんな。


「そう、我等、イツキ様親衛五人衆! 以後よろしくお願いします」


 何やら決めポーズをとっていますぞ。

 前回も見た様な気がしますが、激しくどうでも良いですな。

 こいつ等は未来で全員処刑されるような連中ですぞ。

 この際、不備の事故と称して処分するのも一考ですが、それでは樹がどんな反応するかわからないので保留しておきましょう。


「では行きますぞ」

「お待ちください!」

「……なんですぞ」


 樹の仲間の戦士が偉そうに手を前に出しますぞ。


「我等の決め口上に対する感想は無いのですか!?」


 ……馬鹿では無いのですかな?

 そんなくだらない事に相手をする必要はありませんぞ。


「ではポーズを取ると同時に背後で爆発の魔法でも掛けてやりますかな? お前等も爆殺しますぞ。派手な花火になりますな」


 暗にくだらない事を言ったら消すと言ってやりますぞ。

 俺の殺意を感じたのか、戦士は一度黙りましたな。


「い、良いでしょう。槍の勇者さんには俺達の美意識が理解出来なかったと思って我慢してやりましょう」


 イラっとしましたが、無視ですぞ。

 どうせこいつ等は自己満足でしか動いていないのですからな。


「そういえば樹のストーカーをしている豚がいませんな」


 俺が辺りを見渡すと影と思わしき豚が現れて樹の仲間に何か言っておりますぞ。


「今ここにいないのは……リーシアの事ですか? 奴は此度の騒動で親に心配されたとかで連れ戻されて行きましたよ。絶対にイツキ様の元へ、両親を説得して舞い戻ると言ってましたが、何処までの事やら……大方、イツキ様の正義を理解できずに離脱したのでしょう」


 なんと、ストーカー豚はカルミラ島に来ていないのですな。

 で、何やら不愉快そうに樹の仲間達は壁を蹴りますぞ。


「くそ! アイツがいないんじゃ小間使いが出来ねえだろ!」


 確か樹の仲間は序列があるのでしたな。

 その底辺らしき奴が不愉快そうに荷物を持って俺についてきますぞ。

 とりあえず狩り場に移動するための船に乗りますぞ。


「もっと寄れ!」


 で、何故か荷物持ちをしている奴が他の仲間に端に寄る様に言われておりますな。


「チッ! リーシアさえいれば俺はこんな目に遭わずに済むのによ!」


 と、毒づいております。

 ここはいじめがあるのですかな?


 全く救いがありませんな。

 所詮は燻製になる連中ですな。心根が同じ様ですぞ。

 で、やはり序列二位っぽかった戦士が偉そうに一番スペースを取っております。

 なんとも嫌な空気ですな。


 俺は船に乗りながらフィーロたんと一緒にいたカルミラ島の日々を思い出しておりました。

 夕陽の見える海をお姉さんと一緒に船で渡りつつ、フィーロたんが水鳥の様に俺達の後を付いて来ていたあの時……どうして俺はお姉さんに臭い台詞を言っていたのでしょう。


 お姉さんはお姉さんであって、恋愛対象になりえません。

 お義父さんと同じく、忠誠を誓う相手ですぞ。


 フィーロたん……夕日に輝くその羽毛が艶やかで、なんと魅力的な光景だったのでしょうか。

 ああ……フィーロたん。

 ドボンと序列最下位の奴が海に落ちましたな。

 無視をしますぞ。


 さて、狩り場のある島に到着しましたぞ。


「では、俺のレッスンは厳しいですぞ! 樹と同じような戦い方だと思わないでついてくるのですぞ」

「槍の勇者。せめてイツキ様の呼び方をどうにかしろ!」


 先ほどからコイツ、うるさいですな。

 俺は思い切り本来なら序列二位の戦士を睨みつけますぞ。


「なんですかな? 俺に何か指図でもあるので?」

「イツキ様を呼び捨てとは無礼にも程があるぞ! たまたま盾の勇者が評価されたからと言って槍の勇者! お前が偉そうにする理由は無い!」

「文句があるなら樹に言うと良いですぞ。まあ、奴が自由に動ける権力はもうありませんがな」

「ぐ……この恥知らずの悪が!」

「うるさいですぞ! 黙ってついてくるのですぞ。じゃないとその樹の地位が悪くなりますぞ」

「チッ!」


 樹の仲間達は態度が悪いですなー。

 そう考えると大人しいストーカー豚がまともに見えるのが不思議ですぞ。

 そういえばストーカー豚はお義父さんに引き取ってもらったのでしたな。


 俺がチャンスとばかりに落ち込んでいるストーカー豚に話しかけ、最終的にお義父さんが引き取って育てたと記憶しております。

 つまりお義父さんが認めるほどの有能な存在だった……と。


 ふむ、少し認識を改める必要があるかもしれませんな。

 考えて見ればストーカー豚は未来で七星勇者に選ばれるのですぞ。

 樹が暴走しない様、ストーカー豚が面倒を見ていたとも聞きます。

 その点で考えれば、ここにいる未来で燻製になる連中よりはマシかもしれませんな。


 何よりフィーロたんが名前で呼んでいた気がしますぞ。

 一緒に遊んでいる光景を見た事があるような、ないような。

 とりあえず、状況しだいでは人である可能性がありますな。


「ではこれからイツキ様のお教えする戦闘方法を――」

「ああ、それは必要ないですぞ」


 前に一度見ていますからな。必要ありませんぞ。

 要するにコイツ等はタゲ取りをする肉壁ですな。


「しかしイツキ様は――」

「そんな事よりも俺の強さを目の当たりにして樹に実力の差を痛感する様、言うと良いですぞ!」


 言葉を遮って、そう伝えると樹の仲間は不快そうな態度を前面に出して、悪態を付きました。


「調子に乗りやがって!」


 どうも遠慮と言うものがありませんな。

 正面から俺に負けたというのに、こいつ等は相手の実力をちゃんと測れているのですかな?

 お前らなど、一撃で倒せるのですぞ。

 と、考えていると別の奴が何か騒動を起こしています。


「貴様! 我等の倒す魔物を横取りするとは何事だ! お前に生きている資格は――」

「ひぃ!?」


 冒険者が戦おうとしていた魔物を横取りして偉そうにしております。

 ネットゲーム用語で横殴りとか言われる行為ですぞ。

 お義父さんだったらゲーム毎に違いがあるとか言うでしょうが、俺が知っているネットゲームはエメラルドオンラインだけです。

 まあ島でのレクチャーで確か同じ事を注意されていたはずですぞ。

 それにしても、こいつ等は学習能力がありませんな。


「それは迷惑行為ですぞ! パラライズランス!」

「ぐあ!」


 槍を突き刺してやるとバタンと倒れました。

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