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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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高校時代の旅行

 翌日の朝にはカルミラ島に到着しましたぞ。


「ようこそいらっしゃいました。四聖の勇者とその一行の皆様」


 前にも見たことがありますな。

 確かカルミラ島の管理をしている領主だったと思いますぞ。

 温泉に入りに来た時に丁重にもてなしてくれたのを覚えておりますぞ。


 最初にカルミラ島に来た時は本当に観光地みたいだなと思いましたな。

 さすがにこの元康、ハワイには……行った覚えがありますな。

 この世界に召喚される前、高校生の頃に豚共の案内で行った事がありますぞ。

 金持ちの豚が私財で海外旅行へ連れて行ってくれたのでしたな。


 尚、以前思い出した、地主の令嬢とは別の豚ですぞ。

 こっちの方がもっと金持ちだった覚えがありますな。


 なんか一月に一回位は日本を始め、世界各地の観光地に行っていた様な気がしますぞ。

 まあ学校があったので、土日だったり、夏休み、冬休み、あるいは金で物を言わせて俺達だけ免除してもらったりと、今考えると不正をしていた気がしますな。

 やはりあの頃の俺はフィーロたんに相応しくない、不誠実な男だったという事でしょう。


 ともあれ、その時よりも海が綺麗だと思いますぞ。

 ちなみに俺はグアムにも行った事があります。


 で、この伯爵に関してはゲームの記述で見た覚えがあるとか考えていたと思いますぞ。

 確かクエストに名前があるのでしたぞ。

 幽霊……でしたかな?

 親戚とか先祖かもしれませんな。


「私、このカルミラ諸島の地を任されておりますハーベンブルグ伯爵と申します」

「は、はぁ……」


 お義父さんが代表して相手しますぞ。

 樹は前日の事を薄らと覚えている程度で、船酔いで相変わらず辛そうですな。

 ずっと寝ていたのにまだ辛いとはこれいかに。


「以後お見知りおきを」

「ああ……よろしくお願いします」

「では、勇者様方にはこのカルミラ諸島の始まりから知っていただきましょう」


 この辺りは前にも聞いたので聞き流しますかな。

 島伝統の魔物の話とかですぞ。

 実際に会った事が無いので絶滅しているのでしょうな。


「へー……なんか美味しそう」

「サクラちゃん。もっと上品にして欲しいわ」

「んー? わかったーメルちゃん」


 婚約者とサクラちゃんの会話だけを聞いているとフィーロたんを思い出しますぞ。


「食べてみたい。イワタニ! 見つけたら料理してー」

「戦う様な相手じゃないと思うよ? 話し合いが出来る相手を無理やり襲ったら悪い事だよ。コウ」

「うー……」


 解体を恐れてコウが我慢しております。


「可愛い魔物を食べたらダメ」


 ルナちゃんがキールを抱きしめて言いますぞ。


「ルナちゃん、あっちい!」

「南国……キールくんを抱きしめると暑がるからイヤ」


 フィロリアル様達が興味を示しておりましたが、居ないのですからしょうがないですぞ。

 ユキちゃんは島の案内にちゃんと耳を傾けている様ですぞ。

 何かあったらユキちゃんに聞けば良いですかな?


「ブー」

「え? バカンスをいつ楽しめばいいって? エレナさんは気が早すぎだよ」


 怠け豚は完全に遊ぶ気満々の様ですな。

 後は勇者の残した碑文ですな。

 この辺りは最初の世界の時とあまり変わりませんぞ。


 お義父さんが碑文を読んでオーラを覚えた後、樹と錬が覚えられなくて異世界言語理解などと言うありえない技能の出る武器の入手法を尋ねる所ですな。

 ただ……オーラの説明をしたはずの豚の声がしませんでしたな。


「元康くん」

「なんですかな?」

「樹や錬があの碑文を読めるようになると何を覚えるの?」

「確か錬がマジックエンチャント、樹がダウンですぞ。錬の方は俺のアブソーブと似た魔法吸収効果のある敵の魔法を吸収して魔法剣に、樹の方はお義父さんのオーラの反対、敵の全能力を下げる魔法ですぞ」

「だってさ」

「適当な事を……」


 樹と錬が不快そうに俺の言葉を聞き流しておりますぞ。

 自分の勉強不足を他者の所為にするのはどうなのですかな?


 その後はカルミラ島で滞在する上での注意事項の説明でしたな。

 ネットゲームのマナー講座の様でしたが、このくらいは最低限覚えておかねばならない事ですぞ。


 移動方法もユキちゃん達フィロリアル様が居れば穏やかな大陸棚のある海なので波は緩く、十分ですぞ。水鳥の様に海を泳ぐフィロリアル様の姿はとても楽しげですな。

 深く、そして早く泳ぐ時はペンギンの様に体を前にして泳ぎますぞ。

 フィーロたんがそんな泳ぎ方をしていたのを覚えておりますし、クーやマリンがやっていましたな。

 みどりは人型で泳いでおりましたぞ。


 さて、俺達はカルミラ島の一番良いホテルである城に宿泊する事になりました。

 お義父さんと俺の仲間は多いですから部屋も多めに用意してもらいましたぞ。

 何故か婚約者はお義父さんと二人きりの部屋になりそうでしたな。

 お義父さんが必死に抵抗して、婚約者はサクラちゃんと一緒に寝る事になったようですがな。

 シュンっと、どこからともなく豚が現れて俺達に何やら囁いておりますぞ。


「ブー」

「あ、はい、メンバー交換をしてから会議になるんでしたっけ?」

「ブー」

「俺と元康くんは割と一緒に行動していたから仲間も仲が良いですし……」


 お義父さんはパンダ獣人の方に視線を向けます。


「ラーサさん、しばらく俺達はメンバー交換する事になるんだけど、あんまり俺達の事を知らないラーサさんは参加しなくて良いよね」

「そうだねぇ。アンタの事を説明しろと言われてもあたい等じゃあ何も言えないね。精々とても硬かったくらいだよ」

「だから交換が終わるまでは島で自由に行動してて良いよ」

「はいはい。ま、この島名物の酒でも飲んで遊んでいるかね」

「姐御! 島でLv上げはどうですか?」

「とは言ってもねぇ……」

「あ、ラーサさん」

「なんだい?」

「暇だからって日焼けして、小麦色のパンダとかにならないでね。あんまり見栄えは良くないから」

「なんでアンタはあたいの肌まで気にしてんのさ!」

「日焼けが似合わないと思うからさ」


 何やらお義父さんがパンダ獣人と言い争っていますぞ。


「兄ちゃん、俺達は?」

「キールくんとウィンディアちゃん、それとサクラちゃんとガエリオンちゃんは俺の仲間扱いかな?」

「ブー……」


 怠け豚が鳴くとお義父さんが脱力しましたぞ。

 また碌でもない事を言ったのですかな?


「エレナさん……そこまで怠けたがるのはある意味称賛するよ」

「なんて言っているのですかな?」

「メンバー交換中に暇をしているはずのメルティちゃんの面倒は私に任せて! だってさ」

「私も行きたい」


 婚約者が手を上げますぞ。


「メンバー交換は俺や元康くんと一緒に戦った人を中心にさせた方がいいと思うんだ。メルティちゃんはしばらく一緒にいたけど戦った訳じゃないでしょ?」

「う、うん」

「これから一緒に戦う仲間だけど、今回は留守番しててもらって良いかな?」

「でも……サクラちゃんもいないんでしょ?」

「まあ、そうなるね。サクラちゃんは俺の護衛をしてくれる子だしね。さびしいかもしれないけど少しの辛抱だから」

「……うん。わかったわ」

「聞き分けが良くて助かるよ」

「その代わり……」


 何やら婚約者がもじもじとしております。

 お義父さんは何やら気付いてコホンと軽く咳をして流しますぞ。


「とりあえずメンバー交換が終わるまでの間はメルティちゃんはエレナさんと一緒にゆっくりしててね」

「わかりました、盾の勇者様、いえ、ナオフミ……さん」


 何やら乙女の目をしておりますな。

 させませんぞ!

 そんな事、フィーロたんが許しませんぞ。

 俺は婚約者とお義父さんの間に立って遮ります。


「な、なんですか?」


 俺は無言で白い目を向けます。

 すると婚約者は俺を敵と認識したのか、睨み返してきました。


「……ルナは? キールくんと一緒じゃないの?」

「ルナちゃんは一応、元康くんが主として登録しているフィロリアルだから、扱いで言えば元康くんの仲間かな」

「そう……なんだ」

「ですぞ」


 キールをルナちゃんはじっと見つめますぞ。


「ルナ、キールくんと一緒が良い」

「ルナちゃん……」

「キールくんを抱きしめてもふもふして、着飾らせて愛でたい」

「さて! 兄ちゃん! 俺達、兄ちゃんの凄い所を他の兄ちゃん達に教えるぞー!」


 スイッチを切り替えるように名残惜しそうにしているルナちゃんを無視して、キールがお義父さんに言いました。

 ルナちゃんの何が悪かったのですぞ!?


「キール、ルナちゃんの気持ちをわかれ、ですぞ」

「俺は男だ! 着飾るのは兄ちゃんに頼まれたからであって不必要にはしねえ!」

「あはは……」


 お義父さんが苦笑いしております。


「ブー」


 現れた豚が何やら言っておりますぞ。

 すると助手が明らかに不快そうな表情になり、眉を寄せています。


「……」

「錬が俺とメンバー交換の相手ね。じゃあ元康くんは樹の所か」


 ふむ、俺は樹の仲間とですか。

 とは言っても最初の世界でもやっているのですがな。

 しかし今回は燻製がいないので、多少の変化はあるかもしれません。


 そこで助手がお義父さんのマントをギュッと掴みますぞ。

 お前までお義父さんを取ろうと言うのですかな?


「……」

「お父さんの仇でイヤかもしれないけど、少しだけ我慢して」

「うん。わかった。出来る限りやってみる」

「嫌だけど接待するの! あのよわよわな剣の勇者にガエリオンが強い所を見せてやるの!」

「お願いするね、ガエリオンちゃん」

「なの! お姉ちゃんが我慢できるようにガエリオンが話すの」


 と、ライバルはお義父さんに自己主張してますぞ。

 くっ……これは俺達フィロリアル様組の危機なのでは?


「代わりにがんばったらお礼が欲しいの」

「なんだい?」

「ガエリオンもなおふみのお嫁さんに入れて欲しいの!」

「ガエリオン! 前も言ってたけど、なんでそんなに好きなの?」

「だってなおふみやさしいの、ガエリオンは、なおふみが大好きなの」

「ブー! ナオフミは渡さないー」


 サクラちゃんがライバルに飛びかかろうとした所をお義父さんが止めました。


「さーて! じゃあ行きますかー」

「聞いて欲しいの!」


 お義父さんは話題を逸らす様に豚に宣言して部屋の扉に手を掛けますぞ。

 サッサと出て行ってしまいますな。


「元康様、私達はどうしたら良いでしょうか?」

「樹のLv上げの手伝いをすれば良いですぞ。自分が如何に弱いかを教えてやるのですぞ」

「そうなのー? じゃあコウもがんばる」

「わかりましたわ。不服ですが、特別に面倒を見てやりますわ」

「あのもじゃもじゃ、背が低いけどあんまり可愛く無い」


 ルナちゃんが無表情で呟きましたぞ。

 樹の評価、ボロボロですな。


「まあ、お義父さんとの話もありますし、勇者同士で強さの認識を改める為にもユキちゃん達には色々と樹に教えてやって欲しいのですぞ」

「わかりましたわ」

「まあ、メンバー交換が終われば楽しみにしていたフィロリアル様達の育成に入りますぞ。その為に島の地形をリサーチしていて欲しいのですぞ」

「わーい! 探検探検!」

「可愛いのが増える……ルナ、楽しみ」

「戦力増強ですわ。ではその為にもがんばりますわね」

「任せましたぞ」


 ユキちゃんは俺が登録するフィロリアル様の中で代表ですからな。

 いろんな雑務をしてくれて助かりますぞ。

 今回もユキちゃんに任せておけば問題ないですな。


「では俺も樹の仲間の方へ行ってきますぞ」

「いってらっしゃーい!」

「御武運をですわ!」

「がんばる」


 こうして俺は樹の仲間がいる部屋へと豚の案内に従い向かったのですぞ。

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